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転生した私は聖女かもしれない  作者: 御重スミヲ
13/80

13、突然の訪問


 本来であれば、とっくに教会に着いているはずなのだけど。

 私たちが話してる間中、馬車は表通りをゆったり巡回していた。

 話が途切れたあたりで、ちょうど教会が見えてくる。

 執事が先に降りて、手を差し出す。

 ちらっと動いた私の視線の先に気付いたらしい。

「御者がどうかしましたか?」

「時間の配分が見事だと感心しておりました」

「お褒めいただき光栄です。上から失礼いたします、レディ」

 吹きすさぶ風のようにかすれた声。

 ちょっと上げた帽子の下から現れたのは、小皺(こじわ)の目立ち始めた女の顔だ。

 でもその笑い皺がさらに彼女の魅力を増している。

 女性らしい体の凹凸は下着で矯正しているのか目立たない。

 その上、動作が機敏で、戦っても強そうだ。

 それはそうか。この少人数で行動しているのだから、腰の剣は飾りではないはず。

 私は会釈を返して、いま一度振り返る。

「そんなにあれが気に入ったか?」

「はい。あのように成長したいものです」

 答えつつ。

 実際に隣に立たれても、これほど高貴なオーラを放つ人間が、このような場所で隣にいることが信じられない。

「本当にお寄りになるのですね、閣下」

「そのためにわざわざ馬車から降りたのだ。行かなくてどうする」

 おかしそうに口元が歪む。

「まあ、そうなのですが。どうぞ、こちらです」

 ここでは閣下が客なので、先に立って案内する。

「お姉ちゃ~ん!」

 甘えん坊のどんぐり頭が転がるように寄ってくる。

 あら、困った。

「お客様ですよ。みんなでタニタ司祭様を呼んできてくれるかな?」

「うん。いいよ!」

 ちらちら私の背後を気にしながらも、素直な幼少組は手を取り合って駆けていく。

 だいぶ年上であれば、状況を理解して、それなりにあいさつができるのだけど。ちょうど畑の手入れでもしているのか。

 中途半端な年代の、しかも男子反抗期組が登場。

 同年代だからかよけいに、私の言うことは聞こうとしない。

 いまだガリ子であろうとも、この容姿ならば、手を合わせて上目遣いにお願~い!するのも一つの方法ではあるけれど。

 掃除や食事の片付け程度のことで、そこまでするのもなんだかなぁ。

 せっかくここでは、女の子たちと仲良くできているのに。

「なんだ、慰問のおじさんか」

「今日は違う人だね」

「お土産ないの?お土産…しけてんなぁ」

「これっ!」

 悪ぶるのは勝手だけれど、ちゃんと相手は選んでほしい。

「気が利かなくてすまぬな。次には必ず持ってこよう。男と男の約束だ」

 閣下の大人の対応力。しかも、男の子の好きなフレーズをちゃんと押さえていらっしゃる。

 子供にまで貴族の権威を振りかざす方でなくて、本当に良かった。

 ふつうは、首と胴が泣き分かれても文句も言えない不敬罪だから。

「約束だぞ!」

「絶対だぞ!」

「忘れたら承知しないからな!」

 まったく、人の気も知らないで。

 私は、駆け去っていく彼らの後ろ姿をにらむことしかできない。

 でも、それでは駄目なのだ。

 たとえぼろぼろのフォローでもしなくては。それができるのは、ここには私しかいなのだから。

 この場合、謝るよりお礼を言う方がよろこばれる気がする。

「適切な対応をありがとうございます、閣下」

「ふふん。私だとて少年だったのだからな」

「悪ガキでいらっしゃいました」

「見てきたように言うな。お前はまだ生まれていなかったであろうが」

「祖父によく聞かせられまして」

「これだから敵わぬのだ、お前の一族には…」

 子供たちに手を引かれ、しぶしぶ歩いてきていたタニタ司祭様だが。

 窓越しにちらとこちらを認めると、子供たちを急かして小走りに駆けてくる。

 あの無精な人が。めずらしいこともあるものだ。

 まあ、この方のたたずまいを見ればね。

「お迎えもせず申し訳ございません、閣下」

「いや。先触れもなく急に来たのだ、気にするな」

 おっと、顔見知りでしたか。

 今度は私がタニタ司祭様ににらまれる番だ。

 いや、どう考えてもこれ以上早く知らせようがなかったでしょう?



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