T-62 ありがとう
アレイスターは走る。
娘であるオルルを抱えてひたすら遠くに走る。
「あいつらなら必ずおってくる。その前にどこかにオルルを隠さないと!!」
走っている最中、オルルが目を開ける。
「パパ?」
「ん?どうしたんだい。」
「……、私を置いて逃げて。」
「…………、見えてたのか。」
「なんで私を庇ったの?あのままいけばパパは助かったんでしょ?」
「……………………。」
「私が居なくなるだけで良かったんでしょ。なのになんでパパが危険なことするの。」
「黙ってなさい。」
アレイスターは唇を噛み締める。
「今ならまだ間に合うよ。だから私を置いて逃げて。」
「黙れ!!」
「黙らない!!」
オルルは泣きながらアレイスターを突き放す。
その拍子にアレイスターは転倒する。
抱き抱えていたオルルも一緒に落ちる。
「もうやめようよ。なんでパパが危険なことするの、私は拾われたんでしょ。なのになんでこんなに大切にするの!!私みたいないらない子のためになんで危険なことするの!!」
「……………………娘だからに決まっているだろう!!」
アレイスターは涙を流す。
いつもの済ました作り笑顔とは違い、顔が崩れるほど泣いている。
「大切な娘だ、たった1人の娘だ、可愛い可愛い私の子供だ。自分の子供を大切にしない親なんてどこにいるんだ!!」
アレイスターはオルルを抱き抱える。
「パパぁ。」
オルルもアレイスターを力強く抱きしめる。
チクッ
そんな感動的な場面に異音がなった。
なにかが注射される音。
オルルの右腕に注射器が刺されていた。
虹色の液体の入った注射器だ。
「天之川ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「僕が時間止めれるの知ってただろ。」
オルルの体が黒く変色していく。
体からは鱗が生え、翼が生え、尻尾が生える。
「絶対に死なせない、私の可愛い娘。私はオルルのことを愛している。」
「私もパパが好き。育ててくれてありがとう、愛してくれてありがとう。」
オルルは最後に飛びっきりの笑顔で、
「助けてくれてありがとう。」
こうして世界に終焉が訪れた。




