クリスマス・イブの流れ星 ~子どもトナカイの願い~
人里はなれた森の中、トナカイのお母さんと子どもがいました。この親子はとても仲良しで、いつもいっしょにすごしています。
しかし、この親子がはなればなれになってしまう日が毎年1日だけあります。
それは12月24日のクリスマス・イブ。この日の夜からお母さんはサンタさんをつれて街の子供たちにプレゼントをとどけに行ってしまいます。
そして、今日がそのクリスマス・イブ。お母さんはお仕事に行こうとしていました。
「……ねぇママ。今年もお仕事に行っちゃうの?」
「ごめんね。ママもあなたと一緒にいたいんだけど、このお仕事だけはやめられないの。だからガマンして待っててね」
「……うん。分かった」
「ありがとう。それじゃあいってくるわね」
お母さんはスタスタとサンタさんのところに行ってしまいました。
そんなママを子どもトナカイはだまって見おくることにしました。
(本当はすごくイヤだけど、お仕事をジャマしちゃったらニンゲンの子供たちにプレゼントをとどけられなくなっちゃうし、ボクがガマンしなくちゃ!)
しかし、子どもトナカイはお母さんを姿が見えなくなったしゅんかん、なみだをポロポロとこぼして泣き始めてしまいました。
(クリスマスもママと一緒に過ごしたかったのに。なんで僕のママをうばうんだよ……クリスマスもサンタさんもキライだ!)
そして子どもトナカイは泣きつかれたのか、雪の上でゆっくりと眠ってしまいました。
―ーシャンシャンシャンシャンシャン
「うぅ…………うるさいなぁ。なんの音?」
森の中でひびきわたる音。この音で子どもトナカイは目を覚ましました。
「空の方から聞こえるけど……」
子どもトナカイはゆっくりと立ち上がり、空をみることにしました。
すると空にはみどり色のキレイなオーロラがかかっていました。そして、オーロラの上に流れ星が1つだけゆっくりと移動していました。
「うわぁ! 流れ星だ! あっ、そういえば……」
流れ星に3回おねがいをすると、そのおねがいが叶う。
お母さんから教えてもらったことを思い出した子どもトナカイは、さっそく流れ星にお願いをすることにしました。
「何をお願いしようかなぁ…………あっ、そうだ!」
ねがいごとを決めた子どもトナカイは、目をつむり心の中でねがいごとをとなえ始めました。
(ママと一緒にクリスマスを過ごせますように! ママと一緒にクリスマスを過ごせますように! ママと一緒にクリスマスを過ごせますように!!!)
3回ねがいごとをとなえおわり、子どもトナカイはゆっくりと目をあけました。
しかし、ママはどこにもいませんでした。
(……やっぱりそうだよね)
ショックをうけた子どもトナカイは、再び空を見上げることにしました。すると……
「あ、あれ? 流れ星がこっちにきてる!?」
このままではぶつかってしまう。子どもトナカイはひどくあわてはじめました。
(と、とにかくいそいでにげなくちゃ……)
―ーシャンシャンシャンシャンシャン
(あれ? この音は?)
すこしまえにきいたすずの音。流れ星が近づいてくるとともに、この音もどんどん大きくなってきました。
(なんで流れ星からすずの音が……)
子どもトナカイはじっーと流れ星を見つめます。
そしてよく見ると、近づいてきたのは流れ星ではなく、実はソリにのったサンタクロースだったことが分かりました。
「あっ、ママ!?」
そしてサンタさんを連れていたトナカイはお母さんであることにも気が付きました。
「ただいま。良い子でお留守番しててエラかったね」
「ま、ママ……もうお仕事は良いの?」
「うん。サンタさんがもう今日はおしまいでいいよって言ってくれてね」
お母さんはそういうと、うしろにいるサンタさんに視線を向けます。
「ふぉっふぉっふぉっ。メリークリスマス」
「ほ、ホンモノの……さ、サンタさん?」
「ふむ。いかにもワシがサンタじゃ」
子どもトナカイはすごくビックリしています。
「ほんとうはもっとキミとおしゃべりをしたいところじゃが、ワシはまだ仕事がのこってるから急いでもどらなければならん。さっそくじゃが、キミにプレゼントをあげよう」
「え? いいの? だって僕は人間の子じゃないのに……」
「ワシの仕事は『良い子にプレゼントをわたすこと』じゃからのぉ。トナカイのキミにもプレゼントをわたすよ。ホレ」
サンタさんは白い袋の中から、ごうかな食事やかざりつけされたクリスマスツリーを取り出し、子供トナカイに全部わたしてくれました。
「ほら、サンタさんにお礼をいいなさい」
「あ、ありがとう、サンタさん!」
「……キミの願いはこれで叶ったかな? 残りの時間はゆっくりママと楽しむんだよ。ふぉっふぉっふぉっ」
サンタさんはそのあと、自力でそりを引いて森の外に行ってしまいました。
その後、子どもトナカイは初めてママと一緒に楽しいクリスマスを過ごすことができました。そして、サンタさんとクリスマスのことをすごく好きになりました。