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たけちぃ大国どこにもない国

作者: 武田久美子

思い付きで書いてます。。

たけちぃは引きこもりの二十四歳。母親と暮らしていたがなんかつまらない。たまに仕事に出るが何をしても続かない。


 「たけちぃは今何してる?」

 祖父ちゃんの寛太はある日、母親の民子に電話してきた。

 「パソコンと睨めっこ。何でも仮想社会のゲームみたいなやつにハマってる。」

 「そうか、そりゃあ、よかった。」

 「よくないわ。」

 「ずいぶん昔なんだが、俺が島買ったの覚えているか?」

 「あっ、あれ。まだあるの?」

 「税金が来た。」

 「何それ、払えないわよ。」

 「そうじゃなくて、あいつをそこに住ませられないかと思ってさ。近所の俺の友達とあそこに住もうと思ってんだけど、あいつも連れて行こうと思ってさ。」

 「それはありがたいわ。でも行くかしら。」


 随分と昔、何故か買ってしまった島。リゾート用にある程度は整備されている(当時は)立地条件は悪いがその頃は需要も見込まれていて二束三文でも投資になりそうだと買った。結局のところ使わずに税金だけが今になってきた。そこで寛太が考えた。気心の知れた友人たちを連れて行こうと最初無理かなっとあきらめかけたら漁師をやめるために漁船をどうしょうかと友人に持ち掛けられ腹を決めた。話を聞いて彼も漁師はできないが遊びならまだやれる。辞めてどうするか決めかねていた渡りに船だと。


 小さな漁船にたけちぃをふくめて十二人、ある日、意気揚々と出かけて行った。ジジババの夫婦は三組、女三人、あと爺さんとたけちぃ。男は九人となる。

 たけちぃはすぐに飽きたが寛太達は泣き叫ぶたけちぃを尻目に楽しく過ごしていた。


 暫くすると、この島にうわさを聞き付けた老人たちが集まってきた。

 三年後、百人を超え老人の島になった。


 たけちぃはこの島の大統領に就任する。


 この島で長寿の老人が亡くなった。

 みんなで墓を作り弔いをした。

 でも誰もこの島から出ていかなかった。


 「この島の暮らしは慣れたか?」寛太はたけちぃに聞いた。

 「慣れるわけないだろ。」

 ぶっちょうずらのたけちぃ。

 寛太は少し、反省というかあの時はとにかくこいつを外に出して楽しんでくれることを思っていたが…なぜかうまくはやってくれているし、みんな優しくしてくれる。

 でも、老人たちからは心配されていて一番の問題は女。

 今のところ、何もないらしい。婆さんとでもと言っても婆さんが単独で来ることはほとんどなくてたまにきたとしてもそうだつせんだったり、本人が興味がないこともある。それでも、ここは今のところ平和だ。

 多少のいざこざはどこにいてもある。

 食糧の取り合いやいびき。風呂も共用。なかなか難しい。

 それでも、都会にいるより楽しいらしい。

 多分、もう、長くはない人生。余生を楽しんでいるのだろう。

 台風も来るし、大変なことは沢山ある。何より、みんな仲が良い。表面だけかもしれないが。

 というか、みんな文句は言う。会社という仕事はないが生きるために植物を育てたり、漁をして生計を立てている。時間が来れば人は死ぬ。

 でも人は何となく増えていた。


 ある日、事件は起きた。

 新入者の中に子供を連れた六十歳の佳代子という老人が来た。六十歳以上は来る者は拒まず。

 それがこの島のルール。友香は五歳。

 ここでは大問題だ。今の老人は概ね元気だ。動いたり、先人の知恵を持っていたり、島で暮らす知恵を共有している。

 その中に五歳児。彼女も戸惑っていた。

 娘がおいていった子供だそうだ。


 たけちぃは恋をしていた。

 いつも世話をしてくれている綾さん。七十歳の綾さんはたけちぃを孫のように思っていた。

 ご主人が早くに亡くなって一人暮らしが長くなったのだという。話し相手が欲しくてこの島にやって来た。たけちぃは初恋と言ってもいいのかもしれない。

 いないと探すようになっていた。

 「おなかすいた。」たけちぃはそれしか言わない。

 そんなたけちぃが可愛い。

 二人は恋仲になった。


 綾婆さんの内助の功なのかたけちぃはだんだん変わっていった。

 大統領として多くの問題を寛太と共有していく。

 何か問題が起きれば駆けつけて話を聞いた。

 ご近所問題が一番大変だった。

 あと、病院。老人だらけ。特に綾の体調には気を配っていた。

 医者はいたが薬はなく器具もない。

 診断はできるがそれ以上のことは出来ない。

 たけちぃは日本国と交渉することにした。

 何かあればヘリで運んでもらうことにした。

 

