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初心者マークの勇者  作者: 真ん中 ふう
10/10

旅の始まりは、苦難の始まり編(9)

10「オレのアイテム」


時空間管理人に救助され、良太は村の診療所に運ばれた。

モルフのブランケットに、回復魔法が掛かっていたお陰で、良太の体に怪我はなかった。

ただ、牛鬼の体内から生還するために、かなりの緊張が掛かった事や、精神力を疲労した事により、良太は丸1日、眠り続けた。

次に良太が目を覚ましたのは、2日目の朝だった。

そして、良太の隣のベットでは、エイルが眠っていた。


「エイル。大丈夫かな。」

2日目になっても、目を覚まさないエイルを見て、良太は心配になった。

「医者も命に別状はないと言っていたですじゃ。」

「そうだけど…。」

「エイルの中には、もう一人の人間が存在しています。山での戦闘で、エイルとあの男、ライオンの存在が逆転していました。」

ユーリは、牛鬼との戦いの最中に現れた男の存在と、戦闘行為が、小さなエイルの体と心に大きな負担を与え、体を休めるために、眠り込んでいると、分析していた。

「それに、ライオンが姿を消した理由も、よく分からないままだ。」

時空間管理人が、良太を発見した時には、すでにライオンの姿はなく、エイルがその場に倒れていた。

「何がきっかけで、入れ替わるのか…エイルにはまだまだ、不思議がいっぱいですわ。」

「俺は、ライオンが言っていた事の意味が、エイルの秘密を解く鍵なんじゃないかと思うけど…。」

良太が腕を組み、考え出すと、モルフが言った。

「良太殿、今は難しい事を考えるのは、やめるですじゃ。体をしっかりと休める事に集中するですじゃ。」

「…そうだね。」

良太は牛鬼の事で、モルフに心配を掛けてばかりな自分を反省していた。

今は、モルフの言うように、自分の回復が先だ。

体は大丈夫だが、早く体力をつけたい。


「ユーリさん、ずっと空から僕達を探してくれていたんですね。心配掛けて、すみませんでした。」

「いいえ、私は…結局お役には立てませんでしたわ。…例の魔法士にも、逃げられてしまいましたし…。」

ユーリは下を向いてしまった。

牛鬼のバリアが発現した時に出る、魔法士の熱源を元に、ユーリは居場所を見つけたはずだった。

しかし、ユーリがたどり着く前に、魔法士はその場から消えていた。

「でも、牛鬼は倒せた。村は守られたさ。」

時空間管理人が言う。

そして、続けた。

「ライオンが牛鬼を斬れたのも、魔法士が居なくなり、バリアが張られなかったお陰かもな。もし、ユーリさんが魔法士を追いかけなかったら、バリアは消えず、苦戦を強いられたかもしれない。そう考えたら、逃がしたとしても、結果オーライだ。」

