T-最終話 夜明け
父さんの死は国中の大ニュースとなった。
国民のほとんどが哀しみ、誰もが涙した。
僕の父さんは本当にすごい人だったんだなって今でも思うよ。
結衣「極夜、かっこいいよ!!」
アレイスター「オルル、こっち向いてください!!」
ルドベキア「ゲッケイジュ、お前がナンバーワンだ!!」
カシャカシャカシャ
今日は僕たちの卒業の日だ。
カメラのシャッター音が鳴り響く。
ゼルディアとの戦いが終わり、それから数年の時が流れた。
僕は18歳になり、いよいよ大人としての自覚を持ち始める。
父さん、あれからいろいろなことがあったよ。
僕は卒業式が終わったら仕事でいっぱいになる。
亡くなった父さんに代わって僕がこの国の国王となり、平和のために尽力するよ。
父さんの守ったこの世界を絶対に汚したりはしない。
ゼロさんは僕の秘書として再就任することになった。
ゼロ「お仕事のサポートはお任せください!こう見えても私、敏腕秘書なので。」
本当かな?
でも、父さんの時代でも秘書をしていたらしいし安心だ。
セイギさんとハジメさんはそれぞれ天界と地獄へ帰っていった。
天使と悪魔、それぞれを統治するためにね。
数か月に一度は地上へ帰ってきてお話をよく聞いてるんだ。
ハジメ「なんか困ったことがあればいつでも連絡しろよ。」
セイギ「極夜君の頼みならいつだって参上しよう!!」
本当に頼りになる二人だよ。
アマノガワさんは天文台を開放して得た利益で探検隊を結成。
たまにしか帰ってこないけど未知を求めて探検してるそうだ。
今は・・・・・・宇宙のそのさらに向こう側にいるのかな。
アマノガワ「見て見て極夜くん、これお土産のでっかいダンゴムシ!!」
お土産と称してヘンなものをくれるのはちょっと嫌かも。
アマハラはあの戦いの後、正式に学園に転入した。
一個下だから一緒に卒業はできなかったけど、それでもいい友達だよ。
アレイスターさんはまだまだ現役でこの学園の理事長を務めるって。
アレイスター「未来ある若者を育てるのも、我々年長者の役目ですから。」
普段はかっこいいのにオルルの前だとデレデレしてるから変な気分だ。
師匠、ミルドさんは剣の修行の旅へ出かけた。
今何をしているのかもわからないけど最後に、
ミルド「私はしばらく会えなくなると思うが、何があっても私はお前を見守っている。お前はお前のすきにするといい、あまり気を負いすぎるなよ。」
って激励してくれたよ。
ルドベキアは魔力を持たない人たちのための慈善活動にいそしんでる。
デスペラードは森の中に一軒家を買ってお母さんと一緒にひっそり暮らしてる。
数年しかたっていないのに僕たちの生活はずいぶん変わった気がするよ。
極夜「僕達もこれで卒業か~。」
月桂樹「なんだかんだ短く感じたな~。」
オルル「ゼルディアとの戦いが昨日のことみたいに思えてくるね。」
極夜「二人は卒業したらどうするの?」
月桂樹「僕はルドの慈善活動に協力するよ。あ、今度は過激にじゃなくてあくまで平和的にね。」
オルル「私はパパと一緒、教員免許を取って教師になるわ。」
月桂樹「え、オルルが教師ぃ?」
極夜「ちゃんとできるの?」
オルル「あんたたち二人とも今ここで未来を断ってあげてもいいんだけど?」
三人は冗談を交えつつ、笑いあう。
いつまでも変わらない友情の形がそこにある。
月桂樹「あ、もうこんな時間か。ごめんね、今日はもう帰るね。」
オルル「そうなの?じゃあまたね。」
極夜「また明日。」
月桂樹「うん、卒業しても結局遊びに行くから変わらないね。」
去り際にゲッケイジュは極夜に耳打ちする。
月桂樹「がんばってね。」
極夜「うん、ありがとう。」
ゲッケイジュが去るのを見送り、極夜はオルルへ向き合う。
極夜「・・・オルル。」
オルル「ん?どうしたの。」
極夜はオルルに向き合い、顔を真っ赤にしている。
手はガチガチに緊張しており、しばらく沈黙が続いた。
そしてついに勇気を振り絞り。
極夜「オルル、僕は・・・・・・・・・・・・。」
オルル「・・・・・・僕は?」
極夜「僕は・・・・・・君が好きだ。三年間ずっと、君のしぐさが、想いが、ずっと気になってて・・・・・・これが恋だって自覚した。だから・・・・・・、この思いを伝えさせてください!!」
その言葉で何かを察したように、オルルの眼から涙があふれる。
オルル「私・・・・・・、世界を滅ぼす竜なんだよ。私といても・・・・・・きっと極夜は幸せになれない。私は幸せになっちゃいけないんだってずっと思ってた・・・・・・。」
極夜「それでも僕はオルルが好きだ。種族なんて関係ない、力なんて関係ない、純粋にオルルのことが好きなんだ。だから・・・・・・。」
極夜は深呼吸をして、それから腕を思いっきり前に突き出した。
極夜「僕と・・・・・・結婚してください!!!!」
突拍子もないプロポーズに、オルルは極夜に抱き着いた。
涙があふれて止まらない。
終焉の力を持っていても誰にだって幸せになる権利はあるのだ。
オルル「段階飛ばしすぎだよ・・・・・・バカ。」
極夜「え!?父さんはこうしたって言ってたから・・・・・・ごめん嫌だった?」
オルル「嫌じゃない・・・・・・私も、ずっと極夜のこと好きでした。」
極夜の眼からも涙があふれ始め、二人は抱き合いながら号泣した。
オルル「私、いま世界で一番幸せだよ。」
極夜「僕も・・・・・・ぐすっ、世界で一番幸せだ!」
終焉竜と神の子に花が咲いた。
この花はずっと枯れることは無いだろう。
これからどんな困難に相対しても世界は廻り続ける。
それが業であり、因果であり、運命である。
こうして世界に、命がつながれていくのだ。
二人の少年少女の間にやがて子が生まれ、その子もまたこんな風に幸せになっていくのだろう。
明けない夜はない。
あるのなら嚙み砕いて喰ってしまえ。
世界は何度だって夜明けを迎えるのだから。
世界のためなら何度でも ~完結~
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。
本編はこれにて完結です。
そして、この後19時30分くらいからおまけのコーナーを投稿します。




