第10話 卒業
フランスに発つ前日、最後に私は慎太郎に会った。
フランス行きを告げてから毎日、連絡を入れて来ていたのだ。
最後まで彼は私に行くなと言った。
「俺が気づくのが遅かったのは分かってる。
でも、もう俺を好きじゃないんやな…。」
私が初めて見る表情だった。
泣きたくないのに涙が止まらない。
でも、伝えないと!
私はトイレに駆け込んで涙を拭いて
大きく深呼吸した。
もう泣かない。
私は自分と約束して席へ戻った。
「今でも、私は慎くんが好き。
きっと、その気持ちは変わらない。」
「でも…」
「私の中で慎くんが一番じゃなくなったの。」
「だから、どーする事もできないの。」
「ごめんね…。」
私たちは終わった。
彼が全てだった私。
こんなにも人を好きになれるのか?
好きになっても好きになってもまだ好きになる私の気持ち。
どうしようもなかった。
好きすぎて憎いほど彼が好き。。。
そんな私が今日、彼から離れて卒業しようとしている。
あと30分もすれば私は日本を離れる。
携帯が鳴った。
<今日のあなたの運勢は>
…
…
私が登録した占いのメール。
占いばかり信じる幼稚な慎太郎に私が毎日送っていたメールだった。
今までのさまざまの事が私の頭を過ぎる。
彼にメールを打った。
「いっぱい、ありがとう!」
送信完了と同時に携帯の電源を落とし私は日本を発った。
もう二度とあんなに強く、激しく誰かを好きになる事はないだろう。
私の中に眠る人を好きになる事の喜びも苦しみも教えてくれた彼。
私は本当に感謝の気持ちでいっぱいになった。
そして心から幸せを願っている。
私が人生で一番好きだった人が幸せになってくれないと♪♪
私はいつでも自分に正直に生きていく。
不器用なのかも知れないけど
いつでも私は素直な心で。