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世界のためなら何度でも  作者: 社長
第十章、希望
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#116 守るための覚悟

ゼロは閃光に体を貫かれた。


はずだった。


「順応するのが早いな。さすが俺が作っただけあるな。」


ゼロは目にも留まらぬ速さで攻撃をかわしていたのだ。


「この速さは一体?」


博士に渡された零石が赤く光っている。


そしてその光がゼロの胸に少しずつ吸い込まれていく。


「胸の可動域を少し緩めてみろ。」


博士に言われた通り少しだけ胸の可動域を開く。


すると光は先ほどより早くゼロの体に取り込まれていった。


そしてその赤い光がゼロの体を包み込む。


少し時間が経つとゆっくりと光が晴れてくる。


光から出てきたゼロの姿は素の青目金髪ではなく、赤目銀髪の禍々しい容姿になっていた。


「すごいですね。体が軽くなって今ならなんでも壊せそうな気がします。」


「そうだろ?その零石は地中深くで長年悪しき魔力だけが蓄積された魔力石を少しいじってかっこいい形にけずったものなんだ。」


「どうでもいいです。なんだか無性に壊したいです。」


「ん?」


ゼロは博士の話も聞かず博士に殴りかかりました。


「いたぁ!!」


ゼロはそのまま博士を殴り続ける。


そのゼロの表情はあまりにも残虐だった。


しかし博士は防御壁を張ったのでまるで効いていない。


それでもゼロは博士を殴りつける。


殴り続けた反動でゼロの拳はボロボロになっていく。


「ちなみにこれが零石の副作用な。絶対的な攻撃力と速度を手に入れる代わりに防御力がなくなるし理性を失って破壊衝動に駆られるんだ。さて、そのままだと自分で自分を傷つけ続けるだけだぞ。」


ゼロは博士の言葉に全く聞かずに殴り続ける。


このままではやがてゼロの拳は自分の力に耐えきれず壊れてしまうだろう。


「そんなんでグラトニー君のもとに行っても守るどころか逆に傷つけるだけだぞ。」


ゼロは拳をピタリと止めた。


「んん!?」


博士も冗談半分で言ったつもりだったのだがゼロは拳をピタリと止め、博士から離れていく。


そしてゼロはにこりと笑い、


「そうですね。こんな私ではマスターに顔向けできません。」


グラトニーを思うゼロの気持ちが零石に蓄積された悪しき魔力の呪いを打ち破ったのだ。


「これは想定外だな。」


博士が零石を加工しているときですら倒れそうになるくらいの負の魔力を主人に対する想いだけで乗り切ってしまったのだ。


「これが私の守るための覚悟です。零石の影響でエクストラスキルも獲得しました。どうですか?」


「……。」


博士は俯いて黙る。


本当はゼロを生かせるつもりなんてなかった。


選択者としての責務をやり遂げずこのまま二人で過ごしたかった。


「これも親の運命なのかな。」


博士は二カッと笑い、ゼロに言う。


「いいだろう、お前の覚悟はしかと受け取った!!よってこの博識の試練を合格とする!!そして俺のエクストラネーム、《博識》の二つ名を与える。」


博士は嬉しさと悲しさを堪えて言い放つ。


「さて、俺はそろそろ神の野郎に報告してくるよ。」


アーサーの時と同様にグランの体は光の粒子になって天に昇っていく。


「博士。」


「なんだ?」


ゼロは涙を流すもとびっきりの笑顔で、


「私を作ってくれてありがとうございます!!」


「零石の効果で表情筋まで緩くなったか?全く、生きてお前の成長を最後まで見たかったよ。」


博士は嬉しそうな顔で天へと昇って行った。







「……。」


ゼロは少しだけ悲しんだ後、再び立ち上がる。


「マスターのもとへ帰らないと。」


長年の勘からかもう少しで自分たちの主人が起き上がると察知し、ゼロはゆっくりと現実へと戻り走り出した。





《博識》ゼロ。《博識の試練》合格。


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