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パーティーメンバー追加?

健太の事について色々と聞いてきたのだ。


例えば好きな食べ物とか、嫌いなものとか聞かれたり、家族構成についてとか、どこに住んでいるとか。とにかく質問が多かった。

それに答える度に健太は答えていった。


正直面倒臭いと思った時もあったが、ニコニコと笑いながら楽しそうに話す姿を見ていると悪い気分ではない。

そして、最後にマリアが言った言葉で、健太は完全に恋に落ちたのである。




「私と健太さんでは住む世界が違いますね」

悲しそうな顔をしながらそんなことを言われたら「何言ってんだよ。俺の世界連れて行ってやるぜ」とカッコイイセリフを言いたくなる。


実際言いたかったが、流石に初対面の相手に対してそんなことは言えないのでグッと我慢した。

そして今、二人は食事を終えてマリアの自宅にいた。

彼女は自宅の鍵を掛けながら健太に向けて話しかけてくる。


「先程のお話はお断り致しました」

そうなのだ。マリアは結婚の話を断ったのである。

その理由は幾つかある。


1つ目は、「私は結婚したい相手がいます。なので申し訳ありませんが、貴方と結婚できません」

とハッキリ断っている。


2つ目は、「私は冒険者として生きる道を選びました。ですから、これからは冒険者として活動していきます。そんな私の隣に貴方のような男性がいると、足手まといになるだけでしょう」

そう言っているのだが、実は彼女の言葉には続きがある。



『私には夫が居ます』という台詞。



しかし彼女は『夫は死んでしまい、現在は独り身で暮らしています』と言っている。これは一体どういうことなのだろうか?


3つ目の理由は、「私の身体には多くの古傷があります。そんな女性と結婚したいと思いますか?」

彼女は冒険者であるため常に危険な状況にある。

当然、モンスターと戦う機会もあるため、生傷が絶えない。

だから多くの古傷を負っているのである。


だが、それが理由で断られた訳ではない。

もっと根本的な問題があるのだ。

そう、健太が日本人であること。

彼女はその事を知っていた。

それは彼女が初めて会った時に名乗ったからであり、その情報を知っているのは、彼女がギルド長から聞いたから。


つまりギルド長も日本人だったから。

ギルド長はマリアが新人の冒険者とパーティーを組むと聞いて、健太のことを色々と話したそうだ。それで事情を知ったとのこと。

ちなみに、健太も彼女と同じ様に名乗っていた。お互いの名前を教え合ったことで二人には名前で呼び合う関係が出来上がっていた。



******


「今日は本当にありがとうございました。ケンタ様とお話し出来てとても嬉しかったです。またいつか会えると良いですね」

そう言って彼女は寂しそうに笑っていた。


その表情を見て健太の心は痛んだ。

(何か言わないと!)


しかし、上手い言葉が出てこない。



すると、そんな健太を見たマリアは微笑みを浮かべながら言う。

「ケンタ様、どうか御自分を責めるような事はなさらないで下さい。これも私が決めた事なのです。ですから、もうお気になさいませんよう……」

「で、でも!」

「いえ、いいのです。こうしてケンタ様に出逢えた事がきっと神様からの贈り物なのです。もし仮に神様の御意思だとしたら……私に悔いはないですよ」

マリアはニコッとしながらそう言った。



その姿を見て、健太は何も言えなくなってしまう。ただ一言だけ告げることが出来た。


「……必ず助けに行く」

「……はいっ!待ってますねっ!あ、それとこれ……持っていて下さい。これがあれば、きっと大丈夫でしょうから」

マリアは小さな魔石を2個取り出して、1つは自分のポケットへ入れて、もう一つを健太に差し出した。そして、差し出された魔石を受け取ると――


(あれ?この感覚……前にもあったような……)

健太は不思議な感覚に襲われていた。

そして魔石を手にした瞬間―――――――――――









(ん?なんだ?なんか記憶が流れ込んで来るぞ?なんだ?なんだ?)

――――健太が困惑している。



しかし、流れ込んできた映像や音声はそれだけではなかった。

健太の意識の中で、まるで誰かに操られるかのように別の人格が勝手に動き出したのだ。

「な、なんですかこれは!?これは貴方の記憶?」

そう、マリアの中にあった健太の魂が入り込んだ。

そして二人は一つとなった。

******




マリアは呆然と立ち尽くしていた。

目の前には健太が立っている。その健太が――



「僕と一緒に行けば安全に暮らせるよ。それに僕は君が好きだ」



健太の口を借りて話し始めるマリアの知らない女性が居るのだ。

(誰なの?この女性は一体何者なの?それに私はどうしてこんな所に一人でいるの?)

