T-152 そこにいたんだな
極夜「母さん・・・。」
結衣「極夜ごめんね、来るのが遅くなって。」
ゼルディアも動きを止めた。
ゼルディア「・・・・・・誰だ、お前。」
先ほどまで暴れていたゼルディアが大人しくなる。
この気配を知っている。
だが、本能が思い出すことを否定している。
この記憶を思い出してしまったら、ゼルディアはもう強くなれないと知っているから。
極夜「だめだ母さん!!ここに居たら殺される!!」
結衣「大丈夫、それに子供の危機に駆け付けない親なんていないわ。」
結衣が極夜を抱きしめる。
すると、先ほどまで震えていた極夜が落ち着きを見せた。
結衣「それにゼルディア、あなたと話しに来たの。」
ゼルディア「・・・・・・・・・。」
結衣「もう終わりにしましょうゼルディア、これ以上強さを求めてあなたが壊れてしまうわ。」
辞めろ。
結衣「自分の記憶すら忘れて戦って、その先に何があるの?」
その気配で、俺に話しかけないでくれ。
結衣「今の貴方は目的すらも忘れてる、あなたは何のために強さを求めていたの。」
ゼルディア「・・・・・・あ、あぁ・・・・・・。」
そうか、ここにいたんだ。
世界「もう!!またこんなボロボロになって帰ってきて、今日はおやつ抜きだからね!!」
魔術師「え~!?ちょっと喧嘩しただけじゃん!!俺も父さんみたいに強くなりたいんだよ。」
ゼルディア「俺みたいに?はっ、お前みたいなガキが百年はえぇんだよ。」
魔術師「じゃあ百年後には追いつくもん!!」
始めはただの暇つぶしだった。
人間が愛を確かめる行為、その一つとして子供を作った。
神と人間の子供、何の愛情もわかないただの人間。
俺にとってセカイだけいてくれればよかった。
世界「あなた!!あの子が・・・・・・、大けがして帰ってきて・・・・・・・・・。」
魔術師「・・・・・・、大丈夫。痛く・・・ないよ。全然平気だから・・・。」
ある日、あいつは瀕死で帰って来た。
いつも怪我をして帰ってきて、何も心配していなかったが。
だが、その怪我は全て俺のためのものだと知った。
魔術師「だってあいつら・・・、非道とか悪い奴とか言って・・・・・・父さんのこと何もわかってないんだ。・・・・・・、父さんは誰よりも優しくて・・・僕の・・・・・・憧れ・・・なのに。」
その時俺は初めて自覚した。
セカイと同じくらい大切にしたいと誓った。
俺の、俺たちの、大切な大切な子供。
ゼルディア「・・・・・・魔術師、そこにいたんだな。」
ゼルディアは極夜と初めて目を合わせる。
極夜もその眼を見返す。
暗く黒く、でも温かみのあるその眼をじっと見る。
ゼルディア「神成結衣・・・・・・、お前は・・・。いや、もうわかっている。」
ゼルディアは剣を地面に突き刺した。
ゼルディア「お前はずっと見ていたんだな、セカイ。」




