表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界のためなら何度でも  作者: 社長
物語の終わり
449/455

【夜明けを迎えた者】神成極夜との最後の時間

部屋を訪ねてきたのは極夜だった。


極夜「・・・父さん。」


極夜はわかっていた。


これが最後の時間だと、いやな予感がして飛び起きたのだ。


聖夜「こっちにおいで、少し話そう。」


極夜は招かれるままにソファに座る。


聖夜は極夜の体が冷えないように暖かいココアを作り、テーブルに置いた。


極夜「ぼ、僕もコーヒー飲めるよ!」


聖夜「無理しなくてもいいのに。」


極夜はココアを少し口に含む。


しばらく二人は無言のまま飲み物を飲んだ。


少しして聖夜が口を開く。


聖夜「学校はどうだ、楽しいか?」


極夜「え?・・・・・・うん、楽しいよ!!オルルとかゲッケイジュとか、友達のみんなと遊びながら学んで・・・・・・最高だよ!!」


聖夜「そうか、話を聞くだけで楽しんでるのがわかるよ。」


聖夜はしばらく極夜の話に付き合った。


学校であったこと、アマハラと出会い聖夜のことを調べながらも時折悪いやからと戦って、様々な困難を乗り越えたことを。


楽しそうに語る極夜を聖夜は楽し気に聞いていた。


極夜「そうだ、せっかくだから父さんの話も聞かせてよ。父さんのこともっと知りたいからさ。」


聖夜「俺の話か?結構長くなるけど・・・、まぁいいか。」


聖夜は語った。


極夜と同じ年の少年が、神に成るお話を。


辛い目にあいながらも助けられ、助け、絆を紡いでいくお話を。


聖夜「最初はな、母さんのこと敵だと思たんだよ。」


極夜「母さんが敵?確かに怒った母さんは怖いけど・・・。」


聖夜「そんでゼロとミルドと出会ってハジメの家を攻撃しに行ったんだよ!」


極夜「父さん悪者じゃん!!」


聖夜「でかいドラゴンと戦ったりして国を作って、まぁその国はセイギたちに壊されるんだけどな。」


聖夜の人生を聞く極夜は楽しそうに聞いている。


聖夜「ベルゼブブとはその後に出会ってな、あのころから俺の剣に住み着いてたんだ。懐かしいな~」


時折自身の思い出を懐かしみ、


聖夜「偽物の俺が現れて、それを作ったのがアマノガワだった。その偽物は最後まで俺のことを助けてくれたよ。」


過去の恩人に感謝しながら、


聖夜「アレイスターも最後は助けようと頑張ってくれたけど、俺はそこで仲間と離れ離れになった。過去に行っちまったんだ。」




ここで聖夜の物語の第一部が終了した。


極夜は終始ワクワクしながら、まるで絵本を見ているように笑い、哀しみ、怒りながらも楽しそうに聞いている。


極夜「続きは?早く続き教えてよ!!」


聖夜「待て待て、今話すからな。・・・・・・俺が過去へ行った時の話を再開しようか。」


聖夜の諦めなかった旅路の続きを話し出す。


聖夜「過去へ行った俺はアレイスター、そして300年前から生きていたアマノガワと一緒に現世へ戻る手段を捜し始めた。」


「偽神ってやつらと戦って自分の弱さを痛感した、世の中にはまだ強い奴がいるんだって実感がわいたよ。」


「そんで王天使たちに絡まれて、めちゃくちゃ大変だったな。」


「過去の世界でもベルゼブブは俺のことを覚えていて、自分の立場を全部捨てて俺の味方になってくれた。」


「神王の奇石っていう願いの叶う石を追って色んな奴らに出会った。ディアス、ネイさん、ニヒト・・・・・・。最後の奴以外は面白い人だったよ。ニヒトは次転生したらもう一回殺す。」


極夜「何されたんだよ父さん・・・。」


聖夜「今思えば神王の奇石も神王の部下を名乗ってたやつらも、ゼルディアの手の上だったのかな。」


先ほどまで出ていた月はもうかなり沈んでいた。


それほどまでに時間が経ったのだろう。


聖夜「そんで最後に俺達が戦ったのが終焉竜オルクジャナス。アイツはマジでやばかった・・・、最終的に俺自身を封印の依り代にしてなんとか封印できたが、おかげでこっちに戻ってくるまでかなり時間ができちまった。」


