表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/13

マドベ Apud fenestro


小さな想像のかめにはくみつくすことのできない不思議な海もみた。

それは藍色あいいろにすんで、そのうえを帆かけ舟の帆が銀のようにかがやいてゆく。


――中 勘助『銀の匙』






 窓辺でわたしはためらっている。


 わたしにも翼があり飛びたてるはずなのだが、自分でそれに触ることができず、いまひとつ確信がもてない。


 眼下がんか虚無きょむの闇である。飛べなければ際限さいげんもなく落ちていくだろう。


 空もなんだか黄ばんだ歯のようなおかしな色で、進んで目指したいところに思えない。


 一方、ずっとここにいるわけにもいかない。


 背後から部屋の壁が迫ってくる。いずれこの窓と壁は一枚の板になるだろう。わたしの居場所はなくなってしまう。


 思いきって飛べなくはないのだ。しかし考えすぎたせいか、自分が鳥であることに疑いの感情が生じてきた。自分はひょっとしたら魚なのでは? 


 ますます決断ができなくなった。いまや体がまったく固まってしまったようだ。


 もう早く壁が来てわたしを無理やり押し出してくれればいい、そう思いはじめた。


 すると今度は壁はのろのろとした動きしかしなくなり、いっこうに近づいてこない。


 誰かなんとかして、と叫びたくても声は出ず、わたし以外世界に誰もいるわけがなかった。





 Fino






旧作に筆を加え、あらためました。


(作品の無断使用は、ご遠慮ください。)



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