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第一話 王国に捨てられました。

 一年、という聞けば短く、感じれば長い時が過ぎた。

勇者に選ばれたのは、同級生(しかいない。例外二人)の杉山という男子であった。なんで勇者は女子から出ないんだろう、と異世界のシステムに疑問を感じた今日この頃、俺は自分の『ステータス上がらん件』に確信を持ち、最近では今みたいに王女様と話すというのが日課となっている。

 

 王位継承権第二位第二王女・サーシャ=N=レイガス。

この世界では、名前、苗字の順番が主流らしく、父母から一つずつ苗字をもらうそうだ。それで、権威の低い親の苗字は1文字に省略されるらしい。だが、それも書面場での話らしく、会話の中では普通に喋っている。


「諦めが早いんですね」

「ええ、性分なものでして……」


 いった通りだ。

俺は昔から諦めが人一倍、二倍、早かった。それ故に、テストの点数も平均より少し高いか高くないかで、それ以上にもそれ以下にもならなかった。ずっと410〜418の間を彷徨っていたのだ。


「諦めも時には大切ですが……、紅茶、今注ぎますね……、たまには継続するのも大切だと思います」


 そういうのは、戦闘用に作られ、それでいて日常的に服として使っても何ら違和感のない特殊なメイド服を着た銀髪のメイド、ノエルだ。

ピンクや黒を織り交ぜた色合いを基調とした、少し目立つメイド服だ。側から見れば王女を目立たなくさせているが、仕向けられた刺客に気づかれないように、出来るだけ目立たぬようにと配慮されているそうだ。その上、サーシャ様の来ている服には魔術を織り込んで、認識阻害効果をかなり高くしているとノエルは教えてくれた。


「そう言われてもね〜……」

「せめてスキルレベルだけでも上がらないか試したらどうですか? レベルは順調に上がっているんですよね?」

「え? ま、まあ上がってますよ……。スキルレベルとレベルの表示しか上がらないんですけどね……」

「私もそんな時期がありました。その時は、私のスキル〈堅牢仙源(ハルトシルト)〉」


 にこやかな笑みでそう言うノエル。

ノエルはサーシャの専属メイドにして護衛。ナイト・オブ・メイドという名前でも付けたくなる。


「まあ、スキル獲得に力を入れて、その報酬でスキルレベルを上げてみるといいですよ。私のおすすめは『魔力感知』と『創世器』ですね!」

「あ、ありがとうございます……」

「そうですねー、私個人としては『威圧(プレッシャー)』とか『下克上(リベンジ)』とかがいいと思いますよ。これらは、弱者・強者相対するときに強力な効果を発揮しますから」


 えーと、じゃあ魔力感知から行くか……。


「ノエルさん、『魔力感知』ってどうすれば習得できますか?」

「え? 今ここでするんですか? さすがにそれは……」

 

 ? ああ、王女様がいるもんね。


「い、いえ。私は騎士として登録されていますので、下手に魔力を放出すると警報に引っかかってしまうんです……」


 nrhd。

そういうわけで、俺たちはサーシャ様のお部屋に移動することになった。




 §



「王よ、ご報告が一件、ございますが、お聞きになられますか?」

「構わん。話せ」


 尊大な態度で座る王に、跪く騎士団長が報告をする。


「召喚者に一人、ステータスの成長が見られぬものがございます。その者の処分ですが、勇者という身分からの追放でよろしいでしょうか」

「ふむ……」


 王は、顎に手を当て、考え事にふけり始めた。

これから先、もしかすると開花するかもしれない。だが、今は確実にお荷物。他の勇者たちに迷惑がかかりかねない。もしこれで、魔物に成長の良好なものが犠牲、もしくは部位欠損などすれば、その損害は計り知れない。それに、現状ではそのものがどれほどの実力を開花させるかもわからない。ありもしない理想かもしれない。

(この間一秒)


 王は決断をその場で下す。


「判断は、貴様に任せよう」

「承知っ‼︎‼︎」


 そして、騎士団長は玉座の間の巨大な扉の前で、再度一礼をすると、その場を後にしたのだった。



§



 サーシャ様の部屋でノエルさんから『魔力感知』と『創世器』を教えてもらい、獲得に成功した今日、勇者全員に強制の招集がかかった。

その時から、俺は嫌な感覚がしていた。まるで、後ろから刃物を首筋にヒタリと当てられたような……。


「王、全員揃いました」


 騎士団長さんの声に、王は鷹揚にうなずき、人払いをしろとジェスチャーで伝えた。

その後、王と騎士団長、宮廷魔術師長と勇者だけになったその空間で、王は重々しく口を開いた。


「早速だが、残念な話が一つある」


 その言葉に、その場にいる勇者全員からの緊張が伝わってきた。

俺もだんだんと緊張してきたが、その緊張を沈めるという行為に嫌気がさしていたのか、それとも緊張しておかなければ、この後もそのまま流してしまうと感じたのか、俺は緊張を沈めることができなかった。


 そして、


「勇者・鬼灯稀有を現時点を持って、一般人へと引き下げることが決定した」


と、軽々しく、重々しく開いたはずの口を、軽々しく動かし、そういった。


 聞き間違いではない。

王は、俺をクビだと、必要ないと、解雇だと、そう言ったのだ。


 俺は、その場で魔術師長さんの転移魔術で、王城の外に運ばれた。


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ハルトシルトはもともとなかったのですが、加筆させていただきました。

ドイツ語で硬い盾という意味です。翻訳機からはハルターシルトと出ましたが、ハルトシルトを採用させていただきました。


王様関連を書くのはすごい苦手です。許しt((


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