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世界のためなら何度でも  作者: 社長
第二章、花言葉は裏切り
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T-79 みんなの幸せ

「嘘?僕が?」


「バレバレなんだよ、お前が自分の正体を言った時から。」


「な、何言ってるんだ。」


ゲッケイジュは頬をヒクつかせる。


「ほらそれだよ。ゲッケイジュ、自分ではわかってないかもだけど嘘ついたり同様したりするとほっぺたがピクってなるんだよ。」


「何を根拠にそんなにことを。」


「ずっと見てきたからな、お前の友達としてな。」


「っっ!!だから僕は君と友達なんかじゃ!!」


極夜は光の玉を右手で掴む。


左手は義手だが右手は素手。


ジュウジュウと肉がやける音がする。


「またほっぺたピクってなったよ。」


極夜は笑顔でそういう。


やがて光は消えた。


その代わり極夜の右手に大きな穴が空いた。


肉が溶けたせいだ。


「ゲッケイジュ、いつもオルルが心配だって言ってたよね。その時はほっぺたピクってなってなかったよね。」


「……………。」


ゲッケイジュの仮面が外れる。


とても美しい、少女のような顔だ。


しかし顔にはいくつもの消えない傷がついていた。


ゲッケイジュは慌てて仮面を付け直す。


「本当は僕たちのこと、友達だと思ってくれてたんでしょ。」


「…………………うん。」


「それでも世界中のみんなを幸せにしたかったんでしょ。」


「…………うん。」


「ゲッケイジュはほんとに優しい子だね。」


極夜はゲッケイジュを優しく抱きしめる。


ゲッケイジュは泣き出した。


今まで自分が受けてきた暴力を思い出し、そんな思いを他の人にはさせたくなかった。


今まで溜め込んでいたものを全てこぼした。





ゲッケイジュ、本名ルーナ。


生まれてきた時から魔力を持たなかった。


親はそんな出来損ないに無関心であり、生まれた街の人間たちもゲッケイジュを迫害した。


ある時はストレス発散のためにサンドバッグにされ、ある時は川に沈められ、ある時は身体中をゆっくりとナイフで切りつけられた。


それがゲッケイジュにとっての当たり前であり、仕方の無いことなんだと思っていた。


「それが当たり前?そんなわけないよ。」


ある時救いの手がゲッケイジュを救い出した。


「私達と一緒にここから逃げようよ。」


その子達は自分と同じく魔力を持たず生まれてきて迫害されていた街の子供達だった。


ゲッケイジュはその手を掴んだ。


そして窮屈で不幸せな街を抜け出した。


こうしてできたのが混沌に咲く花だった。


魔力のない人々を、世界中のみんなを幸せにするために。


そして殺された。


ゲッケイジュとルドベキアを残し、みんな殺された。


危険思想だと、生かしてはおけないと、殺された。


残された2人は泣きながら誓った。


「もうこんな思いをするのは僕らで最後にしよう。」





「ルドの体質を増幅させて世界中から魔力を無くす。そうすれば本当に幸せな世界が訪れるんだ……。」


「そうか……、でも魔力がないから不幸せって決めつけてないか?」


「………………。」


「確かに魔力がない人間は不便だ。でもそんな生活でも幸せを見つけてる人だっているはずだ。魔力が悪いんじゃないんだ、悪いのは差別そのものなんだよ。」


「……うん。」


極夜は立ち上がる。


「僕が差別を無くすよ。僕やみんなの力があれば魔力がない人でも差別を受けないような世界を作れるさ。もちろんゲッケイジュの力もね。」


「うん…………。」


「帰ろう、僕らの国に。」


極夜はゲッケイジュの手を引いて外へ出た。


外の空気は魔力に満ちた、とても軽やかな感じがした。


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