T-116 夜明けを食らう者
ミルドは折れた腕で剣を担ぐ。
腕だけではない、体中の至るところにひびが入り、ところどころ破損している。
ミルドが立ち上がれたのはエクストラスキル【頂を喰らう者】の効果だ。
しかし、ミルドの王はもういない。
だが、彼が王を想う気持ちだけがスキルに反応したのだ。
ゼルディアはうろたえていた。
ゼルディア「なんなんだよ・・・・・・なんなんだよお前らは!!」
ゼルディアはたまらず声を荒げる。
ゼルディア「何故立ち上がれる!!もう勝負はついただろう、なのになぜ立ち上がるのだ!!なぜ勝ち目のない戦いを続けようとする!!死ぬのが怖くないのか?誰だって死ぬのは怖い、俺もそうだ!!なのになぜ死を恐れない!!何故友の死を受け入れる!!大切な人がいなくなったら誰だってつらいはずだ、なのになぜ死を受け入れ、前に進めるのだ!!俺が・・・・・・、世界を失って・・・・・・悲しみがいつまでも晴れない俺が・・・・・・バカみたいだろ・・・なぜ、誰かを想うことができる・・・・・何故、何故、何故なんだ!!」
ミルドは極夜のところまでやってくる。
極夜はボロボロになっても尚、前へ進もうと身を動かしている。
ミルド「極夜、私は最初お前のことが好きではなかった。王の子でありながら弱く、脆く、魔術も使えんお前のことが。だが、お前は何が起ころうと決して逃げなかった。あきらめず、前を向いていた。今もそうだ。」
ミルドは自身のコアを体から取り出す。
魔物の原動力であるコア、なくなればその魔物は死を迎える。
ミルド「極夜、あとは頼むぞ。」
ミルドは自分のコアを極夜に押し付けた。
コアはあっという間に吸収され、極夜の負傷がみるみる癒えていく。
ミルドの【頂を喰らう者】が極夜を王として認め、新たな力を開花させたのだ。
ミルド「そして王よ、聖夜様よ。どうか我々を、極夜のことを助けてあげてください。」
ミルドはコアを失い、灰となって消えていった。
そしてその願いが届いたのか、
ガチャン
どこかで扉の鍵が開く音がした。。
極夜の薄れゆく意識の中、扉が目の前に現れた。
黄金の、未来へと拓く扉が。
極夜はミルドの残してくれた力で立ち上がり、ドアノブにてをかける。
極夜「みんな・・・、ありがとう。みんなが戦ってくれたから・・・、僕は前を向けたんだ。そして、この扉を開く資格を得たんだ。」
この最後の戦いで極夜のエクストラスキルが覚醒した。
いや、すでに覚醒していたのだ。
【夜明けはもう来ない】は感情の変化に反応し、異界から生物を呼び出す。
いや、呼び出していたというのは正解ではない。
極夜の頭が思い描いたものに最も近しいものを召喚していたのだ。
言い換えるならば『想像したものを生み出す力』。
極夜「僕は【夜明けを食らう者】、さぁ未来への扉を開こう。」
極夜は勢いよく扉を開けた。
その扉の向こうには男が立っている。
???「今度はそっちから扉を開けてくれたか。」
極夜「うん、皆のおかげだよ。」
???「そうか、頑張ったな極夜。」
男は極夜の頭をなで、こちらの世界へ侵入してくる。
エクストラスキルの警戒音はもう鳴らない。
なぜなら、男はもともとこちらの世界の住人なのだから。
ゼルディア「お前は・・・・・・。」
聖夜「帰って来たぜ、皆。」
男には様々な呼び名があった。
【暴食の裁人】【暴食の魔王】【神王】
そして、【神を喰らう者】。
残虐な神のもとへ、【神を喰らう者】神成聖夜が帰って来た。




