表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

銃ひとつで転生させられた俺、なぜか学園に入学することになった件。

掲載日:2026/04/01

「……ここが……」


 俺は目の前にそびえ立つ、巨大な建物を見て圧倒されていた。


 視界のはしからはしまでいっても収まらないサイズの、とにかく縦横どちらもデカいレンガ造りの建築物。


 これまた巨大な花壇には色とりどりの花が植えられ、俺の数十倍はあるような巨木もある。


 当然、人は多い。同じ制服を着た人たちが、建物の中で、外で、食事に勉強、会話に散歩と自由気ままに過ごしている。


 ここは――シンセシア氷河国国立、第一学園。この国で最も大きく、そして世界中から各分野の天才達が集う名門校だ。


「……日本でもここまでデッカイのはそう無かったぞ……」


 なんで俺がこんなマジですごいところに来ているのか? それは、ニルちゃんから言われたことが関係していた。


『シュウマ。今回異世界転移させる目的は、お前にこの学園の「星」を全て集めて欲しいからだ』


『笑った方がいい? 座布団一枚』


『黙れ』


 ニルちゃん曰く、この学園には古代に封印された『星』がいくつか眠っているらしい。


 だけどどういうわけか、その『星』は神々ですら干渉できないほどに巧妙に隠されているんだそうだ。


 ってなわけで、忙しいニルちゃんに代わって俺が派遣されたわけだ。


 ……一応俺、もう高校終わりかけてたんだけどな。また学校行かなきゃならねえのかよ! チクショウ!


「……ハァ……まぁ、いいや。しゃーなししゃーなし」


 まずは試験を受けなくてはならない。


 というのも、俺実はまだここに合格した訳じゃないんだよね。だからまあ、普通に一般受験生である。


 服装はニルちゃんからプレゼントされた……なんだこの、カーディガンというかなんというか、形容しがたい独特な服だ。でも実際、お貴族様が着てても似合うような綺麗な服ではある。


 一応、準備はいい。


「試験会場は……と」


 俺は手元のパンフレットに目を落とした。うーん、分からん!!


 どういう複雑さしてんだよこれ。三階の……まず、三階ってだけで独立したフロアが十以上あるけど。何個建物あるの? マジ……


「――うわあああああ――遅刻遅刻遅刻遅刻遅刻――」


「がふぉぁッ!?」


 俺は唐突に背骨がへし折られた。……いや折れてはないな、でもマジで痛い。


 軽く数メートル吹っ飛ばされ、もんどりうって地面を転がった後、視界にはビックリ顔の美少女が――


「わーっ、ごめん! 大丈夫?」


「い、痛ぇ……ん?」


 猫耳だ。


 不安げな顔で手を差しのべてくる美少女の頭の上には、可愛らしい猫耳が一対。


「猫耳だ……!」


「え……? そ、そんなに珍しいかな?」


「あーいや……」


 手を借りて立ち上がる。あーっ、マジで背骨が痛い。鏡見たら実は十五度ぐらい折れてたりしないかこれ……。


 大きなカバンを背負っているその少女は、俺に向かって何度もペコペコしていた。その度に二本あるしっぽが上下に揺れる。


 水色の地に白いメッシュがいくつか入った、淡い色の髪だ。瞳も同じようにどこか儚い色合いをしている。


 服装は大雑把に言うと動きやすい小さなドレスといった感じで、少しボーイッシュな雰囲気もある。貴族の子供だろうか?


「あ、そうだ。俺高等部を受験するんだけどさ、この……試験会場どうやって行くか分かる?」


「うん! 分かるよ! ボクも高等部に編入学する予定だから」


 おお、なんという偶然。背骨の痛みを対価に、ガイドを手に入れた! ラッキー!


 俺が内心で軽く喜んでいると、少女は再び視線を落とす。


「あー、えっとね、その……遅刻寸前だから、走らなくちゃ!」


「えっ」


 俺、早々に大ピンチ――。



 * * *



「ゲホッ、ゲホッ……あーーー」


 つ、着いたぞ。着いたぞッ!!


