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転生した私は聖女かもしれない  作者: 御重スミヲ
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1、転生前夜


 私の人生は順風満帆だった。

 地方の出身ではあるけれど、実家は旧家で土地持ち。

 その上、父がけして小さくない食品加工会社を経営していた。

 積極的に地元民を雇い入れていたから、同じ町の住人でうちの恩恵に与かっていない人はいないと言われるくらい。

 ここでは私は姫様だ。

 都内のお嬢様大学に進学してみれば、上には上がいると理解せざるを得なかったけど。

 若さもあれば、美貌も、プライドもある。

 負けてたまるか。

 自分磨きに精を出した。

 レベルを上げれば、どこかでその成果を披露したくなる。

 本当のことを言えば、合コンなんて好きじゃない。

 ただ、ライバルたちに勝った顔をされるのは癪だ。

 そんな集まりに顔を出すのは、良い家の出ではあるけれど底の浅い男たち。

 そんなのにちやほやされても全然うれしくなかった。

 なんだかなぁ、なんて内心不満に思っていたけど。

 あとから思えば、それも十分幸せだった。

 二十歳の時に父の会社が左前。

 地元に戻って見合いをしろと言われた。

 私は当然のように反発。

 同級生に知られたら恥ずかしいなんて、馬鹿な理由でいままでの生活を維持しようとした。

 馬鹿高い学費を稼ぐために、水商売の道へ。

 最初の一年は住居のランクを落さざるを得なくて、とても悔しかったのを覚えている。

 それなりにマナーは仕込まれていたし、頭もそう悪くはないと自分では思っている。

 冷血顔ですましてたって客は付かないとか、さんざん陰口をたたかれたけれど。

 太い客が一人でも付けば、そんなのは小鳥の囀りにしか聞こえない。

 まったくこんな不景気にと思うでしょう?

 でも、ある所にはあって、使う人は使っているのがお金。

 大半は自分のお金ではないけれど。

 商売女のゴールは、自分の店を持つか、玉の輿。

 私は後者だ。

 これからも手を抜くつもりはないけれど、年をとれば嫌でも容貌は衰える。

 話術や気遣いだけで客を引き留めるには並大抵の努力では足りないし、私はもともと媚びるのが嫌いだ。

 それでよくこの世界に入ったものだと、自分でも思う。

 当然、水商売を続ける気なんてなかった。

 私が捕まえたのは、自腹を切って通ってくれていた人。

 正直、お客としてのランクは下の方。

 でも、母親にたたき込まれた、結婚するなら真面目な人って価値観が抜けなかったのだ。

 いわゆる高級官僚。まだ下っ端で扱き使われてるって、よくこぼしてた。

 顔は中の下。でも背は高くて、エリート。

 話は退屈だったけど、この人なら浮気なんかしないだろうなって安心感はあった。

 なのに、人ってわからないものだ。

 それとも、私の見る目がなかっただけ?

 彼は、仕事でやっていはいけないことをしたらしい。

 責任取って。ある朝、首をくくった。

 馬鹿野郎。

 世の中にはもっとひどいことをして、のうのうと生きてる連中がたくさんいるのに。

 やるなら死ぬな、死ぬならやるな!

 葬式の席で、義母になるはずだった人に罵られた。

 私のせいだって。私が下げマンなんだって…。

 そんことを言われて黙っている私ではない。

 水商売をしているってだけで、はじめから彼女は私が気に食わなかったのだ。

 おう、やってやるわ。

 不正をしたのはあんたの息子でしょう?

 そりゃ、高級クラブの会員になるにはそれなりの金額が必要だけど、高級官僚がどれだけ稼いでるって。

 だいたい、私、彼には大して貢がせてないから。

 婚約前に送られたのは、バックとブレスレットくらい。

 婚前旅行で泊まったのも、熱海のそこそこの旅館だった。

 それを張り上げるわけではないのによく通ると、クラブのママに褒められ声でたんたんとあげつらった上で。

 正式に婚約の書類を取り交わしていましたよねと、きっちり違約金に加えて、名誉棄損の慰謝料を請求してやった。

 その場限りの啖呵(たんか)じゃ済まさず、後日弁護士を立てて、(むし)りとれるだけ(むし)りとってやった。

 彼を亡くした八つ当たりではあるけれど。

 子を亡くした親にそこまでした私は、確かに人でなしだ。

 つんとすまして(かすみ)を食べて生きてますって顔をしていた私は、どこへ行ってしまったのだろう。

 どうやら私は、それ以上生きたいとは思っていなかったようだ。

 義母予定だった女の呼び出しに応じ、のこのこと出かけて行って。

 あきらかに怪しい紅茶を、にっこり笑って飲み干してやったのだから。


お読みいただきありがとうございます!

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