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転生した私は聖女かもしれない  作者: 御重スミヲ
63/80

63、巫女


 やりすぎないように気を付けてはいるけれど、あれこれ好き勝手している自覚もある。

 この辺から駄目ですよというラインが見えればよいのだけど。

 そもそも神様たちに人間を特別視している様子はない。

 創造神様や、はっきり言われたことはないけれど神様に準ずるだろうドラゴンの態度を見るに、子供が(あり)んこを眺めるような感覚かと想像する。

 よほどのことをしないかぎり大丈夫だとは思うけど、(ばち)を当てられるのが恐…日頃の感謝を込めて、神様たちへのお祈りを欠かしたことはない。

 先日、豊穣の女神様に(こうべ)を垂れた稲を鉢植えにして捧げ、いくら探しても見つからない大豆がいつか見つかりますようにとお願いしたら、稲が消えて大豆が生えていた。

 ありがとうございます! そしてフォローお疲れさまです。

 たぶん創造神様はこの世界に大豆をつくり忘れたのだろう。

 こういった奇跡は自然と伝わるもので(教会が意図的にひろめている)神殿から異能バトルの申し込みがあった。

 教会に聖女がいるように神殿には巫女がいて、代々シビエラを名乗っており、そこはかとなく前世の古代地中海の匂いがする。

 帝国とは和解が成立しているので、出向くのもやぶさかではないけれど。

 なにぶん身重の体なので、会いたいなら向こうが来るしかない。

 個人的に、透視の力がどんなものか見てみたかったというのもある。

 賠償金がわりに贈られた水神の杖は神殿から出たらしく、絶対に取りもどすのだと息巻く神官がいる一方。

 帝室の失策でキャンセルされた浄化と治癒を行わせる方が先だという神官もいる。

 巫女はというと、

「…ですから、神に選ばれ力を与えられた私たちはそのご意向に従い、()しむことなくその力を振るうべきなのですよ」

「はぁ…」

 私はいま、あちらが用意してきたカードを使って巫女と神経衰弱をしている。

 先手を譲られたけど、いくら記憶力がよくても一度もめくられていないカード相手では勘に頼るしかない。

 あとは彼女の独壇場。

 見た限りカードに細工がされている様子もないし、これがいわゆる超能力か。

 人が魔法を使う時に感じられるようになった、帯電したような感覚はないから、彼女の持って生まれた力なのだろう。

 面白いものを見せてもらったお礼に、浄化と治癒くらいしてもよい。

 でも、それはあくまて戦争のせいでご破算になった、当初の予定の範囲のみ。

 しかも私の体調や気候を考慮に入れればだいぶ先、来春ということになる。

 神の名のものとに人からしぼりとって当然という相手に気遣いは無用だろう。

「神様もそうあるべきだと?」

「そうですそうです。そのようにおっしゃっています」

 宣託の巫女とも呼ばれているのだっけ。

 これはこちらの言い方がわるかった。

「あなたは神様にも同じようなことを求められているのですか」

 百合のようなと称される花の(かんばせ)がくしゃりと歪む。

「それはあまりにも不遜なおっしゃりようではありませんか?…ですが、神は寛容です。あなたのことも許されるでしょう。私たち人間は神の創造物です。親が子を愛するように、惜しみなく恵みを与えてくださるのです」

 ああ。彼女の聞いてる神の声は、彼女の心の声(妄想)か、まったくの別物だ。精霊か妖精か。

 どちらにせよ、汚れ除けの結界に反応しないから悪しきものではないのだろうけど、その精神はあまりにも幼い。

 前世そういう地域に育ったから、私にとって神様は(たた)るし対価を求めて当たり前の存在。

 彼女の言うとおりなら帝国では魔物があふれたり、疫病が流行ったりはしないはずで、私に頼る必要もないのだけど。

 ではあなたは何をしているのかと問えば、それに適した力のある人に要請しました、頼まれた方は加護持ちの義務として力を目一杯使うべきですなどと言いそう。

 こういう()()()()()()(やから)とは、まともな話し合いはできないからなぁ。

「参りました」

 卓上のゲームではね。

「貴重なお力を拝見させていただきました。私は私の務めを果たすことにいたします」

「では…よろしくお願いいたします!」

 してやったりとほころんだ顔が、私がこちらに都合のよいルートしか辿らないと知ったらどう変わるだろう。

 帝国には、帝室と同一の民族からなる第一帝民と、無血で併合された第二帝民、皇室よりさらに古い血筋の第三帝民からなる。

 教会信者は主に第二帝民だけれど、第一帝民や貴族の中にもいることはいるらしく、彼らは聖女との顔合わせを望み、私としても教会としてもそれは望むところ。

 精霊信仰が主流の第三帝民とは付かず離れず。いずれは取り込んでいくことになるだろう。

 ここはハノース城の貴賓室だけれど、私のまわりは(くだん)の枢機卿と教会の聖騎士が固めている。

 私は「よきにはからえ」を地で行けばよいのだ。

 神殿は当初、聖女の名などおくびにも出さず、すべてを巫女のひいては神殿の手柄にするつもりだった。

 巫女に異能バトルで負けて()()()浄化と治癒をしていったと帝国民に伝わればこちらはミッションコンプリート。

 時期が遅れたことで被害が広がっても、恨まれるのはあくまで自国の元皇太子だ。

 水神の杖はどうやら使用回数が決まっているようなので、せっせと治水工事にでも利用して、自壊する一歩手前で神殿にお返しする予定だ。

 一度は分解して、魔道具の研究にも役立たせてもらう。

 あちらは取説どころかトリガーとなる呪文も読めず、使いようがなかったのだから別にかまわないだろう。



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