T-151 忘れられない記憶
魔術を終えた聖夜は地面に降り立つ。
聖夜「・・・・・・・・・、もう限界か。」
聖夜はそのまま地面に倒れた。
極夜「父さん!!」
極夜は聖夜の傍に駆け寄るがその顔は、衰弱しきっている。
ゼノ=ゼルディアの疲労はあるだろうが様子がおかしい。
魔力の欠乏だけではこんなに衰弱しないだろう。
聖夜「ごめんな極夜。」
極夜「なんであやまるんだよ父さん!!ゼルディアはもう倒したんだ、一緒に帰ろうよ!!」
聖夜は首を振ろうとするがもう首を少しも動かせないほど弱っていた。
聖夜「無茶しすぎたんだ俺は。それにゼルディアはまだ・・・・・・。」
聖夜は気絶し、手の力が抜けていく。
極夜「父さんだめだ!!まだ・・・・・・死なないで・・・。お願いだよ・・・・・・・・・。」
涙を流す極夜の背筋に悪寒が走る。
極夜「な、なんでだよ・・・。なんでまだ生きてるんだよ!!」
極夜の背後には体中から血を流しながらも二つの翼で羽ばたくゼルディアがいた。
ゼルディア「・・・俺は最強なんだ・・・・・・。もう誰も失わないように・・・俺は・・・・・・。」
ゼルディアは愚者の記憶を失い防御が壊れた後、自身の記憶を失い生命力を増大させ生きながらえたのだ。
今のゼルディアは自分のことさえ何者かわからない、ただ強さを求める化け物になっていた。
しかしまだ翼が二つ残っている。
自分より優先して残した記憶は一体誰のモノだろうか。
ゼルディア「どけ、ガキ・・・。そいつを殺しておれは初めてこの世界で最強になれる。俺が最強ならそれでいい、お前だけは見逃してやる。
ゼルディアは聖夜の方に手を伸ばす。
しかし、その手を極夜が弾いた。
ゼルディア「・・・何の真似だ。」
極夜は恐怖に震えながらもゼルディアをにらみつけ、剣を構える。
ゼルディア「おれにとってお前は取るに足らない雑魚だ、だから見逃してやると言ったのに。なぜそのチャンスを棒に振った?」
極夜「と、父さんは殺させない!どうしても殺したいんだったら・・・僕を殺してから行け!!」
恐怖で創造の力をまともに使えない極夜が今ゼルディアと戦ってもっ勝ち目はない。
だが、それでも極夜は譲らない。
極夜「僕が父さんを守るんだ。」
そして最大限の勇気を振り絞り言った。
極夜「父さんが守ったこの世界のためなら何度でも殺されてやる!!お前の好きにはさせない!!」
ゼルディアの頭がずきりと痛んだ。
何かを訴えるような小さな声がゼルディアを蝕む。
ゼルディア「やめろ・・・。」
小さな声はどんどんと大きくなり、ゼルディアは思わず剣から手を放す。
ゼルディア「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
忘れていたはずの日常が映し出される。
最愛の人と、最愛の息子。
あの輝かしい家族の日常がよみがえる。
ゼルディア「消えろ、消えろ!消えろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
暴れるゼルディアの拳が極夜を襲う。
しかし、その手は何者かによって阻まれた。
結衣「もう、終わりにしましょう。」
そこには極夜の母、神成結衣が立っていた。