 俺は二人で全力ダッシュし、なんとか時間を告げるベルがなる前に待合室へ駆け込むことができた。


 こんな名門校だからか、体育館よりももっとデカそうな待合室には既に数えきれないほどの受験生が並んでいる。


「……ギリギリだったな。あと五秒遅ければ失格だったぞ」


「マジかよ」


「大マジだ。とりあえず、席に着け」


 試験官らしい、白髪の女教師が呆れた様子でそう言った。ほんとにギリギリセーフすぎる。


 俺は駆け足で最後尾の席に座り、荷物を机に置いた。一緒に走った仲間の子もとなりに座る。


「今から試験を開始する。私はここの教授だ、知ってる人も多いだろう。貴様らの受験は私が試験官を務める」


 糸目だけど、なにやら凄い眼光というか……威圧感が言い表せないくらいある。普通に怖い。


「……あの人裏で出来の悪い生徒とか殺してそうじゃない?」


「奇遇だな、俺もそう思う」


 剣の扱いとかうまそう。


「まずは筆記だ! 筆記試験はここで行うから、今からルールを説明する――」


 試験の内容はそこまで複雑ではない。


 解答時間は百分。教科は国数理社といったところ。


 そして一番耳を疑ったのが――持ち込んだあらゆる道具、魔法の使用可能。


 いやまあ、ニルちゃんからあらかじめ聞いてたけど、マジとは。カンニングし放題ってことになるんだが、逆に言えばテストはカンニングを前提に作られている、というわけである。


 そうやって工夫して難題を解く力も、学園の求める素質のひとつだとか。


「ね、分かったら教えてね!」


「喋るのはいいのか……?」


「さあ?」


 これで失格とかなったら俺泣くけど。


「五分後に問題の配布を始める! 用意しておけ!」


 うわ……緊張してきた。


「むぅ……」


 隣で難しい顔をして、炭酸飲料っぽいのを飲んでいる。レモンっぽい香りがするな。


「そいえば名前聞いてなかったね。なんて言うの?」


「俺? 俺は柊真――叶洒柊真(かのせしゅうま)。お前は?」


「ボクはミングルだよ! よろしくね、シュウマくん」


 そう言ってミングルはあどけない笑顔を見せた。かわいい。


「あとこれいる?」


「炭酸レモン水……なのか?」


「そそ! 自家製なんだ~」


 大きなカバンの中から追加で一本のガラスボトルを取り出し、手渡してくれるミングル。カバンを開けたときにチラッと見えたけど、普通にあと十本ぐらい入ってた。レモン水依存症か……?


「ありがとう」


 喉が渇いてたのもあり、さっそく飲んでみる。


 うーんシュワシュワ! どっちかというと微炭酸でそこまで刺激は強くないが、そのほうがすんなり飲みやすい。


 お味もレモンの爽やかな酸味だけでなく、奥にまろやかな甘さも隠れている。ハチミツでも混ぜてるのかな?


「マジ美味しい」


「よかった~。ふふ、ボクの趣味なんだよね、それ作るの」


「へえ」


 いい趣味だな。普通にこれを売って食べていけそうなくらいおいしい。


 その後も他愛のない会話をしていると、部屋前方でバンバン! と机を叩く音が聞こえた。


「試験を始める! 席に着け」


 試験官の教授が分厚い冊子を一人一人に配っていき、すぐに俺のところまで届いた。


 かなりの厚みがあるな……いや、これ百分で解くって無理じゃね? 共テの冊子を全教科合わせたくらいあるけど……?


「うわぁ」


 ミングルもちょっと顔をしかめた。分かるよその気持ち。


「……」


 指示のある通りに回答用紙に名前などを書き、開始を待つ。


「――始め!」


 そして、筆記試験が始まった!


 一ページ目から数学かよ、おい。内容は……数IIICくらいの分野じゃないかなこれ。


 俺はなんとか覚えていた公式だのなんだのを引っ張り出しつつ、一問ずつ解いていく。まぁ最初の方だったら解けなくはない……か。


 とはいっても、このままのペースだったら明らかに時間配分的に見合わねえな。


「……」


 部屋のいろいろなところからガサガサと音が聞こえる。かなり多くの人が参考書とかを開いているらしい。


「……うわー」


 そして大問その二。


 すみません、分かりません。


 なにこれ? なにこの、ヒラメキとかを要求するやつかな。確かにこれは公式とか分かってても解けない……。


「――すいません」


 教室前方から、子供っぽい声が聞こえた。見ると灰色の髪の少年が挙手をしている。


「実技試験っていつからです?」


「百二十五分後だ」


「じゃ、それまでちょっと離席しますね」


「……」


 え、もう解き終わったの?


