戦場に立てず果てる
私、桜井 真智子の人生は唐突に終わりを告げた。
主婦(夫)達の戦場と言われるスーパーのタイムセールに出向こうとしていた矢先に
戦場に立ち勝利をレジで噛みしめることが出来ず、それどころか戦場に立つことすら許されずに
私の人生は25才という女盛りは盛りでも微妙な年で彼氏も作れないまま幕を閉じた。
中々青に変わらない信号の前で、
まだかまだかとも想いながら横断歩道で信号が青に変わるのを待っている時に
突然、大型トラックが飛び出した猫を避けてこっちに突っ込んでくるのが見えた。
私が最後に見たのは転生トラック☆という文字だった。
ネットという大海で異世界トリップとか、転生とかそういった創作・二次創作は良く好んで読んだが
実際に、私が体験するはめになるとは思わなかった。体験したいとも思わなかったし。
だって、日本の政治家達は嫌いだけど、日本大好きだったし。サブカルチャー万歳。
でも、死んじゃったのよねぇ私と白く何もない空間で私はぼやいた。
ところで仏教の場合、輪廻転生の輪から解脱(抜け出す)ことが目的なのだけど、
私、仏教徒じゃなくて神道でよかった。うん。
「誠にこの度は申し訳ありませんでした。」
そう、目の前で土下座する見目麗しい少年を前に私はそう思う。
金髪碧眼で頭には金色のわっかで背中には白い羽。
どこの天使と言いたくなるような容姿だ。
ちなみによく日本人が思い浮かべる天使の羽は最初白ではなかったらしい。
「本当に、すみませんでした。」
「もう済んでしまったことだから仕方ないといえば仕方ないよね。」
ただ、転生トラック☆なんてでかでかと書いたトラックにひき殺されるとか
そういう最期を迎えたのが無性に腹が立つけれど。
「上司が、気まぐれに誰かを転生させようとしていたらしく
私が気がつくのが遅れたせいで・・・」
詰まるところ、上司が人間の創作物に興味を持ってそうか、こういう物が流行っているのか
と思い、面白そうだから自分もやってみようと思って実行し、この目の前にいる天使Aが
止めようとした時にはもう遅かったらしい。ちなみに転生させようと思ったのは
私のつとめている会社のモテモテで仕事も出来る上司だったらしい。
まぁ、あの人だったら転生トリップとかやらかしても大丈夫そうだし
人たらしだからイベントには事欠かないだろうけどね。
ただあの人が死んだら会社は潰れて私は路頭に迷ったかもしれない。
どこにも伝手はないし、男もいないしね。そう考えると私でよかったのかな。
「生き返らせるのは無理ですから、上司の思惑通りになるのは本当に癪ですし、
申し訳ないのですが、転生・・・して、転生させていただけないでしょうか?」
目の前の天使Aが上司の思惑通りになるのはと言ったくだりで、
天使Aのバックに憎悪の炎が見えた。どれだけ煮え湯飲まされた来たんだろう。
同情するけれど、うーん、転生・・・ねぇ・・・?
「転生っていうと、基本的に夫婦の間で出来た子供になるのよね?」
「まぁ・・・普通は・・・」
「保護者、ナシにしてもらえないかしら?」
精神年齢25才で赤ちゃんプレイをしたくないというのはあるが
それ以上に、ネックになってくるのは・・・
「何故です?」
「ないとは思うけれど、私がその異世界で名を馳せるとします。
その私を陥れようとする人達が私の両親に目をつけないと言えるでしょうか?」
名を馳せなくても、家族を人質に脅されるという可能性はあると私は思う。
その時に私は家族を捨てられるか? 捨てられるわけがない。
家族を捨てられるほど私は白状ではない。
「それに転生した私は、果たして普通の育ち方をするでしょうか?
いいえ、しないでしょうね。そんな子供を見て大人達はどう思うでしょうか。
子供達にも溶け込めず、大人からも相手にしてもらえないというのは絶望でしかありません。」
だから私は
「保護者は出来ればナシにして欲しいです。」
「わかりました。色々とその意見に関しては思うところはありますが、
その通りに致しましょう。それから・・・いわゆるチートですが・・・」
色々と思うところがあるということは、反対なんだろうなぁ、やっぱり。
「最初、貴方の上司はどうするつもりだったんですか?」
とりあえず聞くだけ聞いて見よう。
「一言で纏めると、最強に尽きます。バランスも何も考えていません。
貴方たち人の子が創作した物語に出てくるような能力もそうですし、
神話などに出てくる武器や防具、アイテムなどの無限所持や・・・」
聞いていて頭が痛くなってきた。それのどこが楽しいのかさっぱりわからない。
それは単に主人公が無双するだけの話になるだけで、そこに何の楽しみがあるというのか。
気に入らないからぶち壊す。それは子供がやることだ。いや、今回の一件自体
子供が思いついた事を何も考えずにしたというレベルの物だけど。
「今頃、他の神々に何度も殺されたり、言葉で言い表せない仕打ちを受けているでしょう。」
「あ、やっぱり、駄目な事なんだ。」
「あたりまえです! ・・・いえ、失礼しました・・・」
天使A恐えぇ・・・何度も殺すとか、他の神様もこえぇ・・・
恐くて思わず震えたよ、私。ものすごい怒気を感じたよ。
「チート、いただけるんですか?」
「はい。もうさしあげないとこちらの気が・・・
世界が破壊されるような物はさすがに無理ですが。」
なら、私が望むチートは・・・
女盛りは盛でも微妙なという表現は
主人公が思っているだけのことですので。
それから俺Tueeee! とか最強物は最強者で好きですよ、私は。
お気に入り登録させていただいている小説一覧にもチラホラと。
こちらがあちゃ様に影響される前に
投稿しようとしていた作品です。