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世界のためなら何度でも  作者: 社長
物語の終わり
443/455

【暴食の悪魔】ベルゼブブとの時間

ベルゼブブ「よぉ聖夜!!飯行くぞ!!!!」


聖夜「二日連続で飯かよ・・・・・・。」


聖夜はベルゼブブに引きずられ、町を歩いていた。


ベルゼブブ「俺様はこの日を楽しみにしていた!!聖夜と一緒に美味い飯を食うために!!俺様は絶食していたのだ!!」


聖夜「そこまでやったのか。ちなみに期間は?」


ベルゼブブ「3時間!!!!」


聖夜「短っ!!」


ベルゼブブ「それだけではない、飯のうまさを倍増させるために最近まで魔界の飯を食ってたんだ。まずすぎて一日15食程度に減ってしまったくらいだ。」


聖夜「そんなにまずいのか魔界の飯?」


ベルゼブブ「たとえるなら砂っぽいリンゴのような感覚だ。」


聖夜「死神じゃねぇか。」




二人は大衆居酒屋に入る。


身バレ防止の魔術を使っているので騒ぎにはならない。


二人のテーブルには樽に入った酒、そして魔導冷却箱と同じくらいのサイズの肉が積み上げられた。


聖夜「しっかし普通の飯屋でいいのか?もっと高級なとこでもよかったんだぞ。」


ベルゼブブ「俺様を侮るな、どんな飯を食うかも大事だが・・・誰と食べるかが大事だと俺様は思っている。聖夜と食べる飯なら何でも美味いに決まっているからな!!」


聖夜「ベルゼブブ・・・・・・、いいこと言いやがって。」


聖夜とベルゼブブは肩を組み乾杯する。


肉は程よいしお加減で、豪快に火が通してある。


故郷では絶対に食べられないような大きな魔獣の肉を使っているので魔力も豊富に含まれている。


ベルゼブブ「それに、これはまだ前菜だからな。」


聖夜「・・・・・・前菜?」


ベルゼブブ「食い終わったら次はスープとして酒屋をまるまる吞み潰す!!魚介は漁師の市場で全て独占!!口直しにまた居酒屋に行ってメインディッシュはこの国で一番高いレストランのメニュー全制覇だ!!」


聖夜「さっきのいい言葉台無しだよ・・・。」


聖夜はおなかがいっぱいになりながらもベルゼブブについていった。




ベルゼブブ「ふーくったくった。腹八分目ってとこだな。」


聖夜「し、死ぬ・・・・・・。」


聖夜はタプタプになったお腹をさすりながら息切れしている。


聖夜「というかメインのレストラン、あれは無茶ぶりしすぎだ・・・。メニュー全制覇ってファミレスじゃねぇんだから・・。」


ベルゼブブ「シェフも泣いて喜んでたな!!」


聖夜「『在庫がない、明日からどうしよう…』って泣いてたんだよ。」


ベルゼブブは爪楊枝で歯に挟まった異物を掃除しながら大笑いする。


聖夜「まぁでも美味かったな。全部お前が調べたのか?」


ベルゼブブ「当たり前よぉ!!お前と行くのが楽しみで数日前からずっと調べてたんだ!!」


ベルゼブブは上機嫌で椅子に座る。


聖夜も少し余裕ができたのか椅子に腰かけた。


ベルゼブブ「じゃあ、そろそろデザートにするか。」


そういってベルゼブブは立ち上がり、屋台で何かを買って帰ってくる。


聖夜「おいおい、もう入らない・・・って。」


ベルゼブブが持ってきたのは初めてベルゼブブと出会ったときに食べた肉の串焼きだ。


表面にタレが塗ってあり、まるで宝石のように輝いている。


ベルゼブブ「コレだけはお前と一緒に、最後に食いたかった。」


聖夜「・・・、ちょうど腹がすいてきたよ。」


二人は同時に肉を頬張る。


世界一美味い!!とはいかないがそれなりに美味い肉。


かけがえのない相棒と、一緒に食べる思い出の味。


二人にとってそれは世界一おいしい食べ物だった。


ベルゼブブ「俺の願い、叶っちまったよ。」


ゼルディアとの戦いで叶えられないと思っていた夢が掌にある。


この小さな肉の塊こそが、ベルゼブブが追い求めていたものだった。


聖夜「美味いな、ベルゼブブ。」


ベルゼブブ「あぁ。」


聖夜「泣いちまうほどに美味いな。」


ベルゼブブ「・・・・・・あぁ。」


夢をかなえた感動でベルゼブブの瞳にしずくが零れ落ちる。


ベルゼブブ「俺様は、この日のために生まれてきたのかもしれないな。」


聖夜「そういってくれる相棒がいて、俺は幸せだな。」


大げさだなんて言わない。


ベルゼブブの命は今日この日のために、相棒ともう一度食事をするためにあったのかもしれない。


ベルゼブブ「満足だ、俺様の腹は満たされた。ありがとな聖夜。」


ずっと苛まれていた空腹からベルゼブブは解き放たれた。


魂が歓喜に満ち溢れている。


聖夜「お供え物は旨い飯にしてくれよ。」


ベルゼブブ「はっ、どびっきりうめぇのを毎日供えてやる。お前が死んでも空腹にならないようにな。」


聖夜のジョークにベルゼブブは笑う。


二人の帰り道は、あの串焼きのように輝いていた。

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