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世界のためなら何度でも  作者: 社長
物語の終わり
445/455

【楽園の守護者】アレイスターとの時間

アレイスター「・・・・・・。」


聖夜「・・・・・・。」


二人は真剣な表情で紅茶を飲んでいる。


庭では極夜、オルル、月桂樹が楽しそうに遊んでいる。


机の上には何かの写真がずらりと並んでいた。


アレイスター「これでトドメです!!娘カード≪最高の寝顔≫召喚!!」


聖夜「お、お前!!悩んでたと見せかけてとっておきの切り札を隠していたのか!!」


アレイスター「まだまだ!!思い出カード≪初めての遊園地≫と≪初めてのパフェ≫、そして≪初めてパパと呼んでくれた日≫を同時発動です!!」


聖夜「初めて関連カードを三枚だと!?くそっ、まぶしすぎる笑顔!!俺には反撃できねぇ!!」


アレイスター「どうです、私の最高の娘デッキの力は!!聖夜くんの心にダイレクトアタックです!!」


聖夜「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!俺は最近復活したばっかだから思い出がすくねぇ!!」


娯楽に心血を注いだ大人とは、知能が極端に下がるものである。


二人は子を持つ身として、自身の子供の一番かわいい瞬間を写真に収めてカードにし、相手の尊いゲージをMAXにしたら勝ちというくだらない娯楽を楽しんでいた。


アレイスターのテーブルには山のように積まれたオルルの写真がそれを物語っている。


アレイスター「さぁ負けを認めますか?オルルの方が可愛いと。」


聖夜「まだだ・・・、俺のターンはまだ終了していないぜ!!」


基本的にルールはアバウトなので勝ち負けなどない。


ただ単に自分の子供を見せびらかしたいだけである。


聖夜「カウンターカード≪嫁の手作り弁当≫を発動だ!!」


アレイスター「よ、嫁カード!?それはルール違反ですよ!!」


聖夜「うるせぇ!!可愛ければ何でもいいんだよ!!」


アレイスター「ならば、思い出カード≪妻との最後の写真≫!!」


聖夜「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!メンタルに来る!!こっちだって息子カード≪ボロボロになってもあきらめない英雄≫召喚!!」


アレイスター「うわぁぁぁぁぁぁ!!世界を救ってくれてありがとうぅぅぅぅぅぅ!!」


二人は精神的に限界が来ていた。


アレイスターは一枚のカードをデッキ(写真ファイル)から取り出す。


アレイスター「これでトドメです!!最強娘カード≪大きくなったらパパと結婚すると言ってくれたあの日≫を発ど・・・・・・・。」


オルル「なにやってんのパパ!!」


パコ――――ンと、紅茶を運ぶお盆で頭をたたかれた。


オルル「私の写真こんなに並べて恥ずかしいんだけど!!信じらんない!!」


アレイスター「あぁ・・・・・・、娘に叱られるなんて・・・。これもまた・・・、思い出の一つ・・・。」


アレイスターは衝撃に耐えられず、その場に倒れる。


聖夜「へっ、どうやら勝負は俺の勝・・・。」


極夜「父さん、さすがに自分の奥さんと子供をカードにして自慢するのはどうかと思うよ・・・。」


聖夜もショックでその場に倒れた。


アレイスター「・・・・・・・・・私の勝ちってことにしませんか?」


聖夜「そこは引き分けて言えよ・・・。」


二人は立ち上がり、写真をファイルにしまいなおす。


アレイスター「思い出を写真に残すというのは実に素晴らしいものです。たとえその人物がいなくなったとしても、写真を見るたびに思い出せるので。」


そういって、アレイスターは自分と聖夜、天之川の写った写真を見つめる。


アレイスター「でも、この写真がなくなってしまえば。思い出は消えてしまうのでしょうか。」


アレイスターが小さな声で独り言をつぶやく。


聖夜「そんなわけないだろ?」


聖夜はアレイスターを引き寄せ、写真を撮った。


二人の何気ない一日が写真となってカメラから出てくる。


聖夜「写真ってのはあくまで触媒だ。たとえ写真に残ってなくても、写真がなくなってしまっても、思い出の中にいるんだからな。」


聖夜の笑顔、アレイスターも笑い返す。


アレイスター「えぇ・・・・・・、そうですね。」


アレイスターは今見た笑顔を、何気ない日々を、ずっと覚えている。


思い出が消えない限り、その人は世界から消えてなくならない。


それを、聖夜は教えてくれた。


アレイスターは自分の妻の写真を見返す。


たった一枚の最後の写真。


アレイスター「愛夜、貴方のことはずっと覚えています。いつまでも・・・。」


その写真をそっとファイルに仕舞い、紅茶を飲む。


アレイスター「さて、ひと段落しましたしもう一戦しましょうか。」


聖夜「望むところだ!俺のデッキには結衣が撮った極夜の秘蔵の写真がまだまだあるぜ!!」


何気ない風が二人を包み込んだ。


この暖かさも、この紅茶の味も、一緒に呑んだ人も、ずっと覚えていよう。

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