【魔王】ハジメと【天使王】セイギとの時間
セイギ「さぁ、今日は俺達とだ!!」
聖夜「そういって呼び出されたけど・・・、どこいくんだ?」
セイギ、ハジメ、聖夜の三人は城近くの開けたところに集まった。
周辺には何もなく、三人の話し声だけが響いている。
ハジメ「アレイスターに力を借りてな、ゲートを開けてもらったんだ。」
聖夜「ゲート?異世界に通じるっていうあのスキルか。って言ってもどこに行くんだ?」
セイギ「まだわからないのか!!俺達三人が集まったということは!!つまり!!」
ハジメ「元の世界にちょっとだけ帰ってみようぜ、ってことだ。」
聖夜「元の世界!?」
聖夜達三人はもともとこの世界の住人ではない。
何かしらのきっかけで異世界転移し、この世界にやって来たのだ。
聖夜「帰省ってやつか、いいね。行こうぜ!!」
聖夜達はゲートに足を踏み込む。
その先は、コンクリートで舗装された道路が広がっていた。
等間隔に並べられた電柱、三色に光る信号機や緑のコンビニが立っている。
道路と隔離された歩道には小学生たちが手を繋いで下校していた。
聖夜「・・・すげぇ。」
ハジメ「改めてみると・・・、帰って来たって実感わくな。」
セイギ「俺たちの故郷・・・、おい見てくれ!!」
セイギが指さした方角を見ると謎の言語で書かれた看板を掲げ、押し車を押す男性が見えた。
聖夜「・・・なんて書いてあるっけ?」
ハジメ「あっちにいるのが長すぎてもう文字も忘れちまったな。」
セイギ「だがこの匂い・・・食べ物だ!!」
セイギは押し車に駆け寄り、指で3を表す。
男は謎の言語で何かを言った後、ご飯を作り始めた。
ハジメ「帰って来たはいいけどまったくわからんな。」
聖夜「同じく、いい匂いなのは確かだが・・・どんな食べ物か忘れちまった。」
男はどんぶりに入った何かをセイギに渡す。
どんぶりに注がれた湯気が立ち込めるほど熱いスープからいいにおいがする。
スープの中にはひものような何か、おそらく肉を薄く切ったもの、ゆでられた卵、蒼緑のわっかが添えられていた。
セイギ「ありがとう!!お代はこれでいいか!!」
セイギは数枚の金貨を手渡す。
男は困惑した顔押しながらも、『まぁいいか』と納得したように去っていった。
セイギ「・・・・・・匂いは旨そうなんだが。」
ハジメ「これ喰えんのか?紐だぞ?」
聖夜「肉が薄いな、財政難か?」
三人は顔を見合わせ、覚悟を決めて紐にかじりついた。
三人「「「!!!???」」」
表情が固まる。
その瞬間、三人は勢いよく紐をすすった。
懐かしい味、脳の奥底に眠る血が騒ぎだす。
三人「「「これ、ラーメンだ!!!!」」」
ラーメン、と呼ばれた穀物を練り合わせ紐状にしそれと絡み合うような濃厚なスープと具剤を合わせた料理。
聖夜「うんんんんんんめぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
セイギ「そうだラーメンだ!!何百年ぶりか、懐かしいな!!」
ハジメ「俺たちの食事って大体肉をワイルドに焼いたものとかだけだもんな・・・、泣けてくるぜ。」
三人は一気に食べ進め、スープも飲み干してしまう。
聖夜「なぁ、今から俺が言うことわかるな?」
ハジメ「あぁ、俺も同じ意見だ。」
セイギ「せーので言うか!!」
三人はせーのの掛け声で考えていることを口にした。
三人「うまいモノ食いに行くぞ!!!!」
お腹をパンパンに膨らませた三人が帰路につく。
聖夜「も、もう喰えねぇ・・・。」
ハジメ「ハンバーガー、もう一回喰いてぇな・・・。」
セイギ「もう三回も行っただろ・・・、うぷっ。」
ゲートに変える際、ふと大きな建物が目に入る。
聖夜「ここは・・・。」
ハジメ「城?いや・・・。」
セイギ「校舎、か。」
三人の眼に小学校が映る。
そのとたん、三人の脳裏に記憶が浮かび上がる。
三人ではしゃぎまわったあの頃を。
間違いない、ここは三人が通っていた小学校だ。
聖夜「・・・運命ってやつか。」
ハジメ「懐かしいな、セイギは私立に行って聖夜は別の中学校だったからそのころから疎遠になっちまった。」
セイギ「俺たちの思い出の場所だな。」
三人はそっと小学校に忍び込む。
外はもう暗く、職員室に電気がついているだけだ。
ハジメ「飼育小屋なくなっちまったのか。」
セイギ「そういえばハジメは飼育委員だったな!!」
聖夜「そうそう、普段はかっこつけてるくせに小動物好きだったな。」
ハジメ「好きで悪いかよ!!そういうお前は給食委員だったろ!!」
セイギ「うちのクラスだけ給食が少ない日、絶対お前喰ってたろ!!」
聖夜「うるせぇ学級委員!!給食委員の特権なんだよ!!」
三人は騒ぎながら廊下を歩いていると教室が目に入った。
聖夜達が少額6年生のころ、一緒のクラスだったころの教室だ。
ハジメ「・・・・・・・・・小学生の頃は仲良かったな。」
セイギ「あぁ・・・・・・、疎遠になって互いに合わなくなった。」
ハジメ「でも、お前ら二人のことを忘れたことは無かった。また会いたいなって思ってた。」
セイギ「そうだな。」
ハジメ「だから、あっちの世界で再会できた時、俺はすげぇうれしかったよ。中二病こじらせすぎて聖夜に迷惑かけちまった、本当にすまねぇ。」
セイギ「俺もだ、お前と出会えた時本当は見逃してやりたかった。だが、自分の正義に嘘はつけん。殺して住まって申し訳ない。」
聖夜「いいんだよ二人とも、結果的に結衣も俺も生き返った。今となったらそれも思い出だ。」
聖夜は窓を開けて外を見る。
校庭には何もないが、走り回る三人の少年の姿が見えた気がした。
聖夜「お前らと友達でよかったよ。」
セイギ「あぁ!!聖夜が死んでも俺達は親友だ!!!!」
ハジメ「死んだからって俺らのこと忘れんなよ。」
三人は笑い合い、ゲートで帰っていった。
どんな時も少年心は忘れない。
なぜなら彼らは、親友なのだから。




