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第1話

キャラ、世界観紹介と追放です。

 俺はこれまで、このパーティと供にどれだけの死闘を潜り抜け、勝利し、宝箱に仕掛けられた罠を外し、その中身を得てきただろうか?


 これからもまだまだこの冒険者生活は続くだろう、そう思っていた。

それなのに、だ。


「盗賊、お前をパーティから追放する」

「……ああ? いったい何の冗談だ」


 ここは、国王の秘宝である「聖アミュレット」を盗んだ大罪人である邪術士が最奥に潜む、ダンジョンと化した洞窟。

 そこの最前線を行く、栄光あるパーティの6人……


 国王が定めし君主、勇者。

 国一番の豪傑、戦士。

 信仰深き神の遣い、僧侶。

 万物を知るが賢者、司教。

 属性を操る稀代の才、魔術師。

 そして、酒場で雇われた熟練の盗賊。


 冒険の途中でキャンプを設置し、焚火を囲んで休息していた最中だった。


「あんたには今まで世話になったが……もう必要なくなったんだ。荷物持ちが俺たちにとってタダのお荷物に変わったってことだな」


 勇者は嫌みたらしい顔で告げるとジョッキの酒を勢いよく飲み干し、地面に叩きつけた。


「冒険者ってのは常に死と隣合わせだ。国の命令って割に、大した支給もありはしない。俺は、勇者として王様に選ばれるだけの実力を自覚はしていたが、辞退することもできた……だが、今ここにいるのはなぜだか解るよなぁ?」


「王様の "ここで手に入れたものは、手に入れた者の自由とする" ってやつですよね。初めは及び腰だった者たちの多くを、冒険へと駆り立てた言葉です」


 今、勇者と戦士の言った通りだ。

 この決まりがあるからこそ、俺は盗賊……つまり、宝箱から直接お宝を手に入れることのできる役割にいたわけだ。

 ダンジョンに眠るお宝は、基本的に宝箱の中からしか手に入れることはできない。それも、宝箱に仕掛けられた凶悪な罠を察知し、安全に解除することが必須となる。

 だからパーティに最低1人、盗賊職がいなければせっかくの宝箱もただの木箱となってしまうわけだ。

なのに、なぜ。


「そうだ!そしてついにッ!こいつを手に入れたんだよ!」


 勇者は、傍に置いていた剣を皆に見せつけるように掲げる。


 あれは先ほど、仲間の司教が鑑定し……なんと、このダンジョンで見つかる最高峰、Sランク級の剣だと判明したものだった。


 世にも珍しい機械仕掛けの剣で、一度振るえば残忍にも敵を細切れにする。多種多様な生物が潜むこのダンジョンだが、相手を選ぶことなく有効であることからも、この剣が最強の力を持つのは明らかだ。


 勇者の自慢げな語りに俺はフン、と鼻を鳴らす。

 勇者が仰々しく剣を語る気持ちも分かる。なぜなら、そんな名剣が納められた宝箱を開いたのは誰でもなく、この自分だからだ。


 中身に相応して、宝箱の罠も最高の難度だった。おおっと、などヘマしようものなら、目の前にあった宝箱とともに景色が一瞬にして変わってしまう《テレポーター》。ダンジョンのどこに飛ばされるかは神のみぞ知る。悪魔が笑えば、ダンジョンの奥に永劫閉じ込められる可能性だってあった。


 それだけの困難を躱すスキルが俺にはある。何よりの証拠が、勇者が掲げるその剣であるのだから。


「俺は名声を手に入れるのも好きだが、至高の武具を手に入れるのも好きだ。誰より俺を最高だと知らしめるものだからな。……すでに1つは成した。あとは邪術士とやらを討伐したっていう名誉だけなんだよ」


 勇者は立ち上がり焚火の向こうまで歩くと、そこにいた俺の後ろにしゃがみ込んだ。

 勇者の手が、俺の肩の上に置かれる。

 俺はただ、勇者が今も握る剣が焚火の光を受けて鈍く輝き返すのを見ていた。


「盗賊よ、呪文を唱える術があるか? といって、戦闘じゃ前衛に立てるほどの体力もなし。……ここらの層にもはや、後衛のお主が活用できぬ時間を狙わんでくれる敵はいない」


