第三話 依頼受注
もう少しまとめてもいいんでしょうか?
サーシャ様と別れて少しした頃、ようやく落ち着いた時間が手に入った。
人騒動あったためか、時間感覚が早くなっていたみたいだ。もう冒険者カードはできている頃だろう。
「あ、稀有さんですか? ちょうど出来上がったところですよ」
にこやかな笑みを浮かべて、差し出してくる。
それを受け取ると同時に、俺の体から魔力が多少抜ける感覚がした。
「…………っ」
「冒険者カードは個人の魔力波長を捉えて、偽造できないようにしているの。不意を突かれて登録されても、この世界に同質の魔力を宿したカードを作ることはできないの。神様が作った、って言うのは聖教会の言い分だから、多分関係ないと思うよ」
そういえば、こっちにくる時、神にあわなかったな。
なら、神はいないのか? それとも関与しないだけで、見守って入るのか? 俺たちに存在を知られないよう、静かに手助けをしてくれていたのか? どっちにせよ、俺には関係のない話だ。
今は、冒険者として活動し、日銭を稼がなくては……。
「早速ですが、依頼ってここで受けれるんですか?」
「ええ。中に入るのが嫌だと言う人にむけて、できるようになっていますよ。基本的に中に入るなら、C-初になってからがいいと思います」
等級は二種類あり、ランクと階級で、F-初から始まり、S-特まで。初、四、三、二、一、特と言う階級で、ランクでも明確な区分があるそうだ。
一昔前までは、実力を測って、それに見合う等級とランクを得られたが、今ではそれがなくなってしまったようだ。どうやら、ドーピングやら一回限定スキルなどの、即席でありながら、短時間しか効果のないスキル等でドーピングを図る人が少し増えてしまい、それらの見破りが面倒な上、見逃すと余計な死者を出すので、撤回したのだそう。
つまり、俺は今、F-初になるそうだ。S-特の上は無いそうで、そこからは序列化されていくらしい。
序列化の拒否権も当然あり、拒否さえしておけば、実力がどの程度か知られずに、最高ランクとだけ知られるそうだ。まあ、弱くないし強くもない、的なポジションと思われるらしい。ただ、自分らからしたら、強い、にあたるのだろうが……。
F-初は、たった一つでも依頼をクリアすれば、F-四に昇格できるそうだ。
そこから先は、数ではなく、その依頼で手に入る、冒険者ランクの経験値、みたいなものを集めるのだそう。依頼達成をカードが確認すれば、その場で達成。ギルドにもそれが伝わり、書類の方でも達成となる、ランクの方は生きているとも仮称できるカードが勝手に統計してくれる。
B-初以上になると、遠出の機会も増えるため、カードの方からも依頼を受けることができるようになるらしい。
ただ、他に依頼を受けている人がいるかいないかの確認のために、少し時間がとられるらしい。
というわけで、早速依頼を探し始めた。
Fランクだと、採集メインの依頼が多いが、別に討伐系も存在しており、小型魔獣や低級妖魔の討伐依頼なら受けることができる。死んでも自己責任なので、ギルドとしては痛くも痒くもないそうだ。
ただ、稀に起こるスタンピードやレイドに対しては、全冒険者がその場で召集されるそうだ。
レイドとは、すなわち、天災や神災レベルの、最強にして最凶の化物のことだ。詳しくは教えてもらえなかったが、きっと、昔に倒したあの少女のことも、そうなのだろう。
『依頼の発生を確認、直ちに情報の取得を実行します……。……。成功。脳内マップスキルを依頼受注中のみの設定で一時付与します。続いて、脳内マップに情報を写します……。……。成功』
受付嬢・ウフィーレアには聞こえない、しかし、彼には確かに聞こえた声。
それはシステムと呼ばれる、一種の神様。滅多に姿を現さないことで有名だ。第一、声だけでなんでもできてしまう、一種の言霊なのだ。しかし、その実態は本当の意味で不明。言霊とは人間が断定したにすぎない謎種族なのだ。
「お、ここに行けばいいのか?」
「ああ、スキル獲得をしたんですね。良かったですね!」
ウフィーレアが自分のことのように喜んでいる。
人の成長を見るのが好きなタイプかもしれない。
「がんばってきます」
「気をつけて〜!」
さじ投げてぇぇー。