18、招待状
レディ・アーサーから招待状が届いた。
それはまごうことなき王城への招き。
イミダ・デイジー・スイーシスは国王の愛妾だった。
並みの貴族たちより影響力がある。
さすがのハノース大公閣下も頭を抱えていた。
私の身分が曖昧だからだ。
王城に上がるには、それを確定させなければならない。
どこの誰ともわからない平民を非公式とはいえ、国王に謁見させるわけにはいかないのだから。
私の実父だろう男についてはすでに調べがついている。
これはレディ・アーサーからの無言のメッセージ。
某男爵家には、落馬して長く寝付いている一人息子がいる。
その容体がいよいよ思わしくないのだろう。
普段、一度に数分顔を合わせる以外は、ほとんど放っておかれているけれど、大公閣下は私にかなり甘い。
洗濯ばさみに続いて布団ばさみ、X字型の鋏や穴あけパンチをつくってくれたし、木版で罫線を刷った草木紙を大量に用意してくれた。
私と踊るためだけにワルツのステップも覚えてくれた。
「どうしたい? マリー」
「できることならば、閣下に娶っていただきとう存じます」
さすがにお茶を吹き出すのは堪えたけれど、大公閣下はひどく咽た。
「…物好きな。養女になれば王子妃すら望めるものを」
やめてください。それ鬼門です。
たとえ乙女ゲーム云々が私の妄想だとしても、王子妃候補間の争いなど御免被りたい。それに…。
「はじめてお会いした時からお慕い申し上げておりました」
上目遣いに目をウルウルさせて、唇をぺろりと舐める。
「あざとい」
「…お慕いしているのは本当です」
「知ってる」
そうやって時々少年の顔をするのだ。本当にまいってしまう。
ちなみに彼の愛称はダン。御名はダニエルス・クレイ・トリバー・ハノース。
本当はもっと長いのだけど、面倒くさいのでこの辺で。




