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第3話 私の心

3ヶ月、慎太郎との距離は少しずつ近くなっていた。

その中で彼の姿が浮き彫りになっていった。



初めは遠慮がちだった口調も3ヶ月も経つとキツクなり

メールや電話の返事は本当に彼の気まぐれになっていた。



でも私は彼の掘った穴から出られなくなっていた。

1日1通のメールや連絡が入れば幸せ!

なければ地の底に落とされた。




そんな今日のデートも突然

「今から会えるよ♪」


のメールからだった。



そのメールを受け取ったのは大学の講義中だった。

私はそのメールを受け取ると迷わず教室を出た。



隣の席の由美は呆れ顔だ。



2週間ぶりに乗った車は、

鼻をつく彼のキツイ香水の香りで一杯になっていた。



「これ可愛いね。」


車に飾られたミッキーのぬいぐるみを指差す。


「おぅ」


彼が置くはずもなかった。


「どーしたの、これ?」



精一杯の私の質問にただ

「もらってん」

と答えた。


「ふぅ〜ん。そっか。」


それ以上怖くて聞く事ができない。

彼がではなく、彼の口からでる言葉に私が耐えられない。





行くあてもないドライブ。

この人以外となら退屈というより他はない。



なのに私の心も体も幸せで一杯なのだ。

誰はを堪らなく好きになると行き先なんていらないのかもしれない。



彼とどこかへ行った。

何かをした。

何かを買ってもらった。



何ひとつないのに満たされる気持ち。

このまま一緒に死のうかと言われたらこの時の私なら…。



きっと

死んでいたに違いない。




こんな私を見かねて周りの友達はさまざまなコンパに私を連れ出した。

学歴・家・それに顔だって悪くない。


優しく真っ直ぐに私だけを見てくれる。

そんな人に何人も出会った。



やる気のない私に由美は進んでフォローしてくれる。



「さとし君のどこがいけないの?」


「どーみたって慎太郎よかいーじゃん」


その通りだ。




でも私にはどの人も何かがたりなかった。

由美に言われて勧められるままに何人かの人とはデートもした。




みんな何も悪くない。


みんなから私に暖かい風が吹いてくる。



なのに私の窓は決して開こうとしなかった。



ただ、彼から吹く時には雨や氷混じりの風だけをしっかり入れていた。






ひたすら走った車はもう駅に着いていた。

「また、電話するわ。」


嘘つき!

心の中で私は叫ぶ。



「キスして」

帰り際に私は今度、彼に会うまでの魔法をかけてもらう。



「おまえ、またかよぉ〜」



そういいながら優しく触れる唇の感触をしっかり心に頭に焼き付ける。





「またね」



バイバイは言わない。

バイバイって言うと二度と会えない気がして口にできない。






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