 魔術師が鋭く言い放つ。

 それは、後衛に座する盗賊唯一にして最大の欠点だった。

 誰もが簡易な呪文を唱えられる、使い捨ての巻物を考慮したときもあったが、これは懐を圧迫しがちで活躍なく腐ることもザラだった。それならば、手に入れた品をしまい込むために空けていたほうがずっといい。


 この世界に身を置いた頃から今まで盗賊を続けてきた俺にとって、これまでの経験が宛てられたのは少しの体力と身のこなし、悪運を避ける嗅覚だけだった。


「ま、そういうことだ。次は邪術士を倒そうってんだからな。少しの行動も無駄にできねえんだよ、わかるよな?」

「……ああ。そうだな」

「よしよし、物分かりが良くて助かるぜ。命のやり取りしてきたのは伊達じゃねえな」


 ……所詮は雇われ。今持つ力が及ばないのなら、自分に価値はない。

 無理に同行を続け、パーティ全滅の要因となってしまうのは、自分のためにも必ず避けるべきことだ。

 ならばここらが潮時だったのだろう。正直無念でたまらないが、そう自分に言い聞かせる。


「じゃあ、盗賊。今お前が持っている全てのアイテムを寄こすんだ。もちろん、装備してるのも含めてな」

「なんだと。勇者、さっき自分で言ったセリフも忘れたのか?」


 "ここで手に入れたものは、手に入れた者の自由とする"。 それが冒険者お決まりのルールだったはず。ふざけているのか、と俺は勇者を睨み付けた。


「おいおい、少しは考えてみてくれよ。俺たちはパーティだ。宝箱からブツを手に入れるのはいつもお前だったが、実際はアイテムを選り分け、武具なら装備できるヤツに配ってたよな?」

「……ああ、そうだな」

「つまり、だ。手に入れたアイテムは "俺たちパーティの共有財産" って考えられないか? お前の装備を、次に加える予定のヤツに渡してやりたいんだよ。もちろんお前の金にまで手を付ける気はねえ、今まで通りの山分けのまんまだ」


 なるほど、筋は通っているか。ここまでを踏破してきた装備と別れるのは惜しく思うが、次のヤツが使って邪術士を倒すというなら悪くはない。

 少しの哀愁とともに、持っていたアイテムを装備ごと勇者に手渡した。

 受け取った勇者は、持ちきれなくなったアイテムを戦士や司教たちに回していく。


 持ち物の整理がついたのか、勇者がこちらにやってくる。

 勇者は一つ、ナイフに似た武器を渡してきた。


「あー……この短刀、まだ未鑑定だが、選別だ。こっちはもう一杯だし、お前が持っとけ。高値がついたら商店に売っぱらうも良しだ」

「せっかくだ、記念にさせてもらう。勇者さんよ……今まで世話になった」

「ふっ、お互いさまだな。……じゃあ魔術師、転移魔法を頼む」

「はいよ。……勇者、良いんだな?」


 ああ、と勇者は頷き返す。

 そして、魔術師はぶつぶつと呪文を唱え始めた。ダンジョン脱出にお決まり、転移呪文。罠である ≪テレポーター≫ と効果はよく似ているが、飛ぶ場所を設定できるのが違いだ。ただし、設定には少々のコツがいるようで、素人が使うには危険が付きまとうらしい、そんな呪文だった。


 俺も呪文が使えていれば、これまでもこのパーティで……邪術士を倒すこともできたのかもな……

そんなことを考えてると、唱えられた呪文が効果を発揮し、パーティ周りの景色がぐにゃりと歪み始めた。何度も経験した現象ではあるが、前後感覚が狂いそうになりそうで慣れることはできなかった。


 俺は思わず目をつぶる。次の瞬間に俺たち勇者パーティは、ダンジョン入り口付近まで転移をして……



 いなかった。



 いや、正確には、俺以外の全員が、いなくなっていたのだった。


お話を考えるって難しいですね。これからぽちぽちとスローペースで続けたいと思います。

ランキングを見るととんでもない文章量を書く作家さんに驚くばかりです。


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