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いざギルドへ

4人というのは女神のことで、彼女達とは別の場所へと転生してしまった。


健太は最初こそ戸惑っていたが、持ち前のポジティブさですぐに前向きになった。

(まあいいか。1人で頑張ろう)

ちなみに、女神たちが何処に転生したのか、どうして健太だけ違う場所なのか、そういう事は一切わからない。


それでも彼は何とかなると思っていた。根拠はない。強いて言うなら自分の勘だ。

健太には前世で培ってきた経験がある。それは知識や経験、思い出など多岐に渡る。しかし、それらは全て過去のもの。今の彼にとっては無用の長物に等しい。

故に不安もあった。でも大丈夫だと自分を鼓舞していた。


しかし、実際に生活を始めてみると現実は厳しいもので、最初の2日間は食べるのに精一杯だった。

1日目、街の外に出るのは危険だと思い、街中で仕事を探そうとした。

2日目、街外れにある教会を訪ねてみることにした。

教会でお祈りをしてみると、運良くお布施という形でお金を受け取ることができた。


3日目、仕事を探しつつ、教会へ行ってみた。しかし、教会はお布施として受け取ってくれた分のお金を返金してきた。

仕方なく宿代の為に依頼をこなすことに。ギルドに登録した。




そして現在に至る。

この3日間のことを思い返して、健太は自分の力の無さを痛感していた。

今のままでは駄目だということを理解している。しかし、だからといってどうすればいいのかわからない。

焦りばかりが大きくなっていく毎日を送っていた。




そんなある日のこと。

いつものように仕事をこなし、帰り道でのこと。ふと視線を感じ振り向くと、見知った顔があった。

「アビー……」

「あー、ケンタくんだー」

「アビー!」

「きゃっ!?」

健太は勢いよくアビーに飛び付いた。


「もう離さないぞー」と強く抱きしめる。

アビーも最初は驚き固まっていたが、しばらくして「ちょっと……恥ずかしいよぉ」と言いながらも受け入れてくれた。


暫く抱き合ってから、健太たちは近くのカフェに移動した。

「アビー……良かったよー」

「ちょ、どうしたの?」

「いや……なんかね……急にアビーに会いたくなってね……」

アビーの顔を見た瞬間、心の底から安堵し、今まで張り詰めていた緊張の糸が切れたような感覚になり涙が出てきた。

そんな健太を見てアビーは「よしよし」と頭を撫でながら優しく微笑んでいた。

「ごめん……」

「ううん。大丈夫だよ」

「ありがとう」と言ってから飲み物を口にする。


すると少し気持ちが落ち着くことができた。

「そういえば、ここどこ?」

「んー、わからん」

健太とアビーは今いるカフェに来るまでに何度か迷っていた。

その度に人に尋ねてきた。


その結果――


「すみません。わかりません」という返事をもらってきたのだ。

「これって……ヤバい?」

「多分……」

「ど、どうしよう?」

「取り敢えず……帰ろうか?」

「……帰るってどこに?」

「……わかんない」



こうして彼らは街に着いて早々に詰んでしまったのであった。

「ねぇ?私、野営の準備とかしたことがないんだけど、何したらいいのかなぁ」

アビーは街に着くと、そう言って健太を見つめた。


彼女はまだ14歳という年齢であり、本来であればこのような事は出来ない筈なのだが、そこは異世界という事で色々と都合が良いのである。



しかし、健太は違う。彼は23歳の男性であって、普通ならば野営なんてしない年代である。

しかもこの世界で生きていく為には、ある程度の常識を身に付ける必要があるのだ。

(どうしよう……。そうだ!リリアンさんに相談すればなんとかしてくれるかもしれない)

彼はリリアンに助けてもらおうと考えたが、すぐに止めた。


それは何故なのか? それは彼女が魔女で怖いからではない。


確かに彼女に対して恐怖を抱いていた時期もあったが、今ではすっかり仲良くなった為、その心配はしていない。では何故か? 実はこの数日の間、彼は彼女と会う機会が無かったのだ。

理由は至極簡単。単純に忙しかったのだ。

(俺のせいで迷惑をかけるわけにはいかないもんな。自分でどうにかしないとな)

結局、自力で解決することにした健太だったが、彼は忘れていた。


そもそも街に着いた時に教会に行っていれば迷わず済んだ事を。

しかし、後悔先に立たずとはこの事だろう。過ぎてしまった事は仕方がないのだ。

(さてと……それじゃあ、どうしたものか)


