T-33 アップルパイ
「……ここは?」
『あ、目覚めたようだね。体の調子はどう?』
アマハラはアームでオルクジャナスの額に乗ったおしぼりを取る。
「あ、えっと。ありがとうございます。」
『お礼ならそこに寝てる極夜に言っといてよ。ずっと看病してたからさ。』
オルクジャナスは椅子でぐったりと寝ている極夜に目をやる。
そしてそっと布団を離れて極夜を布団に寝かせる。
『優しいね。』
「いえ、看病してくれた恩人ですから。」
その言葉にアマハラは顔を顰める。
正確には心の中でだが。
『……終焉竜。』
「しゅう?何かの暗号ですか?」
『…………。』
アマハラにはわかる。
彼女は今嘘をついた。
しかし自分を守るための嘘ではなく、周りの人を傷つけないための嘘だ。
彼女は自分が強大な力を持っていると理解している。
その力で周りを傷つけないために知らないふりをしているのだ。
『失礼したね、よかったらアップルパイ焼いたけど食べる?』
「いいんですか?大好物なんです。」
『知ってるよ、君のことはお父さんから聞いてるよ。』
「パパと知り合いなんですか?」
『……友達さ。』
「パパって友達いたんですね。」
『いるよ、それと最高の王様もね。』
「王様?」
『おっと、長話しすぎるとアップルパイが冷めちゃうね。4階の食堂までエスコートしよう。』
そういうとアマハラはオルクジャナスの手を取り極夜の自室から食堂まで移動した。
「あれ、オルル帰っちゃった?」
『あぁ、極夜起きなさそうだし返しちゃった。』
「いや、ありがとう。」
そう言って極夜は自室のテーブルに座る。
『……何?』
「おやつ、アップルパイあるんでしょ?」
『……本当聖夜と似て鼻がいいな。』
アマハラの中からアップルパイが出てくる。
「いつも思うけどアマハラのお腹ってどうなってるの?」
『無限の空間になってる、好きなものしまえるよ。』
「じゃ、じゃあエロ本こっそり隠していい?母さんに見つかったら怒られちゃうし。」
『そういうところも似てるね。』
極夜はアマハラの中に大量のエロ本をしまう。
「極夜様、ご飯の時間です。」
「うん、今行くよ。」
メイドさんに言われて極夜は食堂に移動した。
その日のデザートはおやつと同じくアップルパイが出た。




