T-68 非力な少年の最後の一太刀
終焉竜、いやオルクジャナスは力なく倒れる。
「ぐぉわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
星中に轟く唸り声をあげている。
死んでたまるかと必死に抵抗している。
極夜はオルルを抱きしめその様を見守る。
「うっ……。」
「どうしたのオルル。」
「分からない……、オルクジャナスの考えてることが分からない。」
オルルは頭を抱えてうずくまる。
「オルクジャナスは悪しき者を滅ぼすって言ってる……その行為に何の不満があるのかって…………、すごい怒ってる。」
終焉竜のクリスタルが黒く染まる。
その黒色はどこまでも終わりが見えないような、見たもの全てを吸い込むような黒色、でもどこか光があるような色をしていた。
「この光……、どこかで見たことがある。」
ミルドはなにか思い出したようにそのクリスタルを見つめる。
オルクジャナスが口を開く。
そして人間の言葉で
「この世界を滅ぼす……根絶やしにする。それが……最善だ。」
かすれたような声でそう言った。
するとクリスタルの黒色が渦巻くようにねじれ始める。
それと同時にその場の重力が入り乱れ始めた。
「な、何が起こってるんだ?」
人目見て明らかにやばいと分かる。
この光は全てを滅ぼす『終焉』の光だ。
「師匠、オルル!!早く逃げないと!!!」
二人は何故かその場を動かない。
なにかに操られたように、その場で放心していた。
その場に立っていられたのは極夜ただ1人だけだった。
「僕が何とかしないと……、僕があいつを止める!!」
極夜は剣を持って走る。
オルクジャナスを止めようと。
しかし光を守るかのようにレーザーが飛んでくる。
今まで比にならない量のレーザー。
その1本が極夜の体を掠めた。
「……え?」
直後体の左側をえぐるような痛みが襲ってくる。
「うぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
飛び散った左腕を見て初めて極夜は左腕を失ったことを知った。
しかし極夜は止まらない。
なぜ走るのか、それは守りたい人達がいるから。
師匠も、オルルも、母さんも、ゲッケイジュも。
父さんが守ったもうないこの国を。
左腕を失っても走る。
痛みはもう引いた。
右手で剣を引きずりながら、レーザーをかいくぐり。
最後の力を振り絞り飛んだ。
とんだ先には黒く光るクリスタル。
「これで終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
魔術も持たない非力な少年の最後の一太刀はそのクリスタルに直撃、そしてその巨大なクリスタルに………………、
弾かれた。
「そ、そんな…………。」
非力な少年の力ではその巨大な竜に届かなかった。
力を失った少年はそのまま地面に落下した。
ボキボキと骨の折れる音がする。
少年は、神成極夜は初めて絶望した。
そして謝罪した、この美しい星を守った父親に。
「ごめんなさい………、父さん。」
コンコン。
扉をノックする音が聞こえた。