時空間管理人のその言葉に、良太も頷いた。

「…ありがとう…ございます。」

ユーリの顔に、少しだけ笑顔が戻った。

「しかし、お前、よく牛鬼に潰されなかったな。」

時空間管理人は良太に言った。

「オレ、牛鬼の体内に居たみたいで…。」

「体内?」

良太は頷き、続けた。

「たぶん、牛鬼の体はだいぶ劣化していたんだと思います。」

「牛鬼の腹の部分が柔らかくなってたって事か?」

「そう考えると、オレが牛鬼の体内にいた事に、納得出来るんです。」

「じゃあ、どうやって体内から出てこれたんだ?」

「拳銃です。」

良太はベットの脇に置いてあった、拳銃を見た。

「牛鬼の体内から、上に向けて、拳銃を撃ちました。」

そう言われて、時空間管理人は、突然牛鬼から、ドンッと言う音が聞こえてきた事や、その後に牛鬼の頭から、泥が吹き出してきた事を思い出した。

「時空間管理人さん。あの時、オレに拳銃を持たせてくれて、ありがとうございました。この拳銃には、たくさん助けられました。」

良太は拳銃を両手で持ち、時空間管理人に差し出した。

その拳銃を時空間管理人は、少しの間、見つめていた。

そして、何か考え込んでいるようだったが、「そうか。」と言って、良太から拳銃を受け取った。


「ん~。」

そんな小さな声が聞こえた。

それは、エイルのベットからだった。




「エイル?ご飯食べるよ?」

良太が話し掛けてもエイルは、ぼーとしている。

言葉も発っさない。

しかし、こちらから言う事は分かるようで、ちゃんとテーブルにつき、ご飯を食べる。


エイルが目覚めてから、3日が経った。


良太は、すっかり体力を取り戻し、ステーキハウスでのバイトを始めていた。

お金を貯める為だ。

ランチが終わり、ステーキハウスも休憩時間になった頃、時空間管理人が顔を出しに来た。

「あの子はどうだ?」

開口一番、時空間管理人が聞いてきたのは、エイルの事だった。

「まだぼーとしてます。でも、少しずつ喋るようになってきました。」

目覚めてから、何日間かは声も出さず、ぼーとしていることが多かったエイルだが、最近は少しずつ、会話をし、簡単な手伝いをするようになっていた。

「なんだか、寝起きの悪い子供を徐々に起こしている感じです。」

「…そうか。」

「どうしたんですか?」

「お前、あの子をどうするんだ?」

「どうって…。」

良太はテーブルを拭いているエイルを見た。

良太の視線に気付いて、まだ少し目が覚めきれない感じのエイルが、微笑んだ。

「できれば、オレは、エイルを一緒に連れていきたいと思ってます。」

「…そうか。」

意外にも、時空間管理人は良太の発言に、何も言わなかった。

まだエイルには謎が多い。

そんな奴を連れて大丈夫かと、良太は反対されるかと思っていた。

「お前の事は、ちゃんと認識出来ているようだな。」

「オレの事だけじゃなくて、モルフの事も、ユーリさんの事もちゃんと分かってますよ。記憶喪失とかではないみたいで。ただほんとに、長い時間掛けて、目が覚めていってる感じなんです。」

