第5話 シュゼットは、レナルドと初めてのお茶会をする
本日2回目の更新です。
孤児院に行った日の翌日からは、わたしは空き時間を見つけては繕いものの練習をして、エメには不要になったドレスや服飾品をまとめて売ってきてもらった。
孤児院の修繕費にしてもらうために、まとまった額を1度に寄付した方が良いと思ったからだ。
そうして慌ただしく過ごしているうちに、あっという間に2週間が経ち、レナルド様とのお茶会の日になった。
コルネイユ侯爵邸の薔薇園は満開の花盛りで、屋敷は薔薇の芳しい香りに包まれていた。
「ごきげんよう、レナルド様。ようこそお越しくださいました」
「こちらこそ、お招きありがとう」
「まずは薔薇園をご案内いたしますわ。ちょうど今が花盛りですのよ」
わたしはレナルド様にエスコートしていただきながら薔薇園を案内した。
薔薇園は色とりどりの薔薇の花が咲き乱れている。
「わたしはこちらが特に気に入っておりますの。明るい色のお花は心も明るくしてくれますもの。レナルド様はお好きなお花やお色はございまして?」
わたしはオレンジと黄色の薔薇を指し示しながら、レナルド様に尋ねた。
「私も明るい色の花はうつくしいと思う。花が心を明るくしてくれるというのは、素敵な考え方だな」
「ありがとうございます。そうおっしゃっていただけて、とても嬉しいですわ」
薔薇園をひと通り鑑賞したあと、ガゼボにあつらえた席にレナルド様を招き入れる。
ガゼボの中心に置かれた猫足のテーブルにはコルネイユ侯爵邸の薔薇を用いたスイーツの数々が並ぶ。
「案内をありがとう。見事な薔薇園だった」
「お褒めにあずかり光栄ですわ。この時期、当家は薔薇の香りに包まれていて、とても華やいだ心地になれますの」
「シュゼットは薔薇の香りが好きなのか?」
「薔薇も好きですが、最も好きなのは柑橘系の香りですの。爽やかな心地になれますもの。それに、柑橘類も好きですわ。甘酸っぱくてとてもおいしいのですもの。レナルド様はなにかお好きなものがございまして? 教えていただけましたら、次回からはそちらをご用意させていただきますわ」
時を遡る前と行動を変えようと思ったわたしは、とかくレナルド様とたくさん会話をしようと努めた。
レナルド様からの話題の提供はほとんどないし、相変わらずの無表情だけれど、きちんとわたしの話を聞いて相槌を打ったり、質問をしたりしてくださる。
そのお陰でお茶会は和やかに進行した。
会話がなく気まずい雰囲気だった時を遡る前とは大違いだ。
もしかしたら、レナルド様はわたしに興味がないのではなく、ただ寡黙なだけなのかもしれない。
その考えが当たっていたことを、帰り際のレナルド様の問いかけで知った。
「シュゼット、私は口下手で会話があまり得意ではないが、君は楽しめただろうか?」
レナルド様はどこか不安そうにそう尋ねた。
わたしはそれを意外に思いつつ、にっこりと笑って答えた。
「ええ、もちろん。とても楽しかったですわ。レナルド様はわたしの話をきちんと聞いてくださいますもの」
わたしの返答を聞いたレナルド様はほっとしたようだった。
「そうか。それならば良かった。私も君と過ごす時間はとても有意義だった。学園があるので週末しか時間が取れないが、また一緒にお茶をしよう」
「ええ、是非」
そうして、次回の約束と共に、レナルド様との初めてのお茶会は終始和やかな雰囲気のまま終了した。
本日18時にも更新予定です。