健太はまず道具屋に向かった。そして必要な物を購入することにしたのだが、お金が無いので値切りまくくった。

そして何とか最低限の生活用品を手に入れる事ができた。


次はテントやら薪やらを調達するために冒険者ギルドへ向かった。



そして受付のお姉さんに声をかける。

「すいませーん」

「はい、なんでしょうか?」

「テントとキャンプ用具一式、それと食材なんかを買いたいんですけど、どうしたら良いですか?」

「それでしたら、あちらのカウンターでお手続きをお願いします」

「はい、ありがとうございます!」

元気よく答えて、そちらに向かう。そこには綺麗なお姉さんが座っていた。


健太は彼女の元へ行き、事情を説明した。


「えっと……テントとか、火起こしセットが欲しいんですけど……」

「かしこまりました。こちらが商品の一覧となります」

そう言うと一枚の紙を差し出してきた。健太はそれを受け取ると確認する。そして――

「うーん……」

健太は難しい顔をしていた。そこにお姉さんから説明が入る。


「何か気になる点でもございましたか?」

「えーと……予算オーバーだなって思って……」

「お客様、失礼ですが、その金額で全て賄えるとなれば、他のお店で購入された方が良いと思われますよ」

健太が渡した金は全部で金貨2枚。日本円にして20万円程度しかない。

ちなみに物価は日本の10分の1程度で、一般的な家庭は月給5~6万程らしい。


つまり今の金は端金に等しい訳だが、それでも高いと思える額なのだ。

「あの……もう少し安い店は無いかなぁ?」

「……残念ながら、そういった場所は聞いたことがありません」

「ですよね……」

健太は困ってしまった。この程度の買い物なら大丈夫かと思っていたのだが、そうではなかったようだ。


健太がどうしようと考えているとお姉さんから提案があった。


「宜しければ、うちの商会が扱っているお店をご紹介しましょうか?」

「あ、是非、お願いできますか?」

健太はその提案に飛びついた。何せ初めて来た街なので勝手がわからないのだ。案内してくれるという申し出は非常に助かるのだ。


「わかりました。では早速参りましょう」

そう言って、立ち上がった彼女はニコッとした笑顔を見せてくれた。

「よろしくお願いします」と挨拶をして、その女性について行く事にした。

その道中、お互いに自己紹介する事になった。



「申し遅れました。私はマリア=マルグリッドと申します」

そう名乗った女性の容姿は、一言で言うならば女神であった。


金髪碧眼の女性であり、年齢は恐らく20代前半だろう。スタイルも良く身長も高いため見栄えが良く、モデルのようにスラッとしている。そして何より美人であった。


そんな女性がニッコリと微笑みながら自己紹介をしてくるものだから、ドキッとしてしまった。

「ぼ、僕はケンタと言います」

「ケンタ様ですね?それでは、これから私どもの店に御内致しますので、どうぞ付いてきてくださいませ」

「はい、お願いします」

そういって彼女に続いて歩き始めた。


そして着いた先は、冒険者ギルドの隣にある大きな建物だった。

入口の前に看板が立てかけてある。


『マリアの道具屋』


中に入ると、様々な品物が置いてあった。

日用品から雑貨まで幅広く取り扱っているようだ。

彼女は店内を見て回っている健太に向かって声をかけてきた。


「ケンタ様、本日の御用向きは如何なるものでしょうか?」

そう尋ねられた健太は頭を掻きながら答える。


「えっと……テントやキャンプ用具一式、あとは食材なんかを見に来たんだけど……どれが良いのか全然わかんなくて……」

「成る程、そういう事でしたら、まずはテント売り場へご案内します。その後で必要であれば、他の物も同様にお見せしましょう。さ、こちらにどうぞ」

「あ、ありがとうございます!」

健太が元気に返事をするのを聞いて、マリアはニコッとしながら歩いて行った。


それを見た健太はまたもドキドキしているのだが、彼は気が付かないフリをしているのである。





テントを購入した健太は次はキャンプ用品コーナーに来ていた。



「これは凄いな!こんな便利なものがあったなんて知らなかったよ」

そこには色々なキャンプ用品が置かれており、どれも地球にあった道具ばかりだ。

その為、健太は興味津々なのである。


しかし、彼が一番気になっているものは別のものだった。それは―――

「この鉄棒みたいな道具は何なんだ?」

そう呟いて、それを眺める。


それは、一見、木で出来た逆立ちの練習道具に見えるが、実は違うのだ。その証拠に手を置く場所に小さな魔石が設置されていた。

(これが火を熾すためのアイテムかな?)

そう思いながら手に取ってみると――



(おぉっ!火が付いた)

健太は感心する。火が勝手に灯ったのだ。

(でも、これでどうやって火を焚くんだろうか……)

疑問には思ったが、とりあえず次の物を見ることにした。


次に目に止まったのが薪。そして竈と網と鉄板だった。

(ふむ……これはどうすれば良いんだろう?料理しろっていう事なんだろうけど……)

悩んでいるとマリアから説明が入った。


「薪はこちらで販売しております。竈については後ほど、説明させて頂きますね」

そう言ってニッコリと笑う彼女に思わずドキッとする。その笑顔に見惚れてしまった健太は「はい」としか言えなかった。


「それでは次へ行きましょうか?」

そう言われて歩き出したのだが、その道中、彼女は様々な事を話してくれた。

この店のこと。他の商品のこと。


そして――




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