 いやまさか……さすがに早すぎる。全部の問題一秒で解けても、さすがに無理があるだろ。


「じゃあわたくしもおやつ食べてまいりますわ~♪」


「……」


 しかももうひとり出ていったし。


 試験官さんが頭を抱えている。とはいえ咎めはしないあたり、ルール違反ではないようだ。


 ……まあ俺は……がんばろう……。



 * * *



「終わった」


「やっと終わったね!」


 どうやら俺とミングルの間には齟齬があるようだ。


 自己採点用に問題冊子に答えを書き写しておいたが、正直半分も取れているか怪しい……。


 まあ、ニルちゃん曰く実技のほうでいい成績を出せば受かるらしいからな。俺ははなからそっち頼みだ。


「ただいまですわ~」


 おやつを食べにどっか行ってた貴族っぽい人も帰ってきた。もしかしてこの人とかも実技頼みでやってるんだろうか?


「シュウマくんは解けた?」


「さっぱり……。数学と社会科はまず無理だな」


 現地人でもないのに歴史の問題解けはさすがに無理あるだろ。しかも俺、参考書とか持ってきてねえし……いや持ってきてても分からんだろうけど……。


 ミングルもちょっと困った様子で頬をかく。


「ボクも歴史はあんまりよく分かんなかったなあ。まあ、ボクそもそも筆記捨ててるから」


「やっぱそういうやつ多いのか」


「そうだね。受験生の三割……もないかな? 二割くらいが実技メインで挑むんだよ、ここ」


 普通にそっちのほうがやりやすいから、らしい。


 実際、貴族の家に生まれた子は騎士だのなんだのに向け、剣とか魔法の訓練を幼い頃から積むことが多いらしい。


「じゃあ、ミングルは貴族?」


「いや? ボクは一般人だよ、ふふ。でも、魔法には自信があるからね!」


 シュシュッ、とジャブで空気を殴ってみせるミングル。


「お、そろそろ時間みたいだな」


「だね」


 再び試験官が机をバンバン叩き、受験生たちを静かにさせた――


「次は実技試験だ! 場所を移るぞ、次は第三訓練場だ。十分後に間に合わなかった場合は失格とする! 気を付けろ」


「さて、俺たちも移動しようか」


「うん!」



 * * *



 ミングルのおかげで今度も迷うことはなかった。


 いや~……でかいなここ。


 なんだろう、東京ドーム何個分で言ったら何個だろう? でもかなり広いぞここ。


 ざっと見て百……いや、二百メートルくらいありそうか? 少なくとも、俺の見慣れた野球コートの十倍くらいありそうだ。でかい。


 俺たちが着く頃には既にそこそこの受験生が待機しており、各々の武器を素振りしたり、魔法を軽く試したりしている。


「……ん~」


 ミングルが少しキョロキョロしている。なんか見つけたのかな?


「実技試験では、あの人形に魔法を使ったりとかするんだけど……」


 指差した先には、数体の人形――と言っても、太い十字の木に鎧を被せたものだ――が等間隔で並んでいる。


「ちょっと、変な細工がしてあるみたい」


「力を試すやつとかじゃないのか? 測定どうこうみたいな」


「ん~、そうかも……」


 ミングルはコテンと首をかしげている。やっぱなんか気になるのかな。


 少しすると、先ほどの試験官の他にも数名の大人がやってきて、人形の奥のテーブルに座った。


「静かに並べ! 今から実技試験を開始する!」


 やはり、試験の流れを整理するのはあの白髪の女教授らしい。


「試験の内容は簡単だ。好きにその人形に技を使え――剣で斬っても、魔法を放っても構わん」


「むぅ」


 ミングルのしっぽが上下している。


「火属性魔法は……うーん、どっちかっていうと全属性効きが悪そう」


「ダメじゃん」


「シュウマくんも魔法?」


 俺はなんだろうな。ニルちゃんからもらった銃があるけど……


「だいたいそんなもんだ」


「じゃ、ちょっと気を付けた方がいいかもね。素材の相性的に、氷と水は少し効きにくそうだよ」


 ちょっと不平等感出るけどそれで大丈夫なのかな。


 こうやって駄弁っている間にも、試験待ちの列が綺麗にできていく。うん、俺たちは普通に最後尾だな。遅刻五秒前勢だもん。


「では、各々初め――」


 始まった!


