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転生した私は聖女かもしれない  作者: 御重スミヲ
48/80

48、生徒会


 当学院にも生徒会は存在する。

 前生徒会長が次の生徒会長を指名し、新生徒会長が他の役員を指名する。

 選挙などないのに新旧交代時期は六月初旬。

 生徒の意見を取りまとめ、その権利を主張する前世の生徒会とは違って、一部の権力者が自分の立ち位置や役割を自覚し、貴族的社会生活の予行演習をするためにあるようなもの。

 つまり封建社会の縮図だから、新生徒会長には第二王子殿下が指名され、その彼が副会長に自分の婚約者を指名し、以下書記会計等に自身の取り巻きを指名するのは当然の流れ。…乙女ゲーム的に考えるなら。

 事実そうなった。

 私も引き込まれそうになったけれど、講師も兼任していることを理由に(てい)よく断った。

「お声掛けいただき光栄ではあるのですが、立場上、純粋に学生たちの味方をするというわけにはまいりませんので」

「うむ。その通りであるな」

 結局、第二王子殿下が議長も兼任することにしたようで、ますます議会は踊るを地で行くことになりそうだ。

 父親が高い地位にあり自身の頭もある者たちは、勧誘されても上手に逃げている。

 あのメンバーで行われる会議を議長として進行させたり、ない内容をあるように公報したり、ザルの目を埋め続ける庶務の仕事など御免被(ごめんこうむ)りたいだろう。

 以下、所信表明演説を行う場での新生徒会長のお言葉である。

「皆よく聞いてほしい。いまこの学院で大変なことが起きている。

 我が学院の生徒会副会長であり、私第二王子の婚約者であり、神聖なる聖女でもある彼女、イビダス子爵令嬢の持ち物がなくなったり、汚されたり、壊されたりしているのだ。同じ学院で学ぶ者として疑いたくはないが、悪意ある者によって行われていることは明白だ。なぜ、このようなことをするのか!

 同じ学院生として、貴族の子弟として恥ずかしくはないのか?

 いま名乗り出て彼女に謝罪するのであれば、彼女も許すと言っている。

 私自身、同じ(まな)()に集う者として、また皆を取りまとめ導く生徒会長として、貴族の子弟の模範となるべき第二王子として、その者が反省し更生するよう導き、支えていくことをここに誓おう」

 前任者の辞職にともなって副学院長の座から押し上げられた現学院長は無表情。

 もともと研究畑の方だったらしく、出世したことをよろこぶより、面倒事を押し付けられたと感じているようだ。

 個人的には哀愁のガ○ダルフとお呼びしたい。

 教授たちの目もうつろ。

 入学して二ヵ月の新入生たちもしらけている。

 大半が貴族の血筋。数少ない平民たちにしても大商会の子弟ともなれば、当然のように状況は把握しているからだ。

 どんな集団においても、そのようないやがらせはよくあること。

 もちろんする方がわるいのだけど、言って聞かせてやめる連中なら最初からしない。

 第二王子殿下はなおも声を張り上げるているけれど、台風に向かって進路を変えろと言っているも同然。

 そもそもこの問題は、イビダス子爵令嬢の身分に起因する。

 王族と婚姻を結べるのは伯爵以上の家の者と法律で決まっている。

 聖女であることを理由に特例として認められているだけだ。

 にもかかわらず彼女の結界は、昨年度の入学時から進歩していない。

 もっともこれには罠とも言える仕掛けがあったようだ。

 神様の加護によって使えるようになった魔法は、魔法陣として使用すると、その時の形で固定化されてしまうと私は見ている。

 治癒や浄化を行う時、たしかに脳裏にチラつくものがある。

 状況に合わせて回復に切り替えたり、また規模をかえたり、環境を浄化する時と精神を浄化する時では、当然その内容は違う。

 すべてに共通するのはこれまで解明された魔法文字には見られない一文字。

 形としては〆という字がいちばん近いだろうか。

 いつもそこだけが光っていない。

 先任の学院長が在任中に、私の求めに応じ見せてくださった、イビダス子爵令嬢が描いた結界の魔法陣にも確かにそれがあった。

 起動時を見ていた彼女に確認したところ、間違いなくすべての文字が輝いていたそうだ。

 なんとかこのロック機能の付いた文字(?)だけ(はず)せないものかと考えないではないけれど。

 最初の一文字と最後の一文字、そして魔法陣を魔法陣たらしめている枠線と見事につながっているので、たぶん無理。

 固定化すれば誰でも使えるようになるメリットはあるけれど。

 種類はたった一つに限定され、効果範囲も変えられない。

 明らかにデメリットの方が大きい。

 それは公王陛下はじめ、教会幹部たちも納得しているところだ。

 気付いてよかった! それだけはありがとう、イビダス子爵令嬢。

 こんな時、日頃の彼女の言動に恩義を感じていたり、味方することで得があるなら、同情する声の一つや二つ上がるはずだ。

 私も周囲の人たち同様、手助けするほどの価値を感じない。

 学業の成績もぱっとせず、容姿も整っていないわけではないが貴族としては並。

 王子妃教育の進捗(しんちょく)も思わしくなく、彼女がこぼした愚痴(ぐち)を残らず周囲に広めているのがその()()()

 先の偽聖女から引き継いだ取り巻きの、上半分は元第二王子妃候補なのだから当然だ。

 彼女たちにしてみれば能力不足でも、ちょっとしたミスでも、ウツや病気や怪我でもいい。

 イビダス子爵令嬢がこけてくれれば自分にお鉢が回ってくる…かもしれない。

 彼女たちの意志もあるけれど、実家からせっつかれているに違いない。

 聖女サマはそこのところをわかっているのかいないのか。

 わかっていてこの場で仕掛けたにしてもお粗末すぎる。

 ハンカチを握りしめて第二王子殿下の斜め後ろから、その背中にキラキラした目を向けているけれど。

 あなたの乗っているのは泥船ですよ。

 第二王子殿下は最後に「私はみんなを信じている」と()めくくった。

 非常に満足そうだ。生徒会メンバーだけが。

 それだけですめばまだよかったのだけど。

 まるで解決しないことに(ごう)()やした彼らが、強引に持ち物検査を実施しようとして、あちこちで決闘騒ぎが発生。

 私は学院長からの要請を受けて、(そく)治癒ができるようにその一つ一つの場に(ひか)えることになった。

 こんなことで貴族の子弟を死なせたりかたわにしたら大問題だから。

 この騒動によって生徒会役員全員が三日間の停学処分を受けた。前代未聞だ。

 その間に学院側は、鍵付きのロッカーを設置。

 全学院生に、自分の持ち物は自分できちんと管理するよう求めた。

 そもそも今年度の魔法陣学の授業では、すでに改良したマジックポケットの魔法陣を教えてある。

 新入生ですらその意図に気付き、そのほとんどが自衛している。

 結界が売りの聖女が何をやっているのだという話。

 婚約者同士、仲良くするのはよいことだけれど。

 せっかくちょっと見直したのに、やはり第二王子殿下は第二王子殿下だ。

 もう他国の王家のことだから口を出さなくてすむけれど、第二王子殿下と愉快な仲間たちは天然記念物のように隔離・保護した方がよいのではなかろうか。



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