第2話彼との時間
2週間が過ぎた。
2週間毎日、連絡をとった。
私から。
途切れ途切れの電話やメールでも私の気持ちは
日々に大きくなっていった。
家が遠い事を理由になかなか時間を作ってくれない。
「お店に来てくれたら会えるで。」
単なる客寄せに営業トークをしているように思った。
プライドの高い今までの私なら
「あっそ」
と電話を切っていたはず…。
なのに2週間目の日曜日
私は彼に会いにあの店に来ていた。
それからは毎週のように通った。
他の定員の人とも仲良くなり
みんな私を慎の子と呼んでいた。
それだけでも彼のものになった気がしてとても嬉しかった。
2人きりになれるのはいつも駅までの帰り道。
この10分たらずの時間が1週間の私の支えになっていた。
「初めて見た時より可愛くなったやん!」
こんな言葉だけで私は心がキュンってなった。
「今度はいつ会える?」
私はいつも改札口の前で聞く。
「分からんわー。ごめんな。
今日、また電話する。」
彼の口癖。
でもその{ごめんな}が私は好きだった。
大抵、電話はかかってこない。
絶対ねって指きりして別れても平気で破る。
待ち疲れた私がいろんな事を考えて試行錯誤の末
電話する。
「どーしたん?」
「電話くれるってゆったのに」
「ごめん!忘れてた。」
私は彼にとってそれくらいの存在だった。
それからまた2週間経ちまた彼からの電話に
待ちくたびれていつの間にか寝ていた。
朝の5時!
突然、私の携帯が鳴った。
「おっはよぉ〜」
「…」
「寝てた?」
「…」
呆れと眠気で言葉が出ない私を無視してご機嫌に話す。
「今、何時だと思ってるの?」
怒りの声で私は言った。
「ごめんな♪
店が長引いて今終わってん。
終わったら雪ちゃんの声聞きたくなって♪」
「本当に!すごい嬉しい♪」
さっきまでの怒りがどこかへ行ってしまった。
「今日、俺休みやねん。
映画でも行こか?」
夢でも見てるのかと思うほどの出来事だった。
「えっ!?
今日会えるの?嘘!
慎くん大好き。」
これが私の素直な気持ちだった。
この日、私は学校をサボった。
サボって遠い彼の最寄駅に向かっていた。
「今、どの辺り?」
20分毎くらいで彼からの着信!
いつも知らん顔のくせに勝手な人。
私はその着信に幸せを感じる。
「まだ〜?」
彼のせっかちが可愛い。
1時間ほどで駅に着いた。
着いたと思ったら
「ごめん。
今日、時間あると思ってたのに2時間くらいしか無理になった。」
「え〜!」
「ごめん!」
でもすぐ2時間でも彼といれるという幸せに満たされる。
2時間ではどこにも行けず彼の家に行った。
お世辞にも綺麗とは言えない家。
彼の部屋は特に酷かったけど片付けてあげるのも嬉しかった。
綺麗になった部屋で気づけば彼は眠っていた。
彼の寝ているベットに行って顔を眺めた。
本当に作り物のように整った顔。
目にかかった前髪にそっと触れると彼は目を覚ました。
「何してるん?」
「慎くん、寝ちゃったら私する事ないもん」
「ちょっとだけ寝させて。」
と向こうむく
「嫌!」
向こうを向きそうになるのを必死で止める私。
「もう〜。邪魔せんといて」
そういうと私を軽々持ち上げて自分の上に乗せた。
緊張のドキドキで死んでしまうんじゃないかと思った。
「何、緊張してるん?」
笑って言う彼に
「違うもん」
と言い訳しようとした時
私の口は彼の口に塞がれていた。
一瞬、何が起こったか分らず
きっと私はアタフタしていたのだろう。
そんな私を下から見上げて笑っていた。
その顔があんまりカッコよくて
「私の事、忘れないでね」
本当にそう思った。
「忘れるわけないやん」
そういって今度は長く甘いキスをした。
あんまり気持ちよくてこのまま溶けてしまいそうだった。
キスを気持ちイイと思ったのは彼が初めてだった。
彼は私は今までかかって創りあげてきた{私}という
ものを、どんどん壊していく…。
そして私はそんな彼にどんどん溺れていく。