異世界で飛行機
そして、マリアを連れて病院を出た。外に出ると、エリザは辺りを見渡した。
「ところでエリザ、これからどうするの?」
これからの方針を尋ねるミーナに対し、エリザは答える。
「ひとまず村を出ようかと思うんだけど」
「ええ!?じゃあ何処に行くつもりなの?」
「まぁ当てはないけど、どこか遠くに行きたいなと思って」
「ふーん……。分かった!じゃあ私が連れて行ってあげる!」
「おお!頼もしい!」
こうして3人は旅立つことになった。
だがその時、マリアが立ち止まった。
「あ、あの……。私もついていっても良いですか?」
突然の発言に驚いたが、健太はすぐに承諾をした。
「うん、もちろん。歓迎だよ」
マリアは嬉しそうにお礼を言う。
すると、エリザが思い出したように呟いた。
「そういえばマリアの家にあった魔導書がなくなっていたね」
「ええ!?」
慌てて周りを探し始めたが見つからなかったようだ。
落ち込むマリアにミーナは励ましの声をかけた。
「そのうち見つかるって!」
「そうだといいんですけれど……」
そうこうしているうちに日が落ちたので野宿をすることに決めた。
だがその前にやらなければいけないことがあった。
それは食料の確保だ。だが、近くの店はもう閉まっていた。
困り果てていたとき、マリアが提案してきた。
「私の家はパン屋なのですが、売れ残った商品があると思います。それを譲ってくれないか聞いてきますね」
「本当?ありがとう!」
マリアの提案に2人とも喜んだ。
数分後に戻ってくると許可を貰えたようで、明日取りに来てほしいと言われた。
これで今夜の分をなんとか調達できた。
その後は簡単な食事を済ませてから眠ることにした。
次の日の朝、マリアの家に集まると、マリアの父親が待っていた。
彼は挨拶したあとにパンが入った袋を手渡してくれた。
「これは……昨日の残り物で悪いが食べてくれ」
健太は笑顔で受け取ると、エリザが代わりに返事を返す。
「ありがとうございます!」
お礼を言ったあと、マリアと一緒に家を出る。
外に出たとき、マリアがこちらを見て尋ねてきた。
「そう言えば貴方たちの名前を聞いていなかったわ。教えてくれるかしら」
名前を聞かれると健太は自己紹介を始めた。
「俺は夏目健太。よろしく」
続いて、エリザとマリアも名前を告げる。
健太はエリザに尋ねる。
「さてと……。まずはこの村を離れないと行けないわけだけど……これからどうしようか?」
これからの方針を考えると健太が答えた。
「まずは、この村を出てから考えようよ」
エリザがそれに続いて話す。
「うん。そうだね。それからは当てのない旅になると思うよ」
そこで、ミーナが意見を言う。
「じゃあとりあえず、北に向かってみるのはどうかな」
ミーナの提案を聞いた後、皆で相談した結果決まったことがある。
それは徒歩での移動だった。理由は、馬車の用意が無かったこと、お金を持っていないことの2点。
そのため徒歩の旅となった。
幸い、水には困らなかった。
というのも近くに綺麗な湖があり飲料水として活用できる。
食べ物も、川魚を捕まえたりすることでなんとかなっていた。
しかし、ずっと森の中ということもあって、なかなか街に着くことが出来なかった。
それでも、魔物に襲われることもなく平和だったので安心していた。
だが、それもつかの間であった。
ある日のこと、突然空が暗くなったのだ。
雨でも降るのかと思ったが、すぐに違うと分かった。
雲ではなく巨大な物体が飛んでいたのだ。
空を飛ぶ乗り物の登場に驚いたものの、エリザが話しかける。
「あれは、飛行機じゃないか?」
「えっ!?」
エリザの言葉に驚くと、今度はミーナが尋ねた。
「知っているの?」
「ああ、一度だけ乗った事があるんだ。あれは間違いなく旅客機だ」
「旅客機?」
健太が首を傾げると、今度はエリザが答える。
「飛行機って言うのは、空飛ぶ乗り物の事だよ」