ここで神成聖夜の物語、第二部は終わった。


極夜「父さんって・・・・・・、なんかすごいね。」


聖夜「まぁでも嫌じゃなかったよ。俺の傍にはいつだって仲間がいたからな。」


聖夜は自身の指にはめた8個の指輪を見つめる。


7人の仲間たちの紋章が刻まれた指輪と結婚指輪だ。


かつて聖夜が仲間に渡した思い出の品とおそろいであり、自身の生命力を消費し蘇生させる秘術が仕込まれたものだ。


今は効力を失い、ただのアクセサリーになっているがそれでも大切なものだ。


聖夜「そうだ極夜、お前にも用意してたんだ。」


そういって聖夜は箱の中から指輪を取り出す。


太陽が地平線から出てくるような刻印がされている。


極夜「・・・・・・いいの?」


聖夜「あぁ、お前には父親らしいことを残せてなかったからさ。せめて贈り物として残したかったんだ。」


極夜はさっそく指輪を左手の人差し指につけてみる。


左手の人差し指に指輪をはめることには『背中を押してくれる』という意味があるらしい。


極夜「ありがとう父さん、大切にするよ。」



パキリ



魂の割れる音がする。


聖夜「・・・・・・外、日が出てるな。」


極夜「うん・・・・・・、夜明けだね。」


パキリ


極夜「・・・・・・起きた時に気づいてたんだ。父さんに時間がないこと、だからこそ目が覚めたのかもしれないね。」


聖夜「息子には見られたくなかったんだけどなぁ。」


パキリ


極夜「目を背けちゃダメなんだ、じゃないと・・・乗り越えられない。」


聖夜「強い子だ、母さんの育て方が良かったのかもな。」


パキリ


極夜「・・・・・・手、握っていい?」


聖夜「あぁ・・・・・・いいぞ。」


パキリ


極夜「父さんの手、あったかいなぁ。」


パキリ


聖夜「・・・・・・、お前が成長する姿を見たかった、お前と色んな床にいきたかったよ・・・。」


パキリ


極夜「死後の世界があるなら・・・・・・そこで見守っててほしいな。」


パキリ


聖夜「必ず見守ってるよ。」


パキリ


パキリ


パキリ


割れる音の感覚はどんどんと短くなっていく。


聖夜はそっと、極夜の頭をなでた。


成長途中の息子の身長を感じる。


聖夜「・・・・・・母さんや仲間に伝えてくれ、神成聖夜はいつでもお前たちを見守ってるって。」


極夜「・・・・・・・・・うん。」


極夜の涙を聖夜がかるく拭い、抱きしめた。


二人の体温が一つになり、じんわりと浮遊感がする。


極夜「ありがとう父さん、僕父さんに負けないくらい強くなるから!!絶対・・・・・・絶対絶対強くなってこの世界を守るから!!」


聖夜「元気でな極夜!俺の、・・・・・・最愛の息子だ!!愛してるぜ!!」


聖夜の涙と極夜の涙、二つのしずくが地面に落ちた時、




パキン




聖夜の魂は砕け、肉体は光となり部屋を漂った後、天へと還っていった。


天へ昇る光を、城の外で仲間たちは見守っていた。


皆が涙を流し、その場敬礼した。


自身の王の最後に、敬意を表したのだ。


その光を見送った仲間たちと結衣は極夜のいる部屋へ入る。


極夜は涙を拭き、前を向いていた。


極夜「みんな、僕がこの世界を守るよ。」


息子の覚悟に結衣は再び涙を流した。


仲間たちは膝をつき、極夜に頭を下げた。


似ていたのだ。


そのまっすぐな眼が、聖夜に似ていたから。


極夜「世界のためなら何度でも、僕が守って見せるから!!」


王は亡くなり、そして新たな王が生まれた。


それを祝福するかのように夜明けの日差しが極夜を包み込んだ。


次回、最終話

2月25日19時投稿

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