20、魔法
謁見の締めは、私の魔力についての確認だった。
魔法についてはどんなに努力しても、水差し代わりに水を注ぎ、火種をつくり、扇風機ほどの風を起こし、野外トイレ設置に最適な穴を掘り、デスクスタンドほどの明かりを灯し、アイマスクにぴったりな闇を生じさせることしかできなかった私。
シシーのどや顔がむかつく。
くっ! いいのよ。私の中の人は、専守防衛を叩き込まれた日本人だもの。
本当はヘルフレアとかメテオストライクとか打ってみたかったけど。
へろへろのファイアーアローを打って喜んでいるシシー。
私の特異性は、魔法陣に魔力を注ぐと現れる。
特に結界系…の中の一つ。
件の汚れ除けの魔法陣では精神汚染も防ぎ、害意をもって放たれた飛び道具をも弾く。
残念ながら流矢は防げないけれど。
物理防御や毒耐性の魔法陣を併用すれば死角はなくなる。
私自身はそれらの魔法陣をヘナを使って、肌に直接描いている。
魔道具化した装飾品もよいけれど、お風呂に入っている時に襲われたらどうするの?
集中すれば魔力だけで描くこともできるけれど、日に二回もそれをするのは面倒だし魔力効率もわるい。
入れ墨も考えたけれど、いくら普段は衣服の下に隠れているとはいえ見た目の問題があるし、不必要になったり、いつか魔法陣がバージョンアップした時に困るでしょう?
ひと月に一遍なぞって乾かすくらいならば、なんとか許容範囲。
レディ・アーサーは面白がって手の甲に描かせてくださった。
ぜひ汚物が弾かれる爽快感を味わっていただきたい。
おそれ多くも国王陛下の玉膚にそんなことはできないので、用意された魔石にひたすら魔力を込める。
手持ちの魔道具にこの魔石をセットすれば、ほかの魔法陣ならふつうに、汚れ除けならば例のごとく作動する。
レディ・アーサーの方も、半日ごとに取り込み口にこれを乗せるか、ご自身で魔力を補給してふつうにご使用いただくのもよい。
弾く相手ばかりで、社交に差し障りが出ても困るから。
さすがは王家だ。見た目にも美しく上質な魔石ばかり。
小粒でもいっぱい入る。
「本当に魔力が尽きぬのだな」
感心したように陛下がおっしゃる。
けして魔力量が多いわけではなく、常時周囲から取り込んでいるだけだということはご報告申し上げてあるのだけれど。
私憧れの大魔法サンダーストームを連発できる大公閣下も、いまだこのコツをつかめていない。
いまは平和ではあるけれど。
いずれ聖女認定することも有り得ると匂わされて、私の初めての謁見は終わった。
国を無難に治めるためならば、おとぎ話ですら利用するのか。
あっぱれとしか言いようがないけれど。
あまり積極的でないのは、私が結婚してしまっているからだろう。
大公閣下を無視して私を取り込むことは、誰であってもむずかしい。
前世の歴史が証明している。
やはり聖女は政治の道具だ。
利用されるようなら、それ以上に利用しかえす力と覚悟が必要。
国王陛下の次に偉い人と結婚しておいてよかったぁ。