 十年後。

 友香は町のアイドルになっていく。ジジババの時代の聖子ちゃん。明菜ちゃんなどの歌を教えた。

 老人バンド。(フロント友香)はたちまち大人気になった。

 島のオアシス。

 

 たけちぃは四十歳を前にして本当の大統領として働いていた。

 ファーストレディーはもちろん綾婆さん。今はたけちぃの給事も覚束ないが二人は愛し合っていたし、若い女(六十代前半)を勧められても受け付けなかった。

 綾婆さんは寛太に相談していた。

 たけちぃの遺伝子を残したいと。できるだけ早く死んで、たけちぃが気兼ねなく再婚というか友香がもしよければ・・・・日本国から結婚相手を探す。たけちぃは綾がいればそういうことはしないことを悩んでいた。それと友香は二十歳になれば日本国に返すことが決まっていた。

 母親か父親に返すのではなく、佳代子の子供としてこの島から巣立つ。

 

 寛太の憂鬱

 たけちぃのことはいろいろ思う。これから、亡くなる人が増える。今は来る人がひと頃より減っている。

 人はなかなか死なないものだ。ここに来る前は一年もいればどっか悪くなるか、事故で死んでもいいか。

 そんな気持ちだった。今は創業者としてここの住人を守らなければならない。

 たけちぃはよくやっている。ちょくちょく盗みはあるが暴力を伴う喧嘩はない。

 喧嘩しても何も変わらないことを解っている大人がここにはたくさんいるってこと。

 財産だけれども、いつそのバランスが崩れるか何よりも心配だった。八十歳を超えた今そしてたけちぃの母親民子もここに来たいと言っている。民子は再婚して旦那とここに来ると言っている。

 最初は反対していたたけちぃも綾に合わせたいと今は言っていて・・・もう、綾の死期が近いことを感じている。日本に綾を移して民子に託そうと考えていたが・・・なんせ大統領が国政を放棄して妻の面倒を看ることは許されないと思っていた。


 綾はたけちぃに言った。

 「私の亡骸は前の夫の墓に入れてください。」


 若いころの綾

 高度成長期に生まれた綾。中学を卒業すると集団就職。事務で働いていた。その頃は男女の格差があっておまけに年功序列。彼は大学卒業後、営業として就職。綾が二十歳の時に出会いました。

 営業の成績は最悪。大卒だから初任給高くて会社じゃ厄介者。でも綾の笑顔が大好きです。

 高卒の同級生が中途入社してその人の方が成績が良くても給料は高くて・・・

…彼はいじめられてでも、綾が好きで。高卒の方からプロポーズされた綾。

 飲みに行っても高卒ルーキーが綾の隣。

 周りも二人は結婚するんだと・・・・

 綾は気の弱い大卒を選んだ。給料が高いとかじゃなくて彼が誰よりも勉強して商品を販売していたことを知っていたから。ふつうは伝えないデメリットを彼は説明していた。

 事実高卒の彼は売れるけどクレームが多く、二人が結婚した後、退職。表向きは綾にフラれたから。

 実際は仕事でのトラブル。

 子供はできなかった。彼は幼い頃、病気で高熱を出して入院したことがあって。体は弱かった。

 だから、勉強して大学まで行った。

 奨学金もらって。

 でも、ガンで五十歳で亡くなった。

 彼は「生きていることが不思議なんだから。」よくそう言っていたという。

 子供ができないのは自分のせいだと思っていたけど、妊活なんてなかったし。

 でも彼が好きだった。

 いつもご飯粒を残して綾が指ですくって食べるの見るのが好きだって言ってた。

 へその穴のにおいかぐのが趣味なのよ。綾のね。

 遊園地に行きたくてジェットコースターに乗りたくてさ。

 ずっと行かなかったけど、仕事で綾に色目使う男がいてさ。社内旅行でそいつが一緒に行くって知ったらついてきて、ジェットコースター一緒に乗ってはいた。

 とてもかわいい人。


 たけちぃは泣いていた。

 綾は亡くなった。

 お骨を離せなかったけど、綾の希望通り元旦那の親戚に預けた。

 思いでしか残らなかったけど、たけちぃは大統領にゆっくり戻った。

 母は結局来なかった。


 友香は日本に帰る。

 その代わりに赤ちゃんポストに預けられた子供たちを迎えることになった。


こんな島があればいいかな。

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