「寝起きが相当悪いんだな。」

「そんな感じです。」

そんな冗談を言いながら、二人は笑い合った。


ディナーも終わり、お店を片付け終わると、良太は時空間管理人の事務所に向かった。

モルフとエイルは、お店で留守番だ。

「ユーリさん、お願いします。」

「はい。おまかせ下さい。」

そう言うとユーリは頭の中で、パソコンのキーボードをイメージ。

すると、白色のキラキラとした光で作られた、キーボードが現れた。

ユーリはそこに指を走らせる。

すると、今度は目の前の画面に、白い光で作られたコンドルの羽が現れた。

ユーリがキーボードを叩くと、その白い光の羽は、良太とユーリ、それぞれの背中に装着。

二人はその羽を羽ばたかせて、山を越え、時空間管理人の事務所に向かった。


「悪いな、こんな時間に。」

事務所のドアを開けると、時空間管理人はそう言って、二人を中に入れた。

時空間管理人は、昼間にステーキハウスに赴いた際、良太に仕事が終わったら、事務所に来て欲しいと伝えていたのだ。

「実は、お前に謝りたいことがあってな…。」

良太とユーリが椅子に座るなり、時空間管理人が言った。

「謝りたいこと?」

「エイルの事だ。」

そう言うと、時空間管理人は、目の前の操作パネルに指を走らせた。

「これだ。」

時空間管理人が画面を指す。

そこには、このエリアに入る、ユーリの姿が映っていた。

ちょうど、自動改札を通っている所で、ストップされている。

「私が…どうかしましたか?」

急に自分の映像を出されたユーリは戸惑った。

「いや、ここなんだ。」

時空間管理人は、ボタンを押し、画面を拡大。

それは、ユーリが自動改札を抜ける直前の映像で、拡大されたのは、ユーリの後ろ。

「あっ!」

その映像を見て、良太とユーリは同時に声をあげた。

「エイル!」

ユーリの後ろを拡大した映像には、ユーリの後ろを、ぼーとしたまま、通るエイルの姿が映っていた。

「すまなかった。」

時空間管理人は、良太に頭を下げた。

「エイルは、ちゃんとこのゲートを通っていたんだ。防犯カメラを確認して、それが分かった。」

「これって、ユーリさんと入ったってことですか?」

良太はユーリを見た。

ユーリは慌てて両手を振った。

「いえ、私は一人でここに来ましたわ。でもまさか、後ろにエイルがいたなんて、気付きませんでした。」

「エイルはまだ子供だから、通行手形をゲートに通さなくても、前の人にくっつくようにすれば、入れたんだ。」

確かに映像では、ユーリの真後ろにいる。

「しかも、この時のエイルの顔。今のぼーとしてる感じに似てるだろ?」

良太は画面に近づいた。

「…確かに。」

「ライオンが牛鬼を倒したって事を考えると、エイルと魔法士は関係ないのかもしれないと思ったんだ。でもじゃあ、どうやってこのエリアに入ったのか…通行手形の履歴だけじゃなく、入り口の防犯カメラを確認したら、これが出てきてな。…こいつの表情も今の感じと似てるし、寝ぼけた状態で、通行手形をかざさず、通ったんだろうな。」

「しかも、声も出さないし、私は一人だと思い込んでるし、まさか、後ろに誰かがいるなんて、気付きませんわ。」

良太は事務所の窓から改札を見た。

「それに、エイルは小さいから、通っても窓からは見えないのか。」

「良太…エイルを疑って、悪かった。」

時空間管理人は、もう一度頭を下げた。

「良かった。」

良太は安堵した。

「時空間管理人さん、エイルの疑いを晴らしてくれて、ありがとうございます。」

「え?」

そんな良太に、時空間管理人は驚く。

あんなに強く疑ってしまった自分に、お礼を言うなんて…。

「オレ、約束したんです。エイルの疑いを晴らすって。オレは何もできなかったけど、時空間管理人さんがエイルの事をちゃんと調べてくれて、ほんとに、良かった。」

良太は目を潤ませた。

しかし、時空間管理人に向き直って、笑顔でこういった。

「でも、ちゃんとエイルに謝ってくださいね。」

「ああ。そうだな。」

時空間管理人も、微笑みながら、約束してくれた。


次の日の朝。

バタバタと足音を立てて、ステーキハウスの休憩室にエイルが入ってきた。

「良太!」

エイルは、まだ寝ている良太の上にダイブ。

「うぇっ!」

勢いよくお腹に乗られて、良太はうめいた。

エイルは良太の上で、にこにこしている。

「あれ?エイル、なんかいつも通りになってない?」

昨日まで寝ぼけた様に過ごしていたエイルとは、全然違う。

「何言ってるの?良太?ねぇねぇ、早く起きて!朝ごはんだよ。」

エイルはそう言うと、またバタバタと足音を立てながら、部屋を出ていった。


良太がお店に顔を出すと、モルフが朝ごはんをテーブルに並べていた。

最近の良太達は、お店が開くまでは、お店を家代わりにしている。

そして、調理係りは手先が器用なモルフの仕事になっていた。

エイルは並べられたご飯を見ながら、モルフを急かしている。

すべての食事が並ぶと、三人で朝食を食べ始めた。

「なぁモルフ。なんかエイル、いつもの感じに戻ってないか?」

良太は小声でモルフに言った。

「そうなんですじゃ。今朝方、私もびっくりしましたじゃ。」

「やっと完全に、目が覚めたのかな?」

良太が首を傾げると、エイルが口いっぱいにパンを頬張りながら、笑顔を返してくる。

「やっぱり、いつものエイルだ。」

「なひが?」

エイルは口いっぱいにパンを入れすぎて、うまく喋れない。

そんな姿が、なんだか懐かしくて、良太もモルフも笑ってしまった。

「もう!何がおかしいの?」

エイルは、急いでパンをお腹に納めて、二人を見た。

「いや、何でもないよ。」

良太は笑いながら、答えた。

「もう~。」

少しむくれながら、でも気を取り直して、エイルは食事を頬張った。

(これだ。これがいつもの、オレ達だ、)

良太は実感した。

いつの間にか、良太達は三人で居ることが当たり前になっていた。

お互い、声を掛け合って、心配もしあって、そんな姿が日常になっていたのだ。

良太はモルフを見た。

モルフは良太の意図が分かったのか、頷いた。

だから、良太はエイルに言った。

「一緒に旅をしないか?」


牛鬼の村に滞在して、1ヵ月が過ぎた。

良太は、村の「武器専門店」に来ていた。

そこは骨董品店のような雰囲気のあるお店で、時空間管理人が教えてくれた場所だった。


良太は、モルフとエイルと三人で旅をすることが決まった事を、時空間管理人に報告に行った。

その時に、時空間管理人から言われた。

「お前、アイテムは決まったのか?」

「アイテム?」

「武器だよ。武器。」

そう言われて、良太は自分の両手を見た。

(そういえば、考えた事、なかったな。)

