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転生した私は聖女かもしれない  作者: 御重スミヲ
24/80

24、遭遇


 そこには確かに泉があった。

 (かたわ)らには掘っ立て小屋があり、小さな畑もあって、そこを白いライオンが耕していた。

 私の話をはじめて聞く人は、きっと何を言っているのかわからないだろう。

 でも、私は事実だけを述べよう。

 ラノベに登場するような獣人はこの世界にはいない。

 魔物同様、妖精は存在するらしいけど。

 ここが誰かの…はっきり言おう…ライオンの私有地だと言うなら、我々が不法侵入をしている。

 しかし、私の隣にいる夫は大公閣下で、ここは彼の領地だ。

 二本足で立ち(くわ)を振りかぶった彼と…そう雄だ…無言で見つめ合う私たち。

 彼はなんとも形容しがたい声を上げて、小屋の中に駆け込んでいった。

 数分後、きちんと服を着込んで出てきた。

 村人Aといったコーディネートだが、姿はライオンのままだ。

 しかつめらしく咳払いをする。

「コホン…ようこそ、聖女の泉へ」

 うちの旦那様も渋い良い声をしているけれど、彼もなかなか。

 向こうがあいさつしたのに、(こた)えることなく私語をするなんてマナー違反とわかっている。

 でも、私は(ささや)くように旦那様にたずねていた。

「こちらではライオン、いえ獅子(しし)は話しますの?」

「私もついぞ聞いたことがないな」

 内心はどうであれ、冷静に答える姿が頼もしい。

「少し下がっていなさい」

「はい」

 一歩前に出る主を守ろうと、護衛たちはさらに前に出る。

 実際はこの中でいちばん強いのは大公閣下だ。その上、多くの魔法陣で守られている。

 よほどのことがない限り、髪の毛ひとすじほどの傷もつかないのだけど、パフォーマンスも大事だ。

「私はこの一帯を治めているハノース公爵である。歓迎の意を示すということは、この地の管理を貴公が行っているということで相違ないか?」

 堂々と名乗りを上げる旦那様にうっとりしていると、数歩離れた距離でライオンが不敵に笑う。

「いかにも治めているとも、この世界そのものを! 平伏せ人間ども。我こそは創造の雄神、ファルスなるぞ!」

 どちらかというと魔王のような名乗りをあげているが、たしかに雄神は人か獅子の姿で顕現(けんげん)すると言われている。

 私たちのグループはみんながみんな大公閣下を仰ぎ見る。

「どういたしましょう、閣下」

 目の前のわけのわからない自称神より、よほど信じ日頃から従っているからだ。

 閣下が頭を下げなければ、当然私たちも下げない。

「不信心者たちめ!」

 ぷりぷりしているライオンの(ひげ)が青白い光を帯びる。

 それがパリパリ音を立てているところをみると、本物だったのだろうかと不安がよぎる。

 動物が二本足で立って、私たちと同じ言葉を話している時点でふつうではないのだけど、神というにはどうにも軽くて。

 私を中心に半径十メートルのドーム状に、汚れ除けの魔法陣が発動している。

 悪意を持った者がその外から近付こうとすると弾かれる。

 では、すでに中にいた者が私たちに対して害意を抱き、攻撃しようとした場合はどうなるか。

「天ばっ、ぎゃふぅ~~~…」

 効果範囲の外に飛ばされて行った。

 そこへすかさず魔法で稲妻をぶち当てる旦那様。

 サンダーアローと唱えるのが恥ずかしいのかどうかはわからないが無詠唱。

 さすがは戦場の(たか)だ。

「な、なんと罰当たりな…ガク」

 全体的に(すす)けてはいるが死んではいないようなので、力あるものであることは確かなようだ。



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