訳がわからず混乱する。



ただ一つだけ理解できた事がある。

(この人は危険な人だわ。この人の側にいると危険だわ。早く逃げなければ……)

マリアの直感がそう告げていた。


しかし、逃げる場所がない。周囲を見渡しても暗闇が続くだけだ。


「ここはどこでしょうか?」

「ここか。ここはね君の心の世界だよ」

「私の心の中?」

「そうさ。僕の力を使えばここから抜け出すことが出来るんだよ」

「どうやって出るの?」

「こうやってだよ」

健太が両手を前にかざすと空間に変化が起きる。


真っ暗だった周囲に光が灯り始める。

それと同時に、今まで見渡す限り広かった闇の世界に壁が現れた。

それは、マリアが閉じ込められている箱の蓋であった。


「これは?」

マリアは驚きながらも尋ねる。


すると健太が答える。

「これはダンジョンの入口。この世界には沢山の出口があって、そこから色々な場所に行けるんだ。例えば今いるこの場所だって、その気になれば別の場所へ移動することが出来る。まぁ簡単に言えばワープが出来るということだね」


「凄いですね。それなら私も一緒に行きます」

「いやダメだ。君はここで待っているんだ。そうしないと、ここから抜け出せない」

「え?そうなの?」

「ああ。だから大人しく待っていてくれ」

健太はそう言い残して光の扉の向こう側へと消えていった。

「あの人に着いて行ったら助かるのかな?」




そんなことを考えながら待つこと数分後。

健太が戻ってきた。

その手には、何かを大事そうに抱えている。


「はい。これを君にあげる」

健太はマリアの目の前に何かを差し出す。

それは――





「えっ?これって!?まさか……」

「うん。その通りだよ。これって君のだろう?大事な物だったんじゃないのか?」

それは紛れもなく彼女の夫だった男性の遺体だった。



「あ、ありがとうございますっ!うぅっ、ケンタ様……」

「大丈夫かい?ほら涙拭きなよ」

健太はハンカチを手渡した。


「あ、ありがとうございます。本当にありがとうございます」

彼女は涙を流しながら何度も礼を述べた。

その姿を見て健太は思った。

(なんて綺麗な女性なんだ。やっぱりマリアさんは女神様のような人だ)


そんな健太の心の声を聞いて、マリアは微笑みながら言う。

「ケンタ様はお優しい方ですね。本当に感謝しています。ところでケンタ様、お願いがあるのですが……」

「はい。何ですか?」

「私をあなたのパーティーに入れて下さい」

「はいっ!?」

突然の申し出に驚く健太。


マリアは話を続ける。

「実は私、もう行く当てが無いのです。ですから、どうか私を仲間にして下さい」

「え?えええええええええっと……その……ちょっと待って下さいね」

健太は困惑していた。


何故ならば、先程までマリアとは他人同士だったのだ。

それがいきなり仲間になって欲しいと言われても、素直に首を縦に振る事は出来ない。


(この人は俺がさっき会ったばかりの人だぞどうして急に俺の仲間になりたいとか言い出したんだ?全く意味がわかんねぇよ)


マリアが健太に対して好意を抱いているなど知る由もない。

故に、マリアの言葉の意味を理解することが出来なかった。



しかし、マリアの方は既に答えを決めていたようだ。

健太が悩んでいる間に、マリアは自分から名乗った。


「改めまして、私はマリアと申します。職業は僧侶、レベルは23になります。それと、私はあなたに恋をしてしまいました。ですから、どうか私をあなたのお傍に置いて頂けませんか?」


健太は更に困惑していた。

マリアの言った言葉の中に、一つだけ聞き捨てならない単語があったからだ。


「えっ?ちょ、ちょっと待って。今、なんと言いました?」

「はい。私はあなたに恋をしました。それで、私をお嫁さんにして欲しいと思いました」

マリアは自分の想いを伝えた。


しかし、健太にはマリアの気持ちに応える事が出来なかった。

「そ、それは無理ですよ。俺はマリアさんの事をまだよく知りませんし、それにマリアさんは凄く美人だしスタイルも良いけど、出会って間もないんですよ。だからすぐに結婚するというのは……」

健太の歯切れの悪い回答を聞いたマリアの顔が一瞬だけ悲しげな表情に変わる。しかし、すぐに元の笑顔に戻って言う。



「ごめんなさい。そうですよね。少し考えが浅かったかもしれません。でも安心して下さい。これから少しずつ仲良くなっていきましょう」

「はい。そうですね」

健太はそう返事をすると、マリアは何かを思い出したかのように、再び口を開く。


「あっ、そうだ。一つだけ質問させて下さい」

「はい。何でしょうか?」

「健太様はどうして私を助けてくれたのでしょうか?」

「助ける?それはどういう事でしょうか?」

健太は意味が分からず尋ね返す。



「私がダンジョンで倒れている所を発見して下さったのは健太様なのでしょう?そして回復魔法をかけて私の命を救ってくれたのは健太様ではありませんか?」

「えっ!?いや……その……そう……だったかなぁ?」

健太は覚えていなかった。マリアを助けた記憶がない。


「ふふ。まぁ良いのです。私はただ健太様に恩返しがしたいのです。いえ、それだけじゃありません。もっと色々なことを健太様と一緒に経験していきたいと思っています」

「そうですか……。それなら一緒に冒険していきますか?」

「はい。是非よろしくお願いします」

こうして健太は新たな仲間、マリアを迎えた。






2023/3/12 書き足しました。1ページあたり大体5000字ぐらいになるようにしていければと考えています。

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