 それぞれの人形にひとりの試験官がつき、指示にしたがって受験生たちがいろんな技を繰り広げていく。


 最後尾からでも迫力がよく伝わってくる……。受かるのか俺?


「とくにね、あそこの銀髪のちっちゃい子が今年一番の人材って期待されてるんだ。ルノウくんって言うんだけど、平民出身なのにすごいんだよ!」


「有名なのか?」


「百人に一度の天才だって言われてるよ」


「へー……」


 ん?


「百人」


「あ、百年! 百年に一人だよ!」


 ミングルの指差した、俺たちの列の先頭あたりにいるルノウ少年を目を凝らしてみてみる。


「……あいつ試験開始後にすぐ抜けたやつじゃね?」


「あ、たぶんそうだね」


「そしてなんかもめてね? 試験官と」


「……ほんとだね」


 ルノウくん、なぜかがたいのいい高身長男教師とぜっさんトラブル中らしい。なんでさ。


 もう既に試験はやったけど、そこで何か起きたんだろうか?


「ん~、見に行ってみない?」


「いいのか? これ列はずれても」


「いいよいいよ!」


 割と自由だなここ。実際他の人も数人野次馬してるし、まあ大丈夫か。


 俺とミングルは一緒に列から離れ、トラブルの様子を見に行った。


「――おかしいんですよ! 明らかに魔法が……」


「悪いが、オレから見ても不審な点は一切なかった。次がつかえる、退け」


「っ……」


 あれ?


 ルノウくん、試験がうまく行かなかったんだろうか。設備に不備があると訴えている様子だが、試験官のほうは淡々とそれを流している。


「おかしいなあ……すごく有名な人だし、腕は間違いないと思うんだけど」


「……っ」


 ルノウくんは納得が行かない様子でしぶしぶ列を離れ、足早にどこかへ去っていった。


 試験官はそれを何の感情も宿さないような目で見ると、すぐに次の試験を始めた――


「……戻るか」


「うーん」


 それからしばらく待っていると、ようやく俺たちの番が来た。な、長かった……。


「次。名前は」


「叶洒柊真!」


「さっさと終わらせろ」


 よ~し、頑張ろう。とはいってもやることは決まってるんだが――


「顕現――『轟響の夜明け(レコ・ラ・ローヴ)』!!」


 眩い紫電と共に、俺の右手に漆黒の銃が出現する。


 片目で狙いを人形へ定め、そして正確にトリガーを引く――


「爆ぜろ」


 ――視界が白く染まった!


 遅れて、まるで天災のような衝撃波、そして爆音が体に迫る。そして視界が戻ると、そこにあったのは――


「な……!」


 木っ端微塵に吹き飛んだ試験用の人形。それから、破片で頬を僅かに切った試験官だった。


 愕然とした様子で、試験官は砕けた人形の残骸を見ていた。


「あり得ない……! 破られただと……!?」


「どうだ? 成績。合格かな」


 これなら大丈夫だろ。


 ……だが、試験官は妙に血走った目でこちらを睨んできた。


「……何をした?」


「え? 普通にバンって」


「そんなものでオレの結界が破壊されるはずが――」


「へえ、結界」


 たん、と軽い足音が、妙にこの訓練場へこだまする。ミングルだ。


 気付けば他の試験官や受験生は静まり返り、みんなこちらへと注目をしていた。


「結界ってなんの結界なの? 先生」


「……っ」


 しまった、という顔だ。


 結界って……バリアとかだよな。だったら、まさか。


「最初から違和感があったんだよね。ここの人形だけ、変に魔力でおおわれてるっていうか。……でも、先生が結界で守ってたなら説明はつく」


「何を根拠に、戯言を……平民風情が!」


 え、自白してなかったっけ今。


 試験官は目つきをこれまでにないほど鋭いものにし、俺とミングルのほうを睨み付けている。


「……ファウストゥルス教授。何があったのかよく知らないが、試験に不備があったようだな」


「……!」


 最初の女教授がそう問い掛ける。


「……まさかあいつ、試験の結果操作したりしてんじゃねえだろうな。あのルノウくんもこの試験官でトラブってたし」


「うん、ありうるね。……でも証拠がない……」


 確かにそうだ。


 結界で本当に守ってたのか、それを示す証拠がここには――


 ――バァン!!


