D-49【審判役】
聖夜が倒れ込んでいるところに天之川が近づいてくる。
「おつかれ。」
「お前なんもしてないのな。」
「いや、だって相性悪かったし……。」
天界の栄養ドリンクをもらった聖夜はごくごくと一気飲みする。
するとそこに動けるはずのない怪我のカマエルが足を引きずりやってきた。
「……ほらよ。」
カマエルが手渡してきたのは戦いの前に約束していた神王の奇石だった。
「……律儀だな。」
「俺が負けたんだからな、約束は約束だ。」
カマエルは去り際に一言、
「俺は今まで喧嘩に楽しみを感じなかった、でも今日の戦いはなかなかに楽しめたぜ。」
「そうか。」
静寂なこの地で去っていくカマエルの足を引きずる音があたりに響いていた。
一度地上に戻ってきた聖夜は自らに治療を施した後、奇石を手に持つ。
「じゃあアレイスター生き返らせるわ。」
奇石に願いを込めるとあたりが真っ白になっていく。
そして光が収まると、以前来た【【ナニモナイセカイ】】に立っていた。
目の前には身長が約3mはありそうな長身の人型生命体がぼーっと立っていた。
『ようこそ、王の血を引くものよ。我は王に使えし六席の一柱、【審判役】ダジェンデゥ。』
「審判役ねぇ。預言者といい名前が複雑だな。」
『我が名には『公正』と『罰』という二つの意味がある。』
「そっか。」
意外にも無口な審判役に戸惑う聖夜。
「で、預言者みたいにまたなんか教えてくれるのか?」
『そのつもりだ、聞きたいことを言え王の血を引くものよ。』
「その呼び方長くね?」
『では王の御子息よ。』
「それならまぁいいか。じゃあさ、俺の父親について教えてくれ。」
『王の御子息の父、つまりは我らの王のことだな。』
聖夜は審判役に自分の父親である初代神王について聞くことにした。
『我らが王は原初の存在。この大いなる空間、すなわち銀河が生まれた瞬間に生をなした存在。この世で最も尊く、素晴らしき御方だ。現在は理想郷にて家族と、すなわち王の御子息の兄弟にあたる人物達と休養をとっている。』
「そういや初代神王はサボり癖があるとか聞いたんだけどあれは?」
『真っ赤な嘘である。王は休養中の今でもこの世の均衡を保とうと力を尽くしている。特に王の御子息を気にかけているようだ。』
「へぇ、なかなかいい父親なんだな。」
『他に聞きたいことはあるか?』
「うーん、そうだな〜。」
しばらく考える。
そこで一つ、いや二つの疑問を問うことにした。
まずは一つ、
「父親が初代神王ってのは知っている、じゃあ『母親』はどうなんだ?」




