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君臣のドグマ  作者: 回天 要人
承章
46/51

要郭編13

 月旦が黒い相棒の元気な姿を見たのは、何日かぶりのことだった。月旦が床でうなっていた間、牙城は月旦とは別室へ連れられていた。


「オオン!」


 牙城は廊下で月旦の姿を見つけるなり、勢いよく月旦の元へ駆けてきた。月旦の側まで寄ると、牙城は尾を振りながら月旦の膝へ飛びついた。昔は簡単に抱き上げることができた牙城だが、大きく育った今では、両の手で抱えても体重を支えきれない。月旦は黒い相棒に押しつぶされそうになりながら、廊下に尻餅をついた。


「すまない、心配をかけたな」


 月旦は久しぶりに、自分の頬が緩むのを感じた。笑みを浮かべたのは、一体いつが最後だっただろう。そう考えると、なんだか自分は損をしているような気がしてくる。月旦は自嘲した。何ゆえ自分はいつも張り詰めた空気を纏っているのだろう。

 素直になれと随訓に忠告されたこと、この数日間の出来事を思い返して、月旦は思う。長年の疑心暗鬼がすぐに消えるとは思わない。けれど、このままでいてよいのだろうかと、今の状態を考え直すきかっけも生まれた。随訓や朔白は本当に自分を消し去りたいと思っているのだろうか。何かの誤解ですれ違ってはいたが、本当は昔のように、穏やかに関係を築けたのではないか。自分が恐れていたものは、本当はなんだったのか。

 花冠皇に国を追われた。殺されかけもした、追放されそうにもなった。けれどこうして、月旦は今ここにある。ただそれだけのことではないのか。


「ただ、それだけのこと」


 月旦は口に出して呟いていた。自分でそう呟いたことで、何かが軽くなっていくのがわかった。

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