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転生した私は聖女かもしれない  作者: 御重スミヲ
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26、帰路


 漂っていた光が消えれば、よけいにそうは見えないけれど、ここは言わば聖地だ。

 より強固になった汚れ除けの結界に反応するものが何もないので、気を付けながら歩いていけば娑婆(しゃば)との境界がわかるはず。

 周囲を探索したいところだけれど、日の傾きも気になる。

 私たちは帰りの道を黙々と歩いた。

「あっ」

 私がつぶやいたところで、護衛騎士が木に印をつける。

 その間に考えをまとめていたのだろう。

 馬車に乗ると大公閣下は、あの場所に教会を誘致する準備をはじめるよう執事に命じる。

 今後、いつまた神が顕現(けんげん)しないとも限らない。

 せめてある程度の整備をして、礼拝所くらいは建てたいところ。

 まず間違いなく教会は出張ってくるだろうけれど。

 なにしろ神の降り立った奇跡の地なのだから。女神たちに叩き落とされたということは無理に言わなくてもよいだろう。

 あれこれいじって大丈夫なのかと思わないでもないけれど。

 大公閣下によれば、本来教会はいわゆるパワースポットに建てられるものなので、そのノウハウは十分に蓄積されているとのこと。

 ものの本には、聖女は聖女の泉で大精霊の加護を受け、聖女の丘で勇者を癒し、その後迫害を受けて聖女の谷に身を投げたとある。

 勇者兼王子様と結婚してめでたしめでたしで終わるものよりも、よほど説得力がある。現実ってこんなものだよねと。

 それすらも魔王討伐を含めて、ある一人の少女が起こした奇跡のように書かれているけれど、それぞれ別の存在ではないかと推測することはたやすい。

 耳ざわりのよい部分だけを、子供に語って聞かせるくらいならばよいのだけど。

 突き詰めていけば、政治やら利権やら面倒でデリケートな問題にぶち当たるから、多くの著者は絵本や説話集のあとがきでひっそりと論ずるに(とど)めている。

 きわどい論調の研究書もあるにはある。

 それはさすがに刊行されたものではなくて、書き手の死後、遺族が内容もわからず処分したものが巡り巡って好事家の手に渡ったのだろう。

 本当は、このまま聖女の谷へ行きたいくらいだ。

 でも、きちんと態勢を整えて出発しなければ、目的達成どころか簡単に命を落としかねないのがこの世界の旅だ。

 その上今回は、ドラゴンをどうするかという大きな問題がある。

 閣下に忠実な騎士たちもさすがに顔色がわるい。

 それでも、私たち夫婦は()()でも行かなければならない。

 旦那様の寿命が延びれば延びただけ、私の未亡人期間が短くなるのだから。

 雄神の最後の忠告も気になる。

 やたらの者に加護を与えられては、いつ魔王になるかと気が気ではない。自分のことはひとまず置いておく。

 すでに聖別されてしまったものは仕方がないから。

 もう一人の聖女を探し出し保護するか、それが無理でも常に状態を把握(はあく)できるようにしておかなければならない。

 残り一人についてはコントロールできるものならば、当然したい。

 清らかで、でも、けして闇落ちしない。精神と生活に柔軟性のある人物。

「タニタ司教か」

「タニタ司教様がよろしいかと」

 私たちは顔を見合わせ、うなずき合った。



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