「そんなものがあるなんて……」
健太が驚いていると、飛行機は健太達のすぐ近くに着陸した。
すると中からは4人の男女が出てきた。
1人目は日本で言う巫女のような格好をしている女性。
2人目の女性は、白い鎧を身につけていて、腰の辺りに剣を装備している金髪の女性。
3人目の男性は茶色のジャケットを着ていて、背中に槍を背負っている。
4人目の男性は、赤い上着にズボン。それに靴を履いており、両手にそれぞれ拳銃を持っている。
彼らが地上に降り立つと、最初に口を開いたのは赤服の男性。
「大丈夫ですか!?」
健太は彼らに声をかけられるまで気づいていなかったのだが、声をかけられて驚いた。
「ええ、無事です」
返事を聞くと彼らは安堵した様子で息を吐いた。
そして、次にエリザの方を見た。
「そちらのお嬢さんは怪我は無いですか?」
そう言われて初めて健太達は気づいたが、確かにエリザが無傷であることに疑問を持った。
何故ならばエリザの服装が、今まで出会った冒険者達とは違うことに。
エリザの見た目は、魔法使いというよりは僧侶に近い。
その証拠に杖は持っていないしローブ姿でもない。
普通の服を着ている。
だがそれは、あくまで外見の話だ。
実際は彼女こそが、正真正銘本物の賢者である。
エリザは自分が無事なことを伝える。
「私も、彼に助けられたので……」
彼女がそういうと男は微笑みを浮かべて感謝する。
「そうなんですか。ではありがとうございます」
そう言って頭を下げてきた。すると、他の3人もお礼を言い始めた。
すると、男が話し始めた。
彼は佐藤和樹と名乗り、後ろに居る3人は仲間だと紹介する。
「皆さんはこの国の人ではないみたいですね」
彼の言葉を聞いてエリザとマリアはすぐに質問をする。
「はい。実は私たち旅をしていて、それで道に迷ってしまったんです」
エリザが事情を説明すると彼は納得するようにうなずき、そして健太に顔を向けた。
「もしかしたら……君が夏目健太くんかな?」
健太の名前を聞いて、後ろの仲間達にも反応が現れる。
「彼があの?」
「そうみたいだな」
「ふーん……意外と普通の男なんだね」
そうこうしているうちにエリザとマリアから質問される。
「貴方たちは一体誰なんですか?それにここはどこでしょうか?それとさっき言っていたこの国というのは?あとどうして俺の名前をご存知なんですか?」
一度にたくさんの事を尋ねられても答えられなかったのだろう。
少し考える素振りを見せた後、 順番に説明していくと答えた。
まずこの世界は地球と呼ばれる場所とは別の次元に存在するということらしい。
簡単に説明するとこの国は日本という名前なのだが、別の国に行けば全く別の名前がつけられており、違う文化や文明があるそうだ。
さらにこの国についても答えてくれた。
この国はアースランドという名前で、今俺たちがいる場所は首都アルフという街らしい。
他にも様々なことを語ってくれたが、覚えているのはここまでだった。
なぜなら……
(あれ、意識が…………)
そこで健太は倒れた。
「おい、しっかりしろ!」
倒れそうになると和樹に支えてもらう。
その後、健太は和樹たちに担がれ、どこかの部屋に連れてかれたようだ。
そこでベッドに寝かされ目を覚ます。
どうやら、気を失っていたようで頭が痛む。
起き上がると、目の前には白衣を着た医者がいた。
彼は健太が起きたことに気づくと、健太に向かって声をかける。
「どうしました?気分でも悪いのですか?」
「あぁはい……」
健太は状況を理解できておらず混乱しているが、医者の言葉を聞き何とか返事をした。
そして思い出す。
自分はトラックに轢かれて、それから……それからの記憶が無い。
ということは死んだのか。と健太は考えた。
しかし、今の自分の体を見てみると五体満足であることがわかる。
それどころか、擦り傷一つ無いのだ。おかしい。
そんなことを考えながら考えていると、隣にいたミーナが話しかける。