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転生した私は聖女かもしれない  作者: 御重スミヲ
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57、縁談


 ハノース大公領はハノース大公国となり、公王陛下はまさに男盛りであらせられるので、新たな縁談も舞い込もうというもの。

 綿密な調査結果をもとに陛下とはもちろん、第一から第三公妃まで顔をつき合わせて何度も話し合いをする。

 全員一致で、とある連合王国の第一王女殿下を選んだ。

 まずご実家が海に面しているのがよい。

 海運で栄え、海外との取引もある。そして塩の一大産地。

 そしてこちらから見ると、帝国という大国の背後をつく絶好の位置にある。

 一方、ハノース大公領に独立されてしまった形の王国も、我が国を帝国への強力な防波堤として良好な関係をたもっている。

 面積をいえば、もともと所属していた王国全体を日本とした場合、ハノース大公国は関東圏くらい。

 公王陛下の血筋は尊く、領土としては豊かだけれど、国としてはいささか小さい。

 そこで遠くに親戚をつくろうという作戦だ。

 当の第一王女殿下はいたって健康で、容姿も健康美人。問題行動もない。

 年齢は二十歳と旦那様との釣り合いもよく、情報収集に長け賢く立ち回れる乳姉妹がついている。

 ご本人はいかにも箱入り、ぽやんとしているけれど性格に意地悪さがなく、乳姉妹の言うことは絶対に聞く(これ大事)

 この世界では行き遅れと言われる年齢にもかかわらず独身なのは、彼女の婚約者が身分の低い女にうつつをぬかす阿呆だったから。

 その状況下で、自身の身も心も評判も守り抜いた相手に信頼をよせるのは当然のことだ。

 ハイネというこの侍女は、自分の敬愛する女主人にこんこんと言い聞かせ、公王陛下より先に私にあいさつさせた。

 私が生徒兼講師として在籍している王立魔法学院に短期留学させるという念の入れようだ。気に入らないわけがない。

 この子(二十二歳)は絶対に役に立つ。

 私だとてライバルが増えることに何も思わないわけではない。

 でも、どうしても必要なことであれば、効果は最大限に。

 ハイネは隙あらば私を出し抜く賢さを持っているけれど、同時にその賢さが私の持つ力の大きさを冷静に測っている。

 彼女は自分の大事な主人を私の下に位置付けると決めた。

 それこそが王女殿下を確実に守れる布陣だとはいえ、よくぞ決断したものだと思う。

 かわりと言ってはなんだけど、公王太子には第五公妃の生んだ男子がなるのではないかと予測する。

 最終的に選ぶのは公王陛下だけれど。

 野心旺盛な私でも、自分の分くらいわきまえている。

 一国の王妃を無理なく務めるには、私はもともとの身分が低すぎるのだ。

 本来は私を守り、国を盛り立てるべき外戚がいないという負い目もある。

 もちろんそれ以上に聖女として聖剣の保持者として、また前世の記憶持ちとして、自国と公王陛下の役に立っている自負はあるけれど。

 この封建社会。身分の壁はいかんともしがたい。

 社交デビューをすればいやでも実感することになるだろう。

 だからといって悲観しているわけではない。

 むしろ私は叩かれると燃えるタイプだ。

 学会や教会内で地位を築くという手もある。

 権力者たちと丁々発止やりあうのも楽しいけれど、現在手掛けている調査や研究自体が面白く、ぜひ続けたいと思っている。

 幸い我が愛しの旦那様は、私のことはある程度好きにさせておいた方が良い結果を生むと理解してくれている。

 運よく授かってみれば可愛くて、親バカになる可能性も否定はできないけれど。

 個人的な経験からすると子供は親に期待されすぎても、されなさすぎてもつらい。

 我ながら両極端な例だ。

 いと尊き公王陛下と聖女および聖剣保持者だなんて、親の肩書だけでも子供にとっては相当なプレッシャーになることは確か。

 平凡に生まれついたなら子爵家くらいがちょうどよいと思うのだけど、それもまた親の勝手な決めつけなのだろう。

 願わくば我が子の器を冷静に判断し、国が欲しければ自力で建てよと叱咤できるようになりたいものだ。

 結局、旦那様も私も自分が育てられたように子を育ててしまう気がする。

 極力かかわっていきたいとは思っているけれど、立ち場がそれを許さない場合もある。

 だからハイネのように飴と鞭の使い分けが絶妙な人や、タニタ司教様のようにいい感じにゆるい人に携わってほしいのだけど。

 第五公妃とになる王女殿下とも仲良くしたい。

 正直に言うと、はち切れんばかりのお胸と心の豊かさを有しているのに、自分の武器をまったく理解していない女性をなんとなく好きなってしまったのだ。

 これだけ計算高い私をして、こんなふうに思わせるなんてすごい才能だと思う。

 口さがない者に言わせれば連合国家など小国の寄せ集めだ。

 実際はそれぞれに特色を持つ国々が、長所を認め合い欠点を補い合っている。

 いまだ発展途上とはいえ、一国の王女殿下であることにかわりはない。

 私の時のようにすぐさまというわけにはいかず、婚儀は一年後。

 建国記念式典には婚約者として招待すればよいだろう。

 それはそれとして、彼女たちはいま学院で一生懸命学んでいる。

 連合王国では魔法使いが少ないということもあるけれど。

 王女殿下にいたっては実家の王城から出るのもはじめて。見るものすべてが新鮮なのだそうだ。

 旦那様に対しては(うわさ)が先行して、少々どころかかなり(おび)えている。

「大丈夫。おやさしい方ですよ」

 なにか共通の趣味でもあればよいのだけど。

「カレエラ様は時間があったら、何をなさりたいですか?」

「お笑いにならないでくださいましね、マリアンナ様。私、泳ぎたくて泳ぎたくてしかたないのです」

 よくよく聞くとご実家の城には一部海水を引き込んであり、王族専用のプールも存在していたのだとか。

「まあ、笑ったりなどいたしませんわ。心身ともによきことと存じます。こちらでは海というわけにはまいりませんが、そうですね…」

 清流を求めて気軽に城壁の外に出られる身分でもない。

 ハノース邸の露天風呂に招いたら大はしゃぎしていた。

 下宿先が他国の王城というのもさすがだけれど。

 婚約状態にあり、さらにその相手が不在でも、カレエラ王女がここに住むのは外聞がわるい。

 だから逆に、王家に嫁ぐ他国の貴人を公爵家が預かるなどということもあり得るわけだ。

「温かいプールなんてすばらしいですわ!」

「姫様。何度も申し上げますが、これはお風呂ですよ」

 注意しているハイネも浮き浮きしている。まさに水を得た魚。

 ちなみにこちらの水着は上も下も七分丈でボーダー柄。

 泳ぎ方はまさかの犬掻きだ。

 ひとまず彼女たちには平泳ぎを教えてみる。

 あっという間にマスターしてしまった。

 あとは新たな水着を開発し、旦那様に格好のよい泳ぎ方を教えるだけだ。


 

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