でも、牛鬼との戦いを見て、経験して、身を守れる様にならなくてはいけないと実感していた。

しかし、何を持てば良いか分からない。

「お前、接近戦はまだ難しそうだし、間合いの取れる、拳銃を持ったらどうだ?」

時空間管理人のその言葉に、良太は納得できた。

(確かに、オレにはライオンのような近距離での戦いはまだ、無理だ)

拳銃なら、時空間管理人に借りて一度だが使っている。

「あと、お前は体力か無さすぎる。それに、逃げ足が遅い。」

「…はい」

良太は返す言葉がなかった。

「だから、アイテムが決まったら、俺が特訓してやる。」

時空間管理人はニヤリと笑った。


良太は目の前に並ぶ、武器の数々を端から順番に見ていた。

これが良太が生きていた世界なら、こんな店は捕まっているだろう。

しかし、良太はなぜかワクワクしていた。

ステーキハウスのバイトで貯めたお金で、自分のアイテムを探す。

「お客様、何をお探しで?」

店主が、良太に声を掛けてきた。

「拳銃が欲しくて。」

「それなら、こちらにありますよ。」

店主は、良太を拳銃が並ぶ棚の前に連れてきた。

ずらりと並ぶ、いろんなサイズと形の拳銃。

店主はそれぞれの拳銃を手に取り、良太に説明してくれた。

しかし、良太が一番気になったのは、説明されなかった、シルバーの本体にゴールドの(つた)が描かれた拳銃だった。

(つた)の模様は、本体に巻かれるように描かれている。

「それは、有名な職人が、人生の最後に作った品物です。魔法や術などにも対応しています。ですが、力が無いのにこの拳銃を持っても、ただの拳銃としてしか使えません。宝の持ち腐れになりますよ。」

店主は、良太にはもったいないと言いたいのだろう。

「高いんですか?」

「500万メリーです。」

その金額に良太は目を見開く。

良太がこの1ヵ月のバイト代を全部つぎ込んでも、全く足りない。

しかし良太はその拳銃以外、気に入るものがなかった。

それくらい、その拳銃に魅了されてしまった。

「あの…分割払いでも…?」

良太は恐る恐る、聞いてみた。

すると、店主は苦い顔をしたが、「仕方ありませんね。特別ですよ。」と言って売ってくれた。

「ほんとですか?!ありがとうございます!」

深々と頭を下げる良太に、店主は言った。

「毎月、あなたが得た金額の3割りを自動引き落としで、頂きますよ。」

良太は契約書にサインを書いた。

(オレのアイテム)