「お待ちなさい! このフォンディーセヴァン家の令嬢たるわたくしが――あれ? もう終わったんですの?」


「……いや、そうでもないみたいですね。下ろしてくれませんか」


 突如、訓練場の扉を文字通り蹴破って二人の人物が姿を見せた。ひとりは……あのおやつを食べに出ていってた貴族の少女で、もうひとりはルノウくんだ!


 少女のほうは片手に大きな書類の束を、もう片手にルノウくんを抱えている。ルノウくんはかなり疲弊した様子だけど……大丈夫かな。いくらルノウくんが小さいとはいえ。


「そこのファウストゥルス教授! アナタのすべての試験結果に異議を申し立てますわ!」


「……アルコトラ・フォンディーセヴァン……!」


 ファウストゥルスがいっそうその表情を険しいものにする。


「アナタ、理事長の伯爵と共謀して意図的に試験の結果を操作してたみたいですわね? キッチリ証拠も押さえておりますのよ!」


「なぜ……裏切ったのか……!」


 ほう。


 どうやらこのアルコトラ令嬢とルノウくんは、試験の結果についてこの短期間で証拠を持ってきたらしい。


 俺とミングルだけではあと一歩足りなかったところに。ベストタイミングだ。


「裏切ったというか、まぁあのお口が固い伯爵にもいろいろお話を聞ける、ということですよ。僕、得意なんですそういうの」


「怖」


 明らか拷問だろそれ。わかるぞ。


「じゃ、今回の試験、いろいろ問題があったのは確実みたいだな」


「……平民如きが……! 所詮オレのような高みには届かぬ虫けら風情で……」


「あら? わたくし、貴族ですわよ?」


 アルコトラさんがフフンと笑った。


「……ッ!」


 その場に崩れ落ちるファウストゥルス。


 なんとか……なった?



 * * *



 後日。


「バッチシでしたわね!」


 アルコトラさんは大きなパフェを頬張りながら、俺たちに向けて大きくサムズアップを決めた。


「万事解決ですね。あはは、三人とも、わざわざご協力くださってありがとうございました」


 ルノウくんがひとまわり小さいパフェを食べながら言う。


 今、俺たち四人は無事に合格証を貰い、晴れてこの第一学園の新入生となった。そのお祝いや、先日のアレコレの話も兼ねてふたたび集まったわけだ。


「俺は自分のできることをしただけだよ」


「ボクもボクも。弱きを助けて、強きを魚のエサにするって言うでしょ!」


「使い時も文面も全部間違ってるって話する?」


 それにしてもここのパフェうまいな。スティ……スティなんとかとかいう名前らしいけど。


 第一学園併設のカフェのひとつで、学生たちにも人気なんだそうだ。ちなみに滅茶苦茶広い敷地には、あと五個くらい別の店があるんだとか。広すぎだろ。


「にしてもあの教頭先生怖かったですわね! おめめがジャキーンって」


「教頭? どこにいたんだ教頭って」


「合格者貼り出しの時に看板の横にいましたわよ。金髪で、スーツ着てて、あとドラゴンみたいなツノが」


「ああ、クロ先生。確かにかなり見た目は怖いですよね」


 ……いたっけなぁ……。


「シュウマくんったら自分の名前見つけたとたんに舞い上がっちゃってさ、それどころじゃなかったもんね」


「う……まあ実際そう」


 大喜びすぎて、あんまり記憶がないレベル。


「これから制服とか、教材とか準備しないとだからね! 楽しみ~」


「ですね」


「だな」


「あら? わたくしはもう既に用意してありますわよ」


 合格発表前から準備済みなのか。早いな。


 俺はカフェの壁にかかっているカレンダーを見た。学校開始は二十日後。


 始まったら、本来の目的の『星』集めにも着手しないとだな。だいぶ忙しくなりそうだ。


「――楽しみだなあ!」


 ふふ、と俺の隣でミングルが笑うのだった。

 ハッピーエイプリルフール!!!


 いつも書いてる長編のエイプリルフール話です。よろしくね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