35、入学式
入学式当日、新入生とその保護者、来賓の方々が学院の敷地内に入れないという珍事があった。
王族をはじめ貴族の子弟が多く通う学院は、常時守りの結界で覆われている。
基本的に部外者は立ち入り禁止だ。
しかし、この一事でもわかる通り、その結界には柔軟性が求められる。
将来の第二王子妃、新聖女の有用性をアピールするのだと、第二王子殿下とその一派、彼女自身とその実家もノリノリだったらしいのだけど。
彼女の結界はドーム型と決まっていて、小さな結界も張れるけれど、その真骨頂は大規模結界にあるらしい。
自身の魔法と魔力だけで、これほど大規模な結界を長期維持するなんて、いかな聖女でも現実的ではない。
だからこれまで学院長がしてきたように、学院内に魔法陣を設置したというわけだ。
神に与えられた加護によって描けるようになったという魔法陣。
そこに魔力を込めながら部外者は入れないように念じたというのが彼女の申し開きだった。
新入生だけど、まだ入学していない私たちは部外者。
部外者の保護者も部外者。
来賓の方々はもちろん…。
そして、彼女も新入生だ。
前日、学院内の地下室に魔法陣を設置。
意気揚々と外に出るには出たけれど。
今朝、中に入れないことが判明。
当然魔法陣に近付くことができず、結界を解くことも描きかえることもできない。
ああ。普通は描きかえるなんてできないのだった。
起動するにも、魔力を足すにも、いちいち魔法陣に触れなければならないという欠点がもろに出た。
でも、もとはといえば彼女の想像力が足りなかったことが原因だ。
神様から授かった加護、結界魔法はずいぶん融通がきかないと決めつけてしまうのは早計だろう。
幸か不幸かこの聖女、魔力量だけはあるらしい。
効力が切れるまで三日かかった。
それまで入学式はお預けだ。
それ以降はこれまで通り学院長が結界を張った。
すごい! 別の魔法の効果を帯びたまま出入りしても反発し合わないなんて。
その教えをぜひ受けたいものだ。
待つ間、急遽出された課題はレポート作成。
いちおう就学前だからか、そう難しいお題ではない。
①これまでどんな学習をしてきたか
②これからどんなことを学びたいか
③これからどのように生きたいか
深く突き詰めようとすればどこまでもいけそうだけれど。
いまここで、そんなことは求められていないだろう。
私はまず、これまで読んできた中で感銘を受けた本の題名と著者名を羅列。
学院長の名前が多いことに、別段意図はない。
自然とそうなっただけだ。
特に、魔法陣をページいっぱいに大きく載せて、子供にもわかるように具体的にその効果を解説していたものを褒めちぎっておく。
その原稿を書いたのもケイン何某ではないかな?
これから学びたいのはもちろん魔法陣。
学園長のように自分でもすぐれた魔法陣を設計できるようになりたいです、と。
そして美しく、自由に、楽しく生きたい。
本気で書くと貴婦人としていろいろ問題になるので、夫に従い慎ましく、けれど野の花のような美しさを忘れないように生きたいです…とでも書いておこう。




