第1話 シュゼットは、後悔する
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ぽたり、ぽたり、と断続的に天井から雫が滴り落ちる音が、暗くじめつく地下牢にこだまする。
瞳を閉じた暗闇の中、わたしはひたすらその音を聞いていた。
当初は触れることすら躊躇われた粗末なベッドに横たわったわたしには、もはやまぶたを持ち上げる気力すら残っていない。
身体が鉛のように重くて、凍えるように寒い。
もういくらもしないうちにわたしの命の灯火は消えるのだろう。
侯爵令嬢であるわたしがこんなところで人生を終えるなんて。
今際の際に押し寄せるのは止めどない後悔。
わたしという婚約者がありながら他の令嬢にうつつを抜かした婚約者のことが許せなかった。しかも相手はわたしよりも遥かに身分の低い、平民上がりの庶子の男爵令嬢だなんて。
軽んじられていると思った。
蔑ろにされていると思った。
そして、どうしても許せないと強く思った。
そんな短絡的な思考から衝動的に婚約者を害し、その結果、わたしは地下牢へ入れられてしまった。
……けれど、こんなところでみじめに死ぬくらいならば、浮気性の婚約者などあの男爵令嬢に譲ってしまえば良かった。
いくら後悔したところで既に遅い。
わたしはこのままここで死ぬのだろう。
ああ、なんて愚かなことをしてしまったのかしら。
後悔と自責の念が重たいまぶたの下から涙となって溢れるとともに、わたしの意識は暗く深い沼の底へとゆっくりと沈んでいった。
本日はあと2回、15時と18時にも更新予定です。




