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エキ La stacio
なかなか来ない地下鉄を待っている。
このホームでよいのか、どうもわからない。駅員が脚立を持ってきて上り、天井からぶら下げられた黒板に何時何分と時刻だけ書く。
わたしは彼に行き先を告げて、ここでよいのか尋ねる。
駅員は言う、あなたはこのように移動すべきである。
わたしは言われたまま、長いホームの端まで歩き、身をかがめなければ入れない通路を進む。
別のホームに出てそこで地下鉄を待つ。しかし来ないので心配になり、時刻を記入する駅員に訊く。
彼は言う、あなたはこのように移動すべきである。
わたしは言われた通りに梯子を使い下の階層に移る。
地下鉄は来ない。駅員に訊く。
そんなことをくり返した果てに、わたしは自分の手足が枯枝のように細くなったのを知った。老いたのである。
わたしが通ってきたどのホームにも、何度でも地下鉄は来て出発しただろう。世の人々は何の困難もなく乗り下りをくり返して日々を暮らしただろう。
だがわたしだけは、いまだにやってこない地下鉄を待っている。
Fino