第四話 奪命の覚醒
依頼はウルフの討伐。
原点種であるがゆえ、弱い。とはいえ、群れればスライムだって災害になるのだ。粘液災というスライムの災害があるほどだそう。
「うわー、めっちゃいるじゃん……。え? これって本当にFの依頼?」
その数百オーバーの超巨大な群れであった。
と、そんな俺の後ろから。
「ああ、君が逃走を抑えてくれる人だね。よろしく。僕はフロエ」
んん? あ、つまり、俺は討伐依頼の内容が完全な殲滅だけと思い込んでいたのか……。
俺は逃走兵、逃走獣の始末をすればいいのだそう。
「楽ですねー」
「ん? 結構大変だと思うけど……」
「なんとかしてみせますよ」
「はは、そりゃあ頼もしい。そうだ、向こうでパーティーのみんなで食事をしているんだ。君もしていくかい? 最後の晩餐になるかもしれないよ?」
「冗談が苦手なようで……」
「よく言われるよ」
「僕は好きですけどね、そういうの」
ありがとう、と彼は苦笑して、歩いて行った。
その後に俺も付いていく。
「えっと、鬼灯稀有と申します。現在レベル26です」
「うん、改めてよろしくね。僕はフロエ=セリアレル」
「フィア=ホールドです」
「ガイモンだ。よろしくな」
「シアです。よろしくね!」
おしとやかで多少苦労をしていそうなフィアさん、そのフィアさんを困らせていそうなガイモンさん、それをなだめてそうなシアさん。それを静観するフロエさん、といったところだろうか?
結論から言えば、仲が良さそうだ。羨ましい。それに比べて、あいつらは……。特に国王……。
「そういえば、セリアレルって貴族じゃないんですか?」
「お、知っているのかい? 博識だね。といっても男爵家だよ。底辺底辺」
「僕からすれば、雲の上ですよ」
「そうかい」
食事を終えた後、俺は気になったことを聞いた。
渋ることも、秘密とも言わず、率直に答えてくれた。答えてくれないと思って、損した気分だ。
§
俺はただ唯一の出口となるこの場所で、逃走してきた手負いのウルフを殺す。
ただそれだけだそうだ。暇だが、きっちりと注意していなければならない。
ステータスの最終確認をするか……。
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名前:鬼灯稀有 年齢:17 職業:破壊者デストロイヤー
Lv.26 SP・200
HP・1200 MP・670
STR・120 ATK・120
VIT・300 DEF・250
AGI・130 AVD・78%
INT・120 RES・240
DEX・120 CRI・45% 〔スキルを確認する ↓〕
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スキルの方はもう少しで奪命剣が解放されそうで、魔剣顕現がかなり扱えるようになった頃だ。エラースキル=アンノウンはよくわからないままだが、そんなものだった。
ウルフ、それも手負いなら一発で終わるといっていた。
そして、その通りになった。
逃げてきたウルフを自前の木剣で引っ叩いていく。それだけでキャウン、ヒャイン、と叫んで死んでいく。
犬っぽい声なので、少し罪悪感が湧いてくる……。
右から一匹と左から二匹。
さて、それじゃ、一匹の右から潰すか。
前世界からの木剣、これがなかなかに有能なのだ。
威力こそ低いが(木の剣だし)、汎用性に長ける。魔法の使用も可能、緊急時は物理。修繕の材料は大量にある。これほど強い武器ってないんじゃないかな?
なんかよくわからんが、武器を買う金もないし、それに意外と質が良さそうだし、これを使っている。
元が弱いからか、それとも手負いだからか、実は俺のステータスは秘匿されているのか、どれかかは定かではないが、とりあえずこの剣が俺の潜在能力、ポテンシャルを十二分に発揮しているということにしておこう。
そんな頃、
『スキル【奪命剣】の最終解放条件、「奪命」を達成しました。【奪命剣Lv.1】を取得しました』
気付かぬうちに条件を達成コースを走っていたようだ。
てか、条件が『奪命』って……。しかも、敵ではなく、逃げたり、戦意喪失したものに限るとか、どんだけ残酷なんだよ……。
んん? なんだこの記憶?
それになんか動きやすくなったな……。
ま、いっか。
とりあえず、こいつらを始末し切るか……。
依頼:残党・逃走獣の殲滅
達成。