T-115 父親
ゼルディアは胸部から血を流す。
人間のか弱い一撃が、ついに神に届いたのだ。
極夜は焼き焦げた体で立ち上がる。
もうすでに体中が動けないほどボロボロになったのに前へ進もうとしている。
相手はまだたっているのだから。
そんな中、ゼルディアは怒るでもなく悲しむわけでもなく、
笑っていた。
ゼルディア「くっくっくっくっくっく、くはははははははははは!!!!素晴らしい!!素晴らしいぞ我が息子よ!!」
ゼルディアは筋肉の伸縮であっという間に止血し、極夜の前まで歩いていく。
ゼルディア「人間如きの力でこの俺に傷をつけるとは!!見事、見事だ!!それでこそ俺の息子、魔術師よ!!」
ゼルディアは歓喜のあまり極夜の背中をバンバンとたたく。
極夜はその衝撃で地面に倒れてしまった。
極夜「う・・・・・あぁ・・・・・・・。」
ゼルディア「もう一度あの攻撃をしろ!!お前はもっと強くなれる、そして最大限強くなったら食ってその力をもらってやる!!さぁ、もう一度攻撃しろ!!」
極夜はもう、返事ができない。
既にこと切れる寸前だった。
ゼルディア「どうした?あぁ、そういえば人間は死の恐怖を感じると最後に強くなると言うらしいな。」
ゼルディアはおもいっきり極夜を蹴り飛ばした。
極夜の体はまるで布切れのように吹き飛んでいく。
完全に動かなくなった極夜をゼルディアは落胆の眼でみていた。
ゼルディア「はぁ、結局あの一撃だけか、つまらん。魔術師はメインディッシュにとっておくとして・・・、まずは終焉竜の方からいただこうか。」
オルルは神の力を流し込まれ、暴走寸前のところまで来ていた。
ゼルディアの腕がオルルに伸びる。
しかし、その手はさえぎられた。
さえぎったのはひん死のアレイスターだった。
アレイスター「娘に・・・手を出すな。」
死亡したはずのアレイスターは最後の瞬間、エクストラスキルで今まで集めたすべてのポイントを自分の命へ変換し、わずかながら生きながらえたのだ。
これにはさすがの神も引いている。
ゼルディア「な、なんなんだよ。拾ってきたやつになんでそこまで固執するんだ、何故そこまで・・・・・・。」
子供が大事なのか、とゼルディアは言葉を詰まらせた。
自分にとって子供は吸収するためのものであり、替えの利く食事。
しかし、昔は違ったのだろう。
アレイスター「子供を親が守るのは・・・・・・、当たり前のことだ・・・。」
アレイスターは力尽き倒れた。
アレイスター「どうか・・・・・・幸せに。」
最後の祈りは果たして娘に届いたのだろうか。
しかし彼が生み出した時間、そしてベルゼブブが作った時間で戦況は大きく変わる。
オルルにたまっていた神の力が霧散し、暴走が収まった。
もう一人、死亡したはずのミルドが、最強の剣が立ち上がった。
ミルド「貴様にそんな根性があったとは知らなかったぞアレイスター、地獄であったら話をしよう。」
ミルドは剣を力強く握る。
ミルド「お前たちが作ってくれた時間を無駄にはせんぞ。」
ミルドのオーラがかつてないほど覇気を纏った。




