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赦しの魔女  作者: alex
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第12話

 ルーチェは与えられた客室で用意された朝食をとりつつ、今後の予定について考えていた。

 実は昨夜の内にに手持ちの材料で調合できる薬は全て作ってしまった。後は試薬と改良、量産という手順になるのだが、いかんせん材料が足りない。

 ライルに渡した一覧に書いてある物が全て揃うとも限らないのだ。


 (考えていても仕方がないか。あぁ、そういえば)


 「ジェイドからこの屋敷に温室があると聞いたのだが、その一角を借りることは可能だろうか?」


 「温室……ですか?庭師に用意させますのでお待ちいただけますか?」


 「いや、無理にとは言わないが」


 「いえ、問題ありません。例え無理でも場所を空けさせますので!」


 たまたま食器を下げに来た給仕の女性二人に軽い気持ちで尋ねたルーチェは、その反応に少し困惑した。


 「主から薬師様に不自由させぬよう申し付かっておりますのでご安心ください」


 「他に何か入用なものが御座いましたら何なりとお申し付けくださいませ!」


とひたすら丁寧に頭を下げられては、ルーチェはもうそれに従う他なかった。




 その後、片づけられた客室に訪れた初老の庭師は、現在は使われていない温室へ案内してくれた。

 

 「この火炉(ストーブ)を焚いて室温を調節します。天窓はこちらの取っ手を回すと開閉が出来ます。水は入り口横のポンプから汲み上げ、貯水樽へ貯めてから……」


 簡単に温室の使い方や用具の説明を受けていると、屋敷の主であるジェイドが現れた。


 「二日ぶりだなジェイド。こちらにはあまり帰らないと聞いていたが?」


 「ええ、本日は皇子殿下の命により作業の進行具合の視察に参りました」


 「……昨日の今日で進行も何もないだろう。私が帝都に着いたのは一昨日だ。

 それより敬語は辞めて欲しいと言ったはずだか?」


 「視察はただの建前です。実は部下に届け物を頼まれまして。敬語ですが、一応職務中なのでご容赦願います」


 苦笑しながらそう返すジェイドに若干呆れながらルーチェはこぼす。


 「皇子の命を建前呼ばわりか……、それにしても王立騎士団長を顎で使うとは、なかなか肝の据わった部下だな」


 「ライルですよ」


 「は?」


 「その肝の据わった部下は」


 「……とても肝が据わっているようには見えないが?」


 「奇遇ですね、私もです」


 ジェイドは「やる時はやる男なので」と付け加えた。




 ジェイドに促され温室を出た二人は地下室へと向かった。

 そこには昨夜までは無かった数個の木箱が積んであり、ルーチェにとっては嗅ぎ慣れた香りがした。


 「これは……」


 「ライルに注文していた薬の材料です。本当は午前中に全て揃えたかったようですが、中には希少な材料もあったので、そちらは夕方までに届けると言伝があります」


 絶句しているルーチェにジェイドは、


 「やる時はやる男だと言ったでしょう」


 でなければ王立騎士団副団長は務まりませんよ。とさらりとのたまった。

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