D-74 ゼロでもないイチでもない存在
「なんでこんなところにダークがいるんだ。」
『タチの悪い幻聴じゃないぜ、俺は正真正銘俺でありお前だ。』
聖夜は何度か目を擦るがダークの姿形は消えない。
『ここはお前自身が作り出した世界、【【ナニモナイセカイ】】だ。』
「ナニモナイセカイって六席の奴らが使っていた場所か。」
『そう、それと同じものを神王の力でお前自身が作り上げたんだ。』
「……でも俺自身は死んでるからもう何もできねぇよ。」
『……ふっ。』
ダークは自身のことを鼻で笑う。
『このナニモナイセカイはただ別次元を作り出す力じゃない。魂を強化する場所でもあるんだ。』
「魂の強化?」
『そう、元にお前は死んでいるけど死んでいない。ゼロじゃないしイチでもない存在だ。』
「じゃあ生き返る方法はまだあるってことか!!」
『……そう意気込んでるところ悪いけど。』
ダークは空間に亀裂が入っているところを指さす。
『実はもう生き返ることができる。全部外のあいつらがやってくれていたからな。』
亀裂からは微かな声でアレイスターの声が聞こえる。
俺を呼ぶ声が。
『今からお前が生き返る方法を教えてやる。俺と融合し魂をゼロでもないイチでもない存在から一以上に変え現世に出る。これだけだ。」
「そ、それだけで生き返れるのか?」
『あぁ、お前が土壇場でこのナニモナイセカイを生み出せたからできたことだ。それにアレイスターたちにも感謝しろよ。』
聖夜とダークは手を繋ぎ融合し、亀裂の前でやってくる。
『それじゃあな。』
「え?」
ダークは融合を解除し、聖夜を思い切り亀裂の中に押し込んだ。
「な、何してんだ!!」
『…………俺の作戦はこうだ。まずお前と融合し、魂を1以上にする。そして俺の魂をお前の足りない分だけ注ぎ、お前の魂を1以上にした後、お前だけを生き返らせる方法だ。』
聖夜は必死に亀裂を叩くがびくともしない。
亀裂は常に一方通行、入り口から入れば出ることはできないのだ。
『行け、みんなが待ってるんだ。』
「ダーク!!」
聖夜の叫びは虚しく、ダークの魂は薄れ消えていった。
「…………なんでお前が死ぬんだよ。」