良太は丁寧に拳銃をホルダーに入れた。


良太が店を去ってから、店主はある人物に電話を掛けた。

「あなたが言うように、彼の欲しい物を渡しましたよ。でも、使いこなせますかね?あなたのお父上が作られた、最高傑作を。」

すると、電話の相手が答えた。

「あれを選んだのか?俺が使いこなせなかった、<山紫水明(あいつ)>を。」


良太が店に戻ると、ユーリが来ていた。

背中には、小さなリュックを背負って。

「ユーリさん、行くんですか?」

「ええ。私は先に進まなければ行けないので。」

ユーリは良太達より早く、この村を出る決意をした。

「いろいろと、ありがとうございました。」

良太はユーリに頭を下げた。

「少しでも、お役に立てたなら、良かったですわ。」

そう言って、ユーリは微笑んだ。

「実は出る前に、ひとつだけ気になっていたことがありまして、伺いました。」

「気になる事?何ですか?」

「泥の中から、良太さんが見つかった時に体に巻いていた、ブランケットですわ。良ければ、あのブランケットを見せて頂きたくて。」

そう言われて、良太はユーリを店の休憩室に案内した。

「これです。」

良太はブランケットを広げて見せた。

「これは、モルフの手作りなんです。」

「モルフさんの?すごいですわ!」

ユーリは手を叩いて、誉めてくれた。

そこにモルフがひょっこり、顔を出した。

「ユーリ殿、ブランケットがどうかなさいましたかな?」

「モルフさん、このブランケットには、回復魔法が掛かっていますね?」

「よく、お分かりで。」

モルフは嬉しそうに頷いた。

「気を失うほどの衝撃を受けながら、発見された良太さんの顔も体も、傷一つありませんでしたから、これは、あの賢者のみが使える回復魔法だと分かりました。」

ユーリの観察眼に、モルフは驚きながらも、少し申し訳なさそうに説明する。

「私が唯一、使えた魔法ですじゃ。このブランケットを一針一針、温められた私の手で縫いましたじゃ。私の回復魔法は、私の手のひらが温まっている時に、発動していたようで。今はまた、使えなくなってしまったのですじゃ。」

モルフは、回復魔法が使える、からくりは分かったのだが、それを安定させて使うことが出来ないでいた。

「賢者のみが使える魔法ですもの。難しくて当然ですわ。」

魔法を操る難しさは、ユーリにも分かる。

「私、回復魔法が使えるのが、羨ましくて。私達、魔法士は回復魔法を使えません。誰かの傷を癒せるなんて、ほんとに素敵な魔法ですわ。私はもっと魔法士の魔法の可能性を広げられたら良いのにと思っています。」

ユーリは感慨深げに、ブランケットを見つめた。

「ユーリさんは、魔法が好きなんですね。」

「好きなだけでは、ダメなんですが…立派な魔法士になりたいと思っています。」

「ユーリ殿なら、きっと成れますじゃ。」

「オレも、そう思います。」

良太は力強く、答えた。

「ありがとうございます。それで…もし良かったら、私の魔法もそのブランケットの一部にして頂けませんか?」

ユーリの提案に、良太とモルフは顔を見合わせた。

「そのブランケットを良太さんの体を常に包む、ポンチョにしてみたいんです。」

「なるほど!ユーリ殿の魔法と回復魔法の融合ですな!」

モルフはポンと手を叩いた。

「ユーリさん、是非、お願いします。」

良太はユーリの、提案を快く引き受けた。


ユーリは集中して、頭の中にキーボードを思い浮かべる。

すると、光で作られたキーボードが現れた。

そのキーボードに指を走らせる。

画面には、ブランケットを分析した結果が表示される。

その画面を縮小して、別の画面を開く。

今度は、ポンチョの分析結果が現れる。

ユーリはブランケットとポンチョの融合を、画面上で行った。

二つの座標が共通点を見つけ、合わさっていく。

そして、最後にキーをタンッと強く叩いた。

すると、ブランケットが白い光に包まれた。

良太は目の前で煌めく、ブランケットを見つめた。

それは、光の中で形を変え、色を変え、良太の体を包み込んだ。

ユーリが画面に手を伸ばすと、ブランケットが最後の光を放ち、新しい姿を現した。


「すごい。ポンチョに変わった。」


ブランケットは、良太の体全体を隠す、ポンチョに変わっていた。

「なんだか、西部劇に出てくる人みたいだね。」

「そうかも知れませんわね。」

良太の発想に、ユーリはクスクスと笑った。

「よく似合っておりますじゃ。」

モルフは自分が作ったブランケットが、カッコいいポンチョに変わって、嬉しそうだ。

「良太~!」

今度はエイルが元気よく、部屋に入ってきた。

そして、良太のポンチョをみるなり、大興奮。

「何これ~カッコいい!」

エイルは良太の周りをくるくる周りながら、はしゃいでいる。

「エイル。あなたは、良太さんと一緒に行くのでしょう?」

ユーリはエイルと目線を合わせて言った。

「うん!」

「あなたは、良太さんと一緒にいるのが正解な気がしますわ。」

「うん!」

エイルはまた、元気よく答えた。

「それじゃあ、良太さん、モルフさん、またどこかで会いましょうね。」

ユーリは二人に笑顔でそう言うと、ステーキハウスを後にした。

良太とモルフ、エイルは、ユーリが進む方向を見えなくなるまで、見ていた。


そして、ユーリが牛鬼の村を去ってから、2ヵ月後、良太、モルフ、エイルの三人は、新たな旅路に進むこととなる…。

読んで頂き、ありがとうございました。


次回も是非、ご覧下さい。


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