みんなとの時間
極夜は力を使い果たし、倒れる。
極夜「はぁ・・・・・・、もう力が出ない。」
極夜は剣を地面に落とし、身体の力を抜く。
剣はゼルディアとの戦いで部品が壊れたのか変形したまま固まり、動かない。
その極夜のもとへ足音が近づいてくる。
オルル「お疲れ様。」
ゲッケイジュ「ちゃんと見てたよ、極夜。」
二人は極夜を起こし、楽な姿勢にしてくれる。
極夜「これでしばらくは平和な暮らしができるね。」
ゼルディアという脅威は去った。
少なくともしばらくは平和を脅かす脅威は訪れないだろう。
極夜は勝利の実感を感じ、腕を握りしめた。
遅れて聖夜がやってくる。
聖夜「よくやった、お前は本当に自慢の息子だ。」
そっと極夜を抱き寄せる。
その腕は力がこもっておらず、少し押すだけで簡単に倒れてしまいそうだ。
極夜「父さん・・・・・・?」
よくみると呼吸が浅い。
目立った外傷は癒えているが様子がおかしい。
まるで衰弱しきっているようだ。
聖夜「・・・・・・これで、次の王は決まったな。」
極夜「・・・・・・・・・え?」
聖夜「次の王はお前だ、極夜。俺の代わりにお前が国をまとめてくれ。お前の強さがあれば国はより大きく、より繁栄するだろうな。」
極夜「なに・・・言ってるの?父さんがいるじゃないか!父さんが帰って来たんだ、また父さんが王様として国にいてくれれば・・・・・・。」
聖夜「極夜、落ち着け。俺は真剣だ。」
極夜「だって・・・・・・、こんな話を急にするのはおかしいよ!まるで・・・・・、父さんが、」
いなくなるみたいじゃないか。
極夜の頭に嫌な想像が駆け巡る。
ミルド「・・・・・・主よ、そろそろ話しても良いでしょう。」
ベルゼブブ「そうだぜ、俺達だけ知ってても仕方がない。別れの時は必ず来るんだからな。」
聖夜「・・・そうだな。」
聖夜はみんなの方を向く。
そして、話した。
聖夜「俺はもうすぐ死ぬ。俺は生命力と魔力を使いすぎちまった。」
言ってほしくない最悪の言葉に極夜は絶句する。
ミルド「私達7人を生き返らせた代償、なのですね・・・・・・。」
聖夜「神の生命力でも7人はさすがに応えた。だが、俺は後悔していない。だからお前たちも自分のせいでだなんて絶対に思うな。」
聖夜は極夜に向かって膝をつく。
聖夜「ごめんな極夜、せっかくお前に会えたのにすぐにいなくなっちまって。」
極夜「父さんが望むのだったら僕は・・・これ以上何も言わないよ。でも・・・・・・でもっ・・・・・・・・・。」
極夜は声を殺して泣いた。
極夜はどこか夢見ていたのかもしれない。
この戦いが終わったら父と母、三人で暮らせると。
しかし、現実は残酷だ。
聖夜「・・・・・・みんな、すまないな。そういうわけで俺はもうすぐ死ぬ。だから最後の時までにみんなと楽しく暮らしたいんだ。」
聖夜はそう言って下手な笑顔を作る。
しかし、仲間の誰も笑えなかった。
一人を除いて。
ベルゼブブ「泣くなお前ら!人はいつか死ぬ。悪魔でも、人間でも、エルフでも、神でもだ。いつか終わっちまうならそれまでに思い出を作ればいい、死んでも聖夜を思い出すような思い出をな。」
聖夜「ベルゼブブ・・・。」
ベルゼブブ「お前らがそんな暗い顔じゃ聖夜だって寂しく死んじまうぜ。おら、極夜もシャキッとしやがれ!!」
極夜「・・・・・・・・・そうだね。僕らがしんみりしてたら父さんも哀しいよ!落ち込んでても父さんの運命に変わりはない、だから楽しく送ってあげようよ!!」
極夜は哀しみを押し殺して立ち上がる。
身体は痛むが前へ歩き出す。
ベルゼブブ「へっ、父親のいいところが遺伝したな。」
聖夜「・・・お前には助けられてばかりだな。」
極夜「みんな、帰ろう!!僕たちの育った国へ、僕らの思い出が詰まった国へ!!」
ここからはできるだけ2日に一回19時に投稿いたします。
次回更新日は2月7日19時です。




