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うしろに並ぶ

作者: 雉白書屋

 夜中。家に帰る途中、神社に寄った。

 別に何か願い事があるわけじゃない。そもそも神など信じちゃいない。

一応、挨拶のつもりでお参りはするつもりだが、ただの酔い覚まし。

 この神社はそこそこ広く、周りをぐるりと木々に囲まれているから空気がいい気がする。

それにこの時間帯は人がいないから一人でのびのびと……ではなかった。

 鳥居をくぐって中に入ると、ちょうど社に向かって歩く人影が見えた。

 ザクザクと敷き詰められた砂利を踏む音が聞こえる。

 わざわざうしろに並ぶのもなんだかな、と思った俺は端にあるベンチに座ることにした。


 最近は暖かくなってきた。夜風が気持ちいい。

 目を閉じて欠伸を一つ。このままここで眠るのもいいかもしれない。

 尤も、あの人がどっか行ったらの話だが。


 ――チャリンチャリ


 賽銭の音か。


 ――ガラガラガラ


 今のは鈴の音。


 ――パンパン


 はいはい、手を叩いてお祈りね。



 ……。


 …………。


 ………………。


 いや、長いな。足音がしない。

本社の周辺は砂利が敷き詰められているからわかるはずだ。

 まだいるのか? 

 いたよ……。

 目を開けると賽銭箱の前にはまだ人影があった。

 目を凝らし、それを見つめる。頼りない外灯。影が濃くてよく見えないが

ダウンのロングコートを着た恐らく中年、あるいは初老の女性。


 しかし、いつまで祈っているんだ? 一体どんな願いだよ。

まあ、どうでもいいがっと、終わったみたいだな。お辞儀して……。


 ……。


 …………。


 ………………。


 ……………………。


 だから長いって! ああ、またペコペコお辞儀してって

まるで近所のおばさんと立ち話しているみたいだ。

 でもここは神社。じゃあ神と話している? はっ、馬鹿馬鹿しい……。


 俺はそれからしばらく待ったが、おばさんは帰ろうとしない。

 別にお参りなんてどうでもいいんだが

なんだかイライラしてきたので俺はそっと、おばさんのうしろに並んでやることにした。

 咳払いでもしてやればビクリとし『あらヤダ』とでも言ってそそくさと立ち去るだろう。

驚いた顔を見るのも一興だ。


 よし。足音を出さないよう静かに、静かに……。

 

 ……いや、何かがおかしい。

 

 変だ。

 

 絶対に変だ。

 

 おばさんのすぐそばに黒い、あれはまるで……。


 ――ザクッ


 あ。


「ひっ! あ、こ、この人です! この人この人なんですよぉ。あふ、ふふふこの人、この人ね、ね、ね、この人なんですこの人この人ですからね、はっ、はっ、ひっ、はっ、この人ですからこの人この人ですよこの人この人この人この人この人この人! 代わりに、ね、この人ですからねこの人なんです」


 おばさんはそう言うと凄まじい勢いで去って行った。



 以来、俺のうしろに誰かがいる気がしてならないのだ。

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