T-53 強制転移
地下室はまるで研究所のようだった。
そして当たり前のように血の匂いが染みついている。
そして極夜たちを見つけてしまった研究者たちは次々にゼロに殺されている。
「も、もうやめようよ。人をそんな簡単に殺すなんて間違ってるよ。」
「あなたに私を止める権限はありませんよ。私のマスターは創造主である博士と神成聖夜様だけです。」
「ゼロさんって父さんをすごく慕ってるよね。ミルドさんが父さんと対立したら父さん側につきそうだよ。」
極夜がそういうとゼロはぴたりと歩くのを止める。
そして首を180度曲げて極夜のほうを向き、
「当たり前ですよ。マスターが夫を殺せというのならば私は喜んでミルドを殺します。」
と、真顔でそういった。
表情は変わらないがその奥にケタケタと笑っているのを感じた。
「おや、ここが最下層ですね。」
ゼロが扉のボタンを押す。
それと同時に何本ものバリスタボルト(大きめの矢)がゼロを直撃した。
「ゼロさん!!」
しかしゼロには傷一つついていなかった。
「嘘だろ?とんでもない化け物連れてきやがったな。」
部屋の奥の男がそういった。
男は白衣を身にまとい、両手に黒い手袋をつけている。
その男の後ろにははりつけにされたオルクジャナスが。
「お前がこの国の王か。」
「そうだ、私がラスカノン王国国王ラスカノンだ。」
極夜は剣を握る。
その間にゼロは近くの椅子に腰かけて勝手にインスタントコーヒーを作り始めた。
「オルルを返してもらうぞ。」
ラスカノンは手袋を脱ぐ。
「あぁ、意気込んでるとこ悪いけど君が戦うのは私じゃないよ。」
ラスカノンは一瞬で極夜の目の前に現れ、極夜に掌で触れた。
すると極夜は一瞬で部屋から消えた。
「強制転移ですね。」
ゼロはコーヒーをすする。
「...まさか見破られるとは。そうです、私のエクストラスキルは【強制する呪縛】。触れたものを強制的に別の場所に飛ばすことができる。ですが彼のことを追いかけなくていいのですか?」
「ええ、私の目的は彼女ですよ。」
ゼロはオルクジャナスを指さす。
「そうですか、しかし私の邪魔をされても困りますので消えてもらいますよ。」
ラスカノンは自分に触れてゼロの前にテレポートし、ゼロに触れた。
しかし転移は発動しなかった。
「......なぜ発動しない?」
「さあなぜでしょうね。」
「あなたの能力ですか。これでは研究が止まってしまいますね。」
ラスカノンもインスタントコーヒーを作り